38:交易
いやいやいやいや待てれい。スライムって地球にいなくね?そもそも俺の知識の中には地球にいるスライムの情報なんてなかったぞ?創作物の中での存在としては知ってたけど、リアルにいるなんて聞いてない。
え?もしかして記憶だけじゃなくて知識の方も不完全だったりする?うわ、やばいなー。何か自分が得体の知れないもののように感じられ、胸を焼くような焦燥に晒される。
あっ、そーいやこいつ詐欺師だったわ。確か詐欺師のやつらってそうやって心に揺さぶりをかけて不安になった所に漬け込むんだっけ?ふっふっふ、貴様らの手口など通じぬよ。ドヤァ。
「これからも地球の情報が必要になることも多いだろうから、定期的に寄らせてもらうからな。ついでに商品も買って貰えるとありがたいのだが……情報料としては安いもんだろ?」
あ、漬け込む気満々だわ。やっぱ信じなくてよかったー。そうだよね、頼みの綱である知識まで不完全だったらマジで神様ぶん殴るレベル。あれ?でもフィロンデルの話的には神様って俺に敵対してる感じ?いつか倒すのかなー、最強になる予定なんだし。
「でもさー、その情報が本物っていう証拠はあるわけ?地球っていう名前を知ってるようにさー、俺って知識だけは残ってるんだよね。記憶喪失だと思ってあんまり舐めない方がいいよ?」
そう言った瞬間露骨に相手が狼狽する様子を見せる。しかしこんなあからさまに動揺するか?ブラフかもしれないし、それがただの深読みかもしれない。結構侮れないやつだ。
「……しかしいいのか?もし俺の情報が本物なら、お前は大事な情報も逃しちまうことになるぜ?本当にそれで後悔しないのか?」
うーん、中々厄介な。というか正直金貨とかいくらでも作れるわけで、別に取引始めたところでこっちは損しないんだよねー。さーて、どうするか。
「経済的な面で駄目だと言うなら、物々交換でもいいぞ。こっちは世界中を巡ってるわけだからな。植物や動物なんかも手に入れるのは訳ないし。」
うーん、それは中々魅力的な提案だね。例えばスライムを使えば野生の大根は採れると思う。でも、人の手によって作られたものは手に入らないんじゃないかな。品種改良を重ねて作られた人の大根と、そこらに生えてる大根、改造のベースにするとしてもどっちがいいかは明白だ。この取引、受け入れようじゃないか。
「まぁそれは分かったけどさー、こっちは何を出せばいい?」
「あぁ、魚でも貰えると助かる。こっちの世界では海竜やクラーケンがいることもあって、中々漁業も発達していなくてな。魚が手に入りにくいのだ。」
へー、魚って割と貴重なんだ。じゃあ前食べたカジキとかって結構レア物だったのかな?と思ってたんだけどそれは違うらしい。なんでも、カジキとかの魔物ではない生物って、魔物に追いやられて結構浅いところまで出てくるんだって。そりゃ御苦労なこったな。
「おっけー。じゃあ美味しい魚も用意して待ってるね?じゃ、ばいばーい!」
あー!疲れた。実はこの取引の裏にも結構戦略が張り巡らされてたんだよなー。例えば商品ひとつ取っても、たとえばこっちが貴重な魚を手に入れれば相手に貸しを作れることになる。ただ、水竜やクラーケンなんかはめっちゃ欲しいアピールしてたからね。やっぱ借りを作ってでも手に入れておきたいという考えでこちらが利用されている可能性だって捨てきれない。あー、だから頭脳戦は嫌いなのになー。
ん?というか何気に3時間も話し込んでた?うわ、そら精神ゴリゴリ削れるわ。そーいえばゴーレムトラップの方はどうなったんだろう。ちょっと見に行くか。
うわったった3体かー。やっぱオリハルコンって貴重だし採れにくいようにしてあるのかな?1時間に一回の効率か。そうかそうか。しかも大きさも5歳児くらいしかないし。とりあえず吸収っと。あれ?エネルギー貯まらない?地下エリアって迷宮にする予定だったし魂吸収型にしてたよね?あ、もしかしてゴーレムみたいな人工物って魂宿らないんだろうか。でも確かに納得のいく理屈ではある。チェッ、ゴーレムのエネルギーでスポナー増やして芋づる式に生産量増やそうと思ったんだけどなー。
まぁでもゴブリントラップでも作っとけば勝手にエネルギーも溜まるでしょ。あっ、でも食材の方がいいかな?そうだ、魔物の交配するか。まずは鶏肉から。味見したなかでも特に美味しかったのはコカトリスと朱雀だ。コカトリスは脂がのっていて濃厚な味、朱雀は淡白だが旨みが凝縮されている。この2つを掛け合わせた魔物を作り、空のモンスタースポナーにそれを入れれば旨い鶏肉が手に入る。
豚肉に関してはオークと片耳豚が美味しかった。片耳豚と書いて「かたきらうわ」と読むらしい。知らんがな。というわけで肉の生産ラインが完成したのだった。
牛に関してはひと騒動あったので次回になりますね。




