4話
3日間色々と周っているうちに、等々王様との面会の日となった。
酒場で情報を仕入れに行ったら、ミルクを出されて追い出されたり。
人気料理店に行ったら、前世の味覚がある俺には正直物足りなかったり。
宿屋のママが美人なのでちょっかいかけたら
奥から厳つ過ぎる亭主が顔を覗かせたり。
騎士達に囲まれ玉座に座る王様の下へと連れて行かれた。
ウィルは入って来れないので一人でその後に着いて行く。
謁見の間、玉座に続く方へ長く赤い絨毯が一直線に引かれている。
両脇には派手な衣装に身を包んだ貴族達が並んでいる。
そして、玉座に座るのが国王陛下だ
玉座にあぐらをかき、足に肘を付き手に顎をのせてこちらを伺っている。
「よく来た、シュトゥルム辺境伯。名前はなんだったかな?」
「初めまして国王陛下、私の名は・・・」
俺は片膝を付き頭を下げ国王陛下の質問を返す
そういえば自己紹介がまだだった・・・
俺の名前はユリウス=フォン=シュトゥルムだ。よろしく
「ユリウス=フォン=シュトゥルムです。国王陛下。」
「ほぅ、そんな名前だったか。しかし惜しい人物を亡くした
ユリウスお前の父マルクスだ。長らく余の右腕として働いてくれたが
まさか未開の地で命を散らすとは・・・。」
「ありがとうございます。陛下。父マルクスも陛下にそう言って頂き喜んでいるでしょう。」
「よく口が回るなぁ。ユリウス幾つになる?」
「はい、もうすぐ4歳になります。」
「そうか、余が4歳の時などそなたの様に
こんな大舞台でハキハキと喋る事は出来なかったぞ。
クロードお前のバカ息子とはえらい違いだな。」
そう言って国王陛下はカラカラと笑っている。
クロードと呼ばれた男は、恰幅のよい男で顔はガマガエルによく似ている。
いやウシガエルかもしれない、いやガマいやウシ・・・どちらにしろカエル顔だ!
国王を睨む事は出来ずに
国王に頭を下げながらも苦虫を噛み潰した顔でこちらを睨んでいた
「さて本題に入ろうか、ユリウスよどうするか?」
国王陛下の顔つきが変わる。どうするかと聞きながらも迷っているようだ。
「陛下、それだけではシュトゥルム辺境伯にはお分かりにならないのでは
ありませんか?」
「そうだったな、内務卿説明を頼む。」
内務卿、いうなれば内政官のトップみたいなものかな?
「御意。それではユリウス殿。私から説明させて頂きます。」
現在3代に渡り樹海の開拓が進んでおらず
ユリウスの成長を待ったとしてもまだ数十年の月日が掛かる事。
領地経営が上手く滞っておらず、
国に対する不利益がこのままでは積み重なってしまう事。
の2点が挙げられている
そこで、爵位が格下げとなってしまうが内部の空いている領地に居を移し
他の侯爵の庇護下に入るのか、それともこのまま辺境伯として
未開の地に残り開拓に努めるのか。
しかしこちらは期限が設けられる、進展が無ければ話にならないのだ。
元々祖父の時代に開拓をする事によってあの地を任され
今では、色々な所から苦情があるのだろう・・・。
「ユリウス殿には申し訳ないが後者を選ぶ場合は10年
その間に何らかの功績を挙げなければ前者に従ってもらう事となります。」
「そういう事だ、ユリウスどうするか?」
「我がシュトゥルム家の悲願は未知の樹海を開拓する事です
それ以外に道はありません。」
「ぷぷぷっあははは、ああすまん未知と道ね」
陛下の笑いの沸点は低かった・・・。
「よし、分かった樹海の開拓の継続を認める
そして、ユリウス、そなたをユリウス=フォン=シュトゥルム辺境伯として
継承することを、王の名において認めよう。」
俺は今一度頭を下げた
「そうだユリウス、もし樹海で大きな発見があれば
1つお前の願いを叶えてやろう。」
「願いですか?」
「ああ、なんでもいいぞ。まぁ余に出来そうな事ならな。」
「それでは1つお願いがございます。」
「ほぅ、もう何かしらの発見があるのか?」
「はい」
そうは言っても手持ちのカードは
冒険者ギルドで出した一枚しかないのだけれど・・・。
「ほぅ!石化病に効く薬とな!!」
「はい、まだ研究段階ですが薬師によれば近い将来石化病の特効薬となる事が出来るそうです」
「それは良い話だ、この国でも幾人の民がその奇病で苦しむものが多いと聞く
もし、その薬が完成すれば希望となろうな。」
「そんな物が本当にあればな。」
そう、ガマいやウシ・・・カエル伯爵が嘲け笑う。
「こちらが、その植物です。」
「なるほど、内務卿。鑑定してみろ」
「はっ」
内務卿は鑑定スキルを使えるのか
鑑定スキルはレアスキルで有名商人が多く持つと言われているが
鑑定スキルを持つものが有名商人になる近道でもあるとか。
「ふむ、なるほどなるほど。」
「どうした?内務卿。」
「この植物には名前がありません、こんな物を見たのは初めてですね
しかし、効果説明には石化病に効くという類の説明文がありますね。」
「なんと!名前が無いとは・・・余も聞いたことが無い。
そうだ、それでは余が名前を付けよう・・・。
そうだなマルクス草という名はどうだろうか。
マルクス=フォン=シュトゥルムが発見し功績が後世にも残ろう。」
「ありがとうございます陛下、父もさぞ喜ぶでしょう。」
「おお!大変です陛下!」
「なんだ内務卿!!」
「先ほどまで名前の無かったこの植物が、いつの間にやら
陛下がお付けになったマルクス草という名で登録されております。」
「「「おおー」」」
「そうかそうか、神もその名が気に入ったのであろう喜ばしい事だ。」
国王陛下は嬉しそうにこちらを向いた
「よし、ユリウス1つ願いを言うがよい
この、マルクス草の大発見で約束通りお前の願いを聞いてやろうではないか。」
「はい、それでは1つお願いがあります・・・。」
最初からお願いは決まっていた。
こんな事になるとは思ってもいなかったのだが
なんとか、陛下に直訴しようと思っていたのだ。
「数日前に、冒険者のグループと騎士団と諍いがあったと聞いております・・・。」
俺達が王都に着く前日にある冒険者と王国に仕える騎士団との事件が起こった。
王様の御歳は若めでワカメが好き
「ぷぷぷ、あははは」
今日も王様の笑いの沸点は低い。