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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】一章『アマノとジャック』
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第21話【欠片の大会】

 悪魔マモン率いる「奇石団」のことは、すぐにニュースになった。欠片を集めて神々を滅ぼすのが目的だと言うこと、マモンの容姿、確認されてる人数などが天界新聞にも載った。


「おはよう」


 ジャックが朝を迎えた時には、既にアマノとポム吉が新聞に目を通していた。アマノがいつも通りに紅茶を片手にしてる隣で、ポム吉がテーブルに座り、赤ん坊のように訳の分からない顔をして新聞を見ている。


「文字読めるのポムちゃん?」

「うん!全然読めないよ!」

「じゃあこっち来ないで。邪魔」

「そんな!?」


 ポム吉はビクッと体を震わし、困ったようにアマノの方を見るが、居ないかのように無視される。


「昨日のは夢じゃなかったのか……白い悪魔め」

「悪魔じゃなくて熊だよ!」

「次エロ吉になったら焼いて食う」

「そんな!?」


 ポム吉は、先程と同じ反応でジャックの方を見る。ジャックが嫌そうに目を細め、軽くポム吉を叩く。ポム吉はポンッと跳ねて、その場に倒れて起き上がれなくなる。


「何か大きなニュースあった?」

「奇石団と名乗る集団が欠片を二つ持って逃亡した。そのリーダーはマモンと名乗る悪魔で、天使二人引き連れて主神達から欠片を奪ったんだって」

「マモン?七つの大罪の強欲を司るあの大悪魔?」


 遥昔、マモンという大悪魔が居た。七人しか居ない魔神の一人であり、強欲を司る悪魔だ。前向きな貪欲さとケチな性格で有名で、魔王サタンの反乱に加わってサタンと共に地獄に落とされたという。それを学んでいたジャックからしたら、妙な話だ。


「分からない。けど顔を見た主神達が言うには別の悪魔のようにも思える。まあ、容姿を変える魔法もあるし、誰かの肉体を奪った可能性もある。だからハッキリ違うとは言えない」

「確かに。神々の世界は可能性だらけで物事が確定しないね」

「そうね。取り合えず、神々は敵が増えて私達だけに相手出来なくなった。安全に行動しながら欠片を集めましょ。こっちには欠片が一つあるし、アイムとも情報を共有できる。それと、今のとこ無能だけど、欠片に関係ありそうなポム吉も居る」

「照れちゃう」

「バカにされてんだぞ」

「そんな!?」


 ジャックは、勘違いするポム吉に呆れ、困ったようにアマノと目を合わせる。だが、アマノは困ってるジャックを笑うように笑みを浮かべる。


「随分嬉しそうじゃん、神様」

「ジャックにお友達が出来たようで、とても微笑ましいよ」


 アマノの揶揄いの混じった微笑みは、ジャックを少し動揺させた。言われた内容というより、アマノの珍しい表情を見て動揺した。


「とっ?友達?冗談きつい」

「友達!照れちゃう!」

「違う!奴隷以下の家畜だ!」

「そんな!?」


 再びポム吉が体を震わせ、ジャックの方を見る。


「言葉遣い、乱暴なんじゃない?ジャック」

「……悪い神様だ。やっぱ鬼の子」

「ふふっ。ちょっと揶揄い過ぎたね」


 アマノは、気分よさそうに細めた目で笑い、お上品に紅茶を飲む。そんなアマノを見て、ジャックの苛立ちと動揺はきれいさっぱり洗われた。


 *


 神界。

 主神達が昨日とは別の場所で会議をしている。


「奇石団のこと、本当にニュースに報道して良かったのか?」

「過ぎたことを気にするな。下手に隠しても何れバレる」

「昨日の水は予想外だったね。きっと海の水を転移で持って来たんだ。魔法ならあの領域に入れないけど、海の水は天然だからね」

「してやられたな」

「それより対策だ」

「その言いようじゃ、もうあるんだね?」

「ああ」


 ゼウスが真面目な表情で頷き、回りをチラリと見た。


「天.シックスが居ない今、新たな天.シックスを作る」

「それが対策?」

「いや……その天.シックスを決める大会を開く」

「もっと詳しく」


 皆が訳の分からない顔をする中、ロキが説明を求めた。


「優勝賞品に欠片を三つ、それとデモの刀」

「なるほど。それを餌に邪神天悪のアイムも魔女の子も奇石団も誘き寄せようと?無理でしょ。バレバレだし、分かってても来るのはアイムだけじゃない?仲間の刀を回収しにさ」

「来ても誰も大会には参加しないだろ。最後の優勝賞品が出たらそれ奪って逃げるのが普通だ」

「メインは大会を行うことだ。大会に参加せずとも、何らかの動きを見せるはずだ。こちらが何か起こさなければ奴らも動かない」

「まあ、いいんじゃない。欠片全部取られてピンチになるかもね」

「笑えない冗談だな」

「そもそも笑えない冗談は冗談じゃないっしょ。今のは本気で言ったんだよ」

「……」

「やるだけやろう。こちらは人数だけは居るし、取られても取り返せば問題ない。まあ、デモ.ゴルゴンにかなり人員を減らされたけど」

「そうだな」


 奇石団の登場により、神々は少し重くてとげとげしい雰囲気だ。


 *


 翌日、アマノとポム吉は朝早く新聞に目を通した。勿論、内容は新たな『天.シックス』を決める為の大会を開くというもの。そして、その優勝賞品が欠片三つとデモの刀だということも。


「なんて書いてるの?」

「ポム吉はバカでエロでマヌケ、世間にも知れ渡ってしまったね」

「そんな!?」

「本気で信じるの貴方くらいよ。ほんとバカね」

「照れちゃう!」


 ポム吉が現れてから朝は、ほんの少しだけ騒がしくなり、ジャックが少しだけ早く起きるようになった。それは、騒がしくて起きるのではなく、アマノがポム吉にセクハラされないか心配で起きている。


「おはよう」

「おはようジャック」

「おはようジャック!」


 ジャックはポム吉にがん飛ばし、眠そうにあくびをしてアマノから新聞を受け取る。


「天.シックス結成の為の大会?商品は欠片三つにデモの刀?」

「どう考えても私や奇石団を誘ってるね」

「どうする?」

「敢えて罠に掛かろう」

「何か考えがあるの?」

「ないよ。ジャックを大会に参加させるってことくらいしか」

「……参加する必要ある?」

「強い天使と戦える。いい経験になるでしょ?」

「勝てる?」

「貴方もかなり腕を上げたでしょ?勝てるかは参加してみれば分かるよ」


 ジャックは、少し嫌そうに目を逸らすが、すぐに表情を変えて首を縦に振る。


「参加する」

「流石ジャック」

「流石ジャック!ひゅーひゅーだよ!」


 アマノとポム吉におだてられ、ジャックはまんざらでもない表情を浮かべて紅茶を注ぐ。


「今回は欠片を奪うというより、神々の動きや奇石団の動きを監視することが目的。それにデモの刀があるからアイムも動くと思う」

「分かった」

「じゃあ、来週の大会までたくさん特訓しようか」

「押忍……」

「あれ?元気とやる気は?」

「……押忍!」

「よろしい」


 *


 一週間後。

 天界第5階層の大闘技場、今日この場で天使達による戦いが始まろうとしている。


「何で私まで……」


 疲れた表情をしているのは、死神のタナトスだ。どうやら、アマノに言われて仕方なく大会を見に来たようだ。


「二人の方が目立たないし、魔女の子と疑われてもタナトスの力量しだいで誤魔化せる」

「神頼みならず死神頼みですか」

「それよりポム吉しらない?さっきまで居たでしょ?」

「ここに来た時までは居たんですけど……」

「まあいいわ。一応親しい判定になってるから、転移魔法で探せる」

「もう親しい仲なのですね」

「タナトス以上にね」

「そんな……」


 タナトスが露骨にガックリしたのを見て、アマノが嬉しそうにして薄い微笑みを浮かべる。


「今回の参加者は?」

「確か16名ですね。急な出来事だったので、それほど集まらなかったようです。それに、今回は四大天使が何人か参加してますし、天使最強の男も参加してます」

「今回集まらなかった理由はそれが原因ね。いくら殺しが禁止されてるこの大会でも、彼と戦うのは気が引けるもの」

「ですね」


 観客席に着き、大会のパンフレットに目を通しながら話をしていると、大会開始のアナウンスが流れ始めた。


「さあ始まりました!新天.シックスを決める欠片の大会!上位6名が新たな天.シックスとなるこの大会!ルールは簡単!相手に負けを認めさせるか相手を気絶させれば勝ち!殺したら負け!以上!それでは第一回戦!ジャッキー対リドワン!」


 ジャッキーは、天使に変装したジャックのことだ。天使の羽根を生やし、顔を包帯で隠している。その包帯の裏では、静かに深呼吸をし、目を瞑る少年の顔がある。

 普段緊張しないジャックも、無意識に緊張している。


「試合開始!」


 闘技場の中央に足を運び、敵の天使と目を合わせたかと思えば、いつの間にか試合が始まっている。試合が始まったかと思えば、敵が神器を片手にすぐ目の前に来ている。全て一瞬のことのようだった。


「やばっ」


 ジャックは反応が間に合わず、槍を一撃受けてしまう。しかし、すぐに距離を取って神器を取り出す。


(緊張してるのか俺?体が思うように動かない)


 この時、初めて緊張している自分に気が付く。しかし、体は以前思うがままに動かず、いつもとは違う感覚がある。得に、胸の部分が苦しいように感じる。


「照れちゃう!」

「えっ?」


 ジャックの上着から出てきたのは、可愛いらしく笑うポム吉だ。どうやら、今までポム吉が服の中に居たことも分からないくらい緊張していたらしい。


「お前いつの間に?」

「ジャックはアマノ以上にペチャパイだね!けどスベスベして気持ちい!」

「エロ吉てめえ……俺は女じゃねえよ」


 ジャックは、そう言ってポム吉を脇に挟み、極限まで押し潰す。


「隙あり!」

「やべっ!」


 だが、よそ見をしていたジャックに再び槍の攻撃が迫る。ジャックは、反射的にポム吉で防御を固るが、諸に攻撃を受ける。


「ちっ」


 痛みに怯まないジャックは、ポム吉ごと天使を蹴って神器を投げる。それをしっかりと見ていた天使は、当然のように神器を交わし、再びジャックとの距離を縮める。だが、ジャックが投げた神器は天使を軸にしたかのように戻って来た。


「何!?」

「神器、魔標線まひょうせん


 ジャックの左手には目には見えずらいワイヤーがあり、そのワイヤーはジャックの神器、桃凛剣に繋がっている。


「天使を軸にワイヤーを引っ張ったのか!流石ジャック!」


 ポム吉は、そう言ってジャックの肩の上に飛び乗りる。同時に、ジャックが素早く天使の腹を切って、流れるように天使の背後を取って刀を首に当てる。


「参ったか!」


 ポム吉が偉そうに言うと、天使は清々しい表情で頷いた。


「参りました」

「第一回戦!勝者幼き天使!ジャッキー!」


 第一回戦目ということもあり、観客席からは歓声と喝采が飛び交える。そんな中、自分の力が天使に通用することを実感したジャックは、包帯の奥で少し笑った。


「ペチャペチャ」


 服の中に入り込むポム吉を見て、ジャックは少しだけ感謝した。認めたくないものの、ポム吉が自分の緊張をほぐしてくれたことに。


「そんなペチャペチャが好きなら――」

「ほわっ!」


 ジャックはポム吉を持ち上げ、地面に叩き付けて踏みつぶす。ポム吉はぺちゃんこになり、昆虫のようにピクピクと動いている。


「次ペチャしたらもっかいペチャ吉にするからな」

「てっ、照れちゃう……」


 ジャックは、不機嫌な口調でポム吉を置いていき、ご機嫌な表情で控室へと戻って行く。

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