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21魔リス

妖精という存在が気になっただけなので、諦めるのも至って簡単。


もう帰ろうと決める。


ヒノメールは自室に戻った。


ノイスたちはまだまだ帰ってきそうにない。


どうしようかと、考えたがやはり趣味らしい趣味を持ってないので、ノイスの言っていた書くことについてやってみることにした。


ペンを手に持ち、書き出す。


肩にはまだ魔リスが乗っていて、文章を読んでいるようだった。


なんとなく書き出したが、少し進んだ。


「先は長い」


腕を組んで、上を見上げた。


だらだらと書き続け、二十分経過した頃に一度休憩した。


趣味なので、亀のように遅い。


のろのろと、そうやって過ごしていった。



ノイスサイド。ヒノメールの祖国




ノイスたちは現在、ヒノメールの祖国に赴いていた。


依頼書に要請が来ていたのだ。


正直、戦った相手を雇うなどおかしなことをしている言える。


そういう存在もいるにはいるが、仮にも自国の貴族と戦った相手を雇うのは、変だ。


貴族とは国の顔でもある。


王族も顔だが、貴族もその一部。


それなのに、その貴族をおざなりにして引き分けになった者を起用。


考えれば考えるほど、この王家はなにを考えてそんなことをしたのかと、好奇心だけで聞きに来た。


依頼はその後受けるか考えよう。


ノイスは不遜な顔を浮かべる。


依頼料を割増にしておいたので、相手がどういう態度に出るか楽しみだ。


「ノイスさん。様子見てきましたよ」


交渉役は別にいるので、待っていたのだ。


どうだった、と聞く。


「うーん。金は大丈夫っぽいんですけど……追加で頼まれまして」


「なにをだ」


「ヒノメールという女を探せと言われました」


思いもしない名前に反芻させる。


「は?ヒノメノールがなんだ」


甚だ疑問が湧く。


「いえ、その。ヒノメールを探して、一緒に参加させろと」


ヒノメール本人はただの元男爵令嬢のはずだ。


それに、彼女は父親にすでに貴族籍から抜かれているし、一家も散らばっているので、男爵家はなくなっていると思うと聞いている。


しかも、探し出すことにくわえ、参加させろとは。


考えたくもないやつらの思考に頭が冷える。


「参加場所っつうのは、たたかいの場にか?少女ともいえる、まだ大人になりきってないただの元貴族令嬢を?たたかいの基礎や訓練もしてないやつを?」


ノイスは、のんびり暮らしたいと祖国を離れた女の言葉が今になってわかった。


祖国を離れたのは、こういうことが起こることを察知していたからだろう。


交渉役の男は苦しそうな顔で、首を振るとこちらに指示をあおいでくる。


仕方ない、と顔をあげて指示を熟考。


(あいつはもう祖国から籍を抜いている。今はもうこちらの籍だ。とはいえ、市民権だけだから弱い)


結婚や店を一定期間でもしていなければ、完全に国民になったということにはならない。


だれかと結婚させた方が手っ取り早く、改めてヒノメールに、説明と解決策を話す必要がありそうだ。


ここの王家に気持ち悪さと嫌悪、侮蔑を最大限に投げ込まれるはめになったノイスは、交渉役へと今後について述べた。


「捜索するふりをしていく。追加報酬を提示しろ。他のやつらに依頼されるよりはマシだ。こちらで情報と捜索の主導権を握っておいた方がいい」


「わかりました。聞いた様子では、問題が起こった時に対処する者が全くいなかったらしく、あとはもう過去に依頼したものを探し出すくらいのことしか考えてないようです」


「思考放棄にも程がある。問題解決は他にもいくらでも方法なんてあるんだがな」


「ちっさな国ですからね。ツテがないんでしょう」


「戦ってた相手の戦力に、依頼するくらいの情報しかなさそうだしな」


今まで平和だったから、解決する力が身についてないのだろう。


安易で身近なものをとりあえず使うことくらいしか、思い浮かばないのだろう。


「王子についてはまあ、わかった。他はどうだ?王はどうしてる」


「交渉の場には全く出て来ず。今の指揮系統は専ら後継者だけです。噂では愛人たちと後宮にこもって、なにもしてないとか」


小さい国なので後宮とは名ばかりの施設。


愛人も二人くらいしかいない。


実質、運営を取り切っているのは側近やその他のものたち。


小さい国なのでそれで事足りる。


ヒノメールがいなければ、今ごろこの国はうちのものだったかもしれないな、と過去を振り返った。







「お嬢さん、こっちはどうだ」


「あつあつで美味しいです」


現在、ヒノメールはこの付近にくわしいという人に美味しい食べ物や、おすすめのお店を教えてもらっていた。


歳は三十か三十五くらいに見える。


国民性によって年齢の見え方も違うので、自身には判定できない。


手に持つ、柔らかなたべものを口に入れては、味覚が脳を幸せにしてくる。


「うちの名物。鶏を甘辛く焼いたものを、ふかふかなもちっとした生地で包んだものだ。おれも気に入ってるぜ」


彼は街の人たちにすごく人気で、ラピトと名乗ると瞬く間に二人で、食べ物ツアーへと誘われた。


かなり慕われていると分かり、この町でそうならば信頼できるのだろう、くらいはこの街の人たちの観察眼を信用している。


悪い人ならば即座に、タカノツメ傭兵団に追い出されているだろうし。


ラピトだ、と最初に握手を交わしてすぐに色々話すようになるのに時間はかからなかった。


彼は話術がすごくうまい。


ヒノメールは話すことは得意ではないが、それなのに、彼にかかれば思ったことをするりと出しやすいように誘導してくれる。


話しやすいから、人気なのだと即座に片鱗を理解した。


それは、人をよく見ているというのと同義。


彼はそうやって会話をして、ヒノメールまでも、会話を引き出す。


いつもなら、お断りしていたところなのに、いつの間にか、ふかふかした食べ物片手に談笑。


引き込まれる力が強く、周りの人の視線を惹きつける。


見た目はどこか垢抜けない風を感じるが、仕草にどこかチグハグさがあった。


「どうした?」


一挙一動をつぶさに見ていれば、ラピトが話しかけてくる。


思いっきり見ていたのではなく、合間に見ていたことを知られていたことにも、違和感を感じさせる一つ。


「いえ、ラピトさん。見た目よりもなんだか動きが……洗練というか熟練されてるような。足音がしませんし」


「足音?うーん。そんなの今まで言われるまで気づかなかったな。すり足で歩くからかな」


「そう思ったら、突然その見た目もおかしいなって思えてきました」


「え?なにか変か?」


と、戸惑いと焦りを滲ませていたので、慌てて首を振る。


「いえ、そうではなくて……すみません。こういう感覚を言葉にできなくて。私も戸惑ってます。少し前からそういうことが目につくようになったり、よくわからない状態で、ズレを感じ取ってしまったり。多分後遺症かなにかでしょうね」


息をつく。


たたかいを経験してから、感覚や五感という非現実的なものが鋭くなった。

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