狂気の予兆
プロローグです!できる限りで投稿するので是非読んでやってください!
「君は夜色の薔薇の花言葉を知っているかい。リュウセイくん」
ある時突拍子もなく投げられた雇い主からの問にリュウセイは首を横にふって、聞き返した。
「知らないな。どんな花言葉なんだ?」
赤みがかった茶色の長髪を後ろで束ね、貴族のような催しをしている男、リュウセイの雇い主『自称元騎士』ディルムット。彼は時々、前触れなく意味の無さそうな質問をしてくる。そしてまたどこか感情の読み取れない表情を作り、リュウセイに答える。
「そーかそーか、知らないのかい。それはまた残念だね。」
「なんだよ。教えてくれないのか。」
質問をしておきながら答えを教えず、一人で満足しているディルムットに少し不満なリュウセイであったが、彼の性質上、これ以上質問してもきっと答えは帰ってこないだろうと思い、それ以上の言葉は留めた。
「君がこの教会で用心棒を初め、私の屋敷で暮らすようになってからもうすぐで1ヶ月だーけどね、どう、もう慣れたかい?教会や屋敷では女の子ばっかりで君は肩身の狭い思いをしているのかーな?」
「あぁ、ユーノーは相変わらず可愛いし、アイラやオリビアとも上手くやってる。唯一気掛かりがあるとすれば…」
リュウセイは以外とこの世界に来て上手くやれている。今のところ命の危機に陥ったことは森での一回だけだし、仕事と仲間も見つかり、元の世界に帰るための手がかりを見つけるため毎日東奔西走しているところだ。しかし彼にも気掛かりがないわけではない。言おうか迷っていると傲慢な雇い主は気遣いなど知らずに切り込んでくる。
「アイネのことが心配かな?」
アイネ、彼女もまたディルムットの屋敷に住む、住人の一人なのだが、森での一件があった日、話して以来一度も顔を見ていない。というか彼女の部屋に入れてくれない。それに…
「まぁ、彼女はとてもふくざつな事情があるからね。私も同情してしまうよ。彼女は太陽神の天力を宿して生まれたいわば神の生まれ変わりみたいなものだからね。幼いころから戦うためだけに教育され、十五歳の時には初陣、生き残ったのは良いものの、人と争うことが嫌いなあの子が、どれだけ辛い思いをしたことか…」
「それで、ディルムットが引き取ったんだろ?一族や騎士団は反対しなかったのか?」
「…うーん彼女の場合は天力も上手く扱えるわけではなかったかーらね。それに彼女の親族はこれ以上アイネに辛い思いはさせたくなかったみたいだしね。でも…ね。ほら。」
「それで、その穴を埋めるために騎士団の召集がかかれば俺が行かなきゃいけないって訳ね。」
リュウセイはため息混じりに答えるとディルムットは全く悪びれない様子でよくお分かりでというように笑顔でうなずく。しかし食事と宿を提供してもらっている以上、断れないのが現実だ。
「まぁ君は最初こそ魔法の一つも知らなかったくせに、そのバカみたいな魔力量と素質で三週間ほどで私とほとんど魔法での戦闘能力は変わらなくなったじゃないーの。剣術も短剣ならそこそこはできるみたいだし、騎士団に一ヶ月もお世話になればそれこそ最強になって一石二鳥じゃなーいかい。」
リュウセイは強かった。恐ろしいほどに強かった。彼はディルムットに教わった魔法を一週間全て覚え、 三週間目には見事に使いこなせるほどまでになった。何故こんな芸当ができたのか、そんなことは彼が知りたい。しかしだからといって…
「現実世界での暗記の習慣がこんなところで役に立つとは…って、うれしくねーよ!何が一石二鳥だ!厄介ごと押し付けられただけじゃねーか!それにバカバカいうな!」
「はいはい、がんばってくれるーて言ってくれて嬉しいよ。『騎士クロキ・リュウセイ』くん。」
「ほんっと、都合の良い耳してんなおまえの耳!てかよその太陽神とかってなんなんだよ。みんな言うけど。」
「おやおや、そんなことも知らないとはリュウセイくんの箱入りっぷりにも驚かされるねー。それでは教えよーか。」
ディルムットはそう言うと赤みがかった茶色の長髪を風邪に靡かせ、遠くを見るような仕草を見せたあと、ゆっくりとこちらに向きなおり、話初めた。
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「かつて、この世界を滅ぼさんとした一人の女神がいた。彼女の名は、『暗黒地母神ダナ』。彼女が争いの絶えない世界に絶望し、世界から光を奪うと、世界には終わらない夜が訪れた。しかし、世界に光を取り戻そうと、今もなお英雄として語り継がれる五人が立ち上がったのだ…」
ディルムットはそこまで話すと急に話すのをやめ、片目を瞑り、悪戯な、リュウセイに言わしてみれば嫌な顔をする。
「今日はここまーで。ほらほら明日も早いし、子供は寝る!」
「なんだよ!ここからってところなのに!しかもやけに中二臭い話だし!」
「ちゅう、に?それがなんだか解らないけど、今日の話はここまでだーよ。また話せる時にでもーね。あ、でも最後に一つ教えようか。」
「黒い薔薇の花言葉は『決して滅びることのない愛』だよ。どうだい?ロマンチックではなーいかい?」
「そうか?俺には純粋な愛というよりなんだか呪いに近いものを感じるけどな。」
リュウセイがそう軽口を叩くと、夜風が二人の間を吹き抜け、木々と二人を揺らす。まるで、これから起きるなにかの始まりを告げるかのように。
_______ずっと、今日も、君を君だけを想っている。グラーニア。
読んで頂きありがとうございました。次回も読んで頂けると幸いです!




