22才能開花
鋭くなったと聞こえはいいが、日常生活の中において、関係ない。
無駄な感覚を発揮させてしまっている。
どうにか取り去りたいのだが、なかなかわからないまま。
「あー、特殊能力ってやつかな?魔法とは別の現象らしいな。おれも聞き齧っている。才能を開花させたって話し」
「才能開花ですか……槍?女帝?」
「やり?」
「いえ、なにも。そうですね。そうなりそうな体験はしてます。いい思い出もないので」
「でも、着眼点はいいぜ。なかなかいい目を持ってる。普通に生活している分では邪魔だろうけどなぁ」
と、秘密を告白する顔で笑う。
真相や彼が一体なんなのかについては、なにも言ってくれはしないので、単に普通にコミニュケーションが高すぎる男ということだろう。
(くわしいようなやり口……まるで小説の訳ありみたい)
「なにも知らなくてもいいです。別に私は特別な人生なんて望んでないので。普通でいいんです、普通で」
「そうか。それもそうだな。だれだっていやなことは……やだもんな」
(意味深……違う話に変えましょう)
こちらはとくに、そっちのなにかに踏み込むつもりはないので、ふふ、と笑みで誤魔化す。
そうすれば男も気付いたのか、笑みを返してくる。
「思ったのですが、ここにいて長いというのなら、教えてほしいことがあるのですが。よろしいでしょうか?」
「ああ、いいぞ。おじょうさん」
少しイントネーションが変化した呼び方に、相手も気分と場合によって空気を変えているのだとすぐに察した。
これなら話を強く変えることができそうで、ホッとする。
二人でぽつぽつ話していると、ラピトは芋系の料理が得意なのだと自慢してきた。
それに、自分も得意というわけではないがレシピを知っていると通じる。
それに、あいずちを打つとラピトは嬉しそうに食いつく。
ずいぶんと好きみたいだ。
どこか上品な動作を感じるが、芋好きな人が上品など、なにかのなぞなぞにしか聞こえない。
色々、互いに芋レシピについて情報をかわし、そこで日がかたむいているので終わる。
やっとよくわからない緊張感から解放されて、安堵の息をはいた。
肩の力が少し入っていた。
いつものように自室に帰ろうとしたところで、各所が騒がしいことに気づき、頭を回転させて知る。
帰ってきたのだと。
ヒノメールは顔を出してよいものかと悩む。
が、居候の身であるので、顔は最低でも出しておくべきかと慌てて思いなおす。
どこにいるのだろうと探すと、みんながごはんを食べる場所に集まっていた。
ちらり、とそこのドアから様子をながめていると、やけに真ん中が囲まれている。
そこにいるらしい。
魔動物達はすでに彼の帰還を知っているだろうし、教えるまでもない。
どのくらい待てば落ち着くのだろうか。
もしや、明日になるんだろうか。
空気を読むことに定評のあるヒノメールは、いっときの落ち着いたころをみはからい、かれらの元へはせる。
「ちょうどよかった。呼ぼうと思ってたんだ。少しいいか?」
なんとノイスが少し困ったようにこちらを見ていうので、一つうなずくと部屋を出る。
はなしが立て込むのでとなり、彼の執務室に入る。
「なにか飲むか」
「いえ、あとで部屋でゆっくり飲みます」
帰ってきたばかりというのに、どうしたのか。
そちらが気になって仕方ない。
そわそわしそうになるが、ここはしゃっきりとさせておく。
「なにから話せばいいのか……」
言いよどむ様子に不安になる。
なにかあったのだろうか。
「実はこの数日、いたのはお前の祖国だ」
あまりに深刻なので、もっとシリアスな話なのかと思った。
「……あ、そうなんですか」
ほっとした分、返事も遅くなる。
「もっと驚くかと思っていたがな」
やけにあっさりなこちらの反応に、意外そうな顔をされるが、こちらこそ気が抜けた。
「もう関係ないですし。貴族籍もないですし。無関係ですから」
それしか、いいようがない。
「いや、それがなぁ」
「ま!まさか!」
あのバカでお気楽な王家を思い出して、背筋が震えた。
「さすがにわかるか」
ノイスは言いづらそうに進める。
「お前の祖国からお前の捜索を依頼された。本気とよりも見つかれば上好って感じだったから、まぁ、深く悩むな」
「!」
「それにおれが依頼を受注しておいたから、時間稼ぎもできて、向こうに渡す情報には制限をかけるから、見つかることはない。引き続きこの国でスローライフってやつを満喫してくれ」
「あ、そ、そこまで、お世話には」
「気にするな。お前を街のやつらは気に入っている。部下たちもな。おれもスカウトしに、いくくらいはお前の人柄を判断してここへ呼び寄せた。他になにかあるか」
「い、いえ。ただ」
「ただ?」
「ノイスさんに惚れ込んでいる人たちの理由が、よくわかりました」
「は?」
ノイスはぽかんとして、大笑いした。
「なんだそれは。今それは関係あるのか?」
「はい。それはもう。わたしも人として、好きになりきってしまいます」
「そりゃどうも。で、ここにいてくれるか?」
「ええ。こちらこそよろしくお願いします。引き続き」
「ああ。互いにのんびりしていこう」
重い話題を終わらせられて、相手も安心したのか少し息をはいた。
彼も緊張していたのだろうか。
優しいなと改めて思う。
「あの、ノイスさん。なにか飲み物を飲みませんか?」
「おれか」
「はい。喉が乾いてませんか?」
「それは……乾いてるが、いきなりどうした」
「いえ、私なりの労りですよ」
「へぇ。じゃあ貰う」
漸くいつもの相手の雰囲気になったので、ヒノメールは部屋を出て今や慣れた動作をする。
飲み物を入れるだけなのに慣れという言葉に、自分はいつのまにかここを好きになっていたのだと気づく。
それだけの些細なことなのだが、街の人たちの暖かさ。
団員達の人柄や、傭兵なのに気さくなところ。
もちろん、戦場との顔は別になることも理解しての判断だ。
彼らの戦場においての様子も知っているからこそ、オフという今の状態に好感を感じている。
ヒノメールもよくよく考えてみれば、人のことを言えなかった。
たたかいの場で舌戦をやりあい、あおりまくった経験は身に覚えがある。
キッチンでコップに入れ終えて向かう。
そこには少しだるそうな姿。




