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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】一章『アマノとジャック』
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第19話【ポム吉】

 既に金箔した空気になっていた。ゼウスが奴隷を演じるアマノを怪しんでおり、アマノは刀を抜いて攻撃しようとしていた。


「あー!君僕らのとこの奴隷じゃない!?」


 だが、ロキが思い出したかのようにアマノに向かって来た。アマノは、慌てて刀を隠すように仕舞い込む。


「何だ。お前のとこか」

「うん。誰の奴隷だったか覚えてないけど、可愛いから覚えたんだ。子供の方は酷い傷だね~。すぐに手当してあげるからね」

「あっ……ありがとうございます」


 アマノは、何が何だか分からなかったが、ロキが自分を奴隷だと勘違いしてくれたことに一安心した。


「ごめんゼウス君、僕彼女を地上に連れてくね。子供の手当も必要だし」

「ああ。他は儂らですましとく」

「どもー」


 *


 地下の中にある海の上で、アマノはロキに貰った医療品でジャックの手当を行った。ロキは、そんなアマノの方をじーっと見ている。


「デモ.ゴルゴンの情報を探りに来たの?」


 ロキは、飄々とした口調で尋ねる。しかし、アマノは惚けた様子で首を傾げた。


「何のことですか?」

「誤魔化さなくていいよ。魔女の子アマノと人間ジャック」


 アマノは驚いたように目を見開き、ゆっくりとロキを横目で見た。


「気付いてなぜ庇ったの?」

「そうだよ」

「何を企んでいる?」

「今は謎を明かしたい。例えば、デモ.ゴルゴンは何者だったのか……とか。知ってたら教えてくれない?」

「私も知らない。ただ強いってことしか」

「ふ~ん……まあいいや。ともかくあまり首を突っ込まないことだね。大人しく下界で隠れてな」

「私は魔王を殺していないし、天.シックスに関しては向こうから仕掛けてきた」

「だろうね。いくら君でも魔王を倒すのは無理でしょ。どうせ魔王を倒したのはデモ.ゴルゴンでしょ?まあどっちにせよ、昔君が神を殺した事実は変わらない。皆何かと理由を付けて君を悪くするよ」


 アマノの表情が不機嫌になり始めた。ロキもそれに気づき、少し警戒したかのように座る態勢を変える。陸地が見え始め、海が不思議と黒く見えた。ロキから見た海は、アマノの心の中そのものだ


「神殺しなんてたくさん居るわ……ゼウスだって貴方だって……同じ殺しになぜ善悪を付けるの?」

「殺した相手が敵だったから。君が殺したのは自分の師匠だったね?」

「でも悪いのは彼よ。私は正当防衛だった……誰も私の話を聞いてくれなかった」

「それは君が魔女の子だから。周りと違うから人より苦労するのは当然だし、誰も信じてくれないのも当然。理解が足りないままこの世界に来た君が悪いよ」

「理不尽……」

「理不尽だよ。どの世界も理不尽で不平等……それが当然のルール。その理不尽の上で生きていかなきゃダメだよ。僕も次君を神界や天界で見かけたら、容赦なく殺すからね。ほら、陸に着いた……行きな」

「ふんっ、どうも」


 アマノは、苛立ちの目でロキを見下ろし、気に食わない表情のままジャックを抱えてボートを降りた。ロキは困ったように笑い、少し疲れた表情で海を見た。


 *


 パーティー会場のすぐ真下まで来ると、気絶していたジャックが目を覚ました。


「ここは?」

「おはようジャック。さっきは殴られてくれありがとうね」


 アマノは、申し訳なさそうにジャックの頭を撫でるように軽く触った。


「うん。ちょっとびっくりした」

「あの後なんやかんやで助かったよ。取り合えずこのままこの会場を抜け出して帰りましょ」

「うん」


 二人は、ワイン倉庫から出て、パーティードレスを着たまま何食わぬ顔で会場を出ようとした。だが、扉を開けて出ようとしたその時、ジャックは目の前の男にぶっつかって尻もちを着いた。


「すみません!よそ見してまし……え?」

「なっ!?お前……」


 ジャックがぶつかった相手はアイムだ。パーティースーツを着ており、悪魔だとバレないよう最善を尽くしている様子だ。それを見たアマノは、すぐにジャックとアイムを引っ張って会場を出た。


「何で居る?」

「こっちのセリフだ」

「まさか貴方もニュースを見て?」


 アイムは、一瞬目を逸らし、すぐに首を縦に振った。


「私達も」

「やっぱここが怪しいよな。主神会議する場所ならここだと感づいたんだろ?」

「ここで会議していたわ。けど、もう会議は終わりそうだった」

「どうだった?デモは死んだのか?石の欠片とは何なんだ?」


 アマノは、地下で聞いた情報を全てアイムに話した。


「じゃあデモが死はほぼ確定か……信じられないけど」

「石の欠片、これがかなり危なそう。一つに最高神一人分の魔力、それが見つかってるだけでも17個。独り占めする者が現れてもおかしくない。今神界にあるどの魔道具や神器よりも凶器になる」

「取り合えずデモに繋がる物なのは確かだ。神々に取られるのは尺だ。見つけたら俺にも教えろ。勿論俺も見つけたら教える。俺達はただでさえ味方が居ないんだ。仲間ではないが、できる範囲で協力した方がいい」

「そうね」

「情報助かった」


 アイムは、そう言って下界へ繋がる扉を出現させ、その中に姿を消した。アマノも追いかけるように下界への扉を出現させる。その時、ジャックの目の前に何かが落ちた。それは、微かに輝く白い石の欠片だった。


「これって……」

「ジャック何してるの?早く」

「えっ?あっ……うん」


 ジャックは、慌てて上をきょろきょろ見渡すが、上空には何にも見えない。近くに建物や神々は居るが、誰もジャックを見ていない。不思議に思いながら、下界への扉を潜った。


「ケッケッケ、俺が持ってたとこでいずれサタンにバレるだろうし、奴らに持たせた方が面白い。こんな危ない欠片が何個もある。この欠片を巡って戦いが起きるのは時間の問題だな」


 少し離れた場所で、ジャックを見ていた男――クルーニャがニヤッと笑っている。その表情は、今のジャックを楽しんでいるというより、これから起きることを考えて楽しんでいるようだ。


 *


 ジャックは下界に戻り、森の中に入ってから慌てたようにアマノに白の欠片を見せた。


「さっき落ちてきた!上から落ちてきたんだよ!ほらこれ!欠片だよ!主神達が持ってたのと同じ!」

「嘘。落ちてきたって……神界で?」

「うん」


 アマノは、疑うような表情で目を細め、恐る恐る欠片を受け取る。そして、手の平に出現させた魔法陣の中に入れ、探るように欠片を見つめている。


「何してるの?」

「罠じゃないか確かめてる。トラップ魔法とか呪い掛かっていないか」

「大丈夫そう?」

「いっ!?」


 ジャックがアマノの顔を伺ったその時、アマノは反射的に目を抑え、持っていた欠片を落としてしまう。


「大丈夫!?」

「だいじょばない……目が痛い……目が開けれない」


 目を抑えたままのアマノは、少し離れた椅子までよろめきながら歩く。ジャックは、落ちた欠片を摘まむように持ち、駆け足でアマノの方に行く。しかし、摘まんでいる指の感覚が変化した。


「痛いよ!頭ちぎれちゃうよ!」

「えっ?」


 摘まんでいたはずの欠片が、サッカーボールくらいのぬいぐるみになっていた。しかもそのぬいぐるみは当然のように喋り、じたばたと動いてる。


「うわぁ!?何だお前!」

「ほわっ!?」


 ジャックは、慌ててぬいぐるみを手放し、警戒するように神器を構える。ぬいぐるみは、普通に頭から落ち、ポンッと跳ねる。


「白い犬のぬいぐるみか?魔法で動いてるのか?」

「犬じゃなくて熊だよ!」

「かっ、欠片はどこやった?」

「これ?」


 シロクマのぬいぐるみは、可愛らしい声とバカっぽい仕草で、手に持っている欠片を見せた。


「どうしたのジャック?」


 目を痛めているアマノには、ジャックが何に驚いているのかよく分からない。


「熊のぬいぐるみがいきなり現れて!なんか怪しいんだ!」

「まさかジャック、ぬいぐるみが欲しいの?」

「違うって!突然現れた熊のぬいぐるみが動いてるんだよ!」

「よくわからないから後で聞かせて」


 ジャックが必至に説明するも、アマノには本気にされずに聞き流されてしまう。困ったジャックは、神器を構えたまま一歩後ずさりをする。


「どこから現れた?」

「どこ?僕もわかんないや」

「お前は誰だ?名前は?」

「僕は僕だよ」

「惚けやがって」

「照れちゃう!」

「とにかく持っている欠片をその場に置いて離れろ」

「分かったよ」


 ぬいぐるみは、その場に欠片を置き、アマノの居る方へてこてこと歩いていく。その後ろ姿を見たジャックは、欠片を拾って素早くぬいぐるみを切り裂いた。


「ほわあ~」


 ぬいぐるみは真っ二つになり、その場に倒れる。一安心したジャックは、ぬいぐるみの上半身を摘まみ、不思議そうに首を傾げる。


「照れちゃう!」

「えっ?」


 だが、ぬいぐるみは当然のように生きており、ジャックの背筋を凍らせた。反射的にぬいぐるみを手放したジャックは、冷や汗をかいたままアマノの居る場所まで下がる。それと同時に、ぬいぐるみの体は魔法のようにくっ付き、何事もなかったかのように歩き始めた。


「アマノやばい!」


 ジャックは、目を痛めてるアマノの前に立ってぬいぐるみを警戒するが、ぬいぐるみは赤ん坊のように椅子に上り、テーブルに並んでるパンやケーキに手を付けた。


「むしゃむしゃ……うまい!」

「とっ、突然現れてビビッてたけど……害はないのか?」


 ジャックは、恐る恐るぬいぐるみを持ち上げ、ゆっくりと顔を合わせる。ぬいぐるみは可愛らしく微笑んでおり、「照れちゃう」という言葉を連呼している。


「へっ、へへっ。こう見たら普通に可愛いかも……」


 ジャックは、苦笑いでぬいぐるみを撫でる。ぬいぐるみは再び照れており、ご機嫌そうだ。


「見ていなかったけど、もしかして欠片から現れたのか?お前は?」

「分からないよ。僕昔のこと覚えれない」

「お前ってバカなのか?」

「照れちゃう」


 ジャックがぬいぐるみと話しをしていると、アマノが赤くなった目をゆっくりと見開き、薄い目でジャックとぬいぐるみを見た。


「何それ?」

「喋るぬいぐるみ。魔法か何かしらないけど、こいつには命があるみたい。恐らく欠片から現れた。もしかしたら欠片との関係があるかも」

「ならここに置いときましょ。欠片との関係がある可能性があるなら手放す訳にはいかないわ」

「……こいつの名前どうする?」

「うーん、そうね~」


 アマノは疲れた目を擦り、ぬいぐるみを持ち上げて顔を合わせた。柔らかい体をポムポム触り、頭を軽く撫でる。


「じゃあ、ポム吉……これが貴方の名前」

「名前っ?美味しい?」

「呼び名のこと。私はアマノ、隣の彼はジャック。今日からよろしく」

「照れちゃう!名前ありがとうアマノ!」

「どういたしまして」


 ぬいぐるみ――ポム吉は露骨に喜び、足をばたつかせてアマノの胸に飛び込んだ。アマノは、甘えるポム吉を見て、優しく撫でようとする。


「ペチャッ」

「えっ?」


 しかし、ポム吉の一言でアマノの表情と動きが止まった。ジャックは唾を飲み込み、恐る恐る横目でアマノの顔色を伺う。

 ジャックの予想通り、アマノの表情は深く、嫌悪と怒りに染まってる。


「ペチャペチャ!」


 ポム吉は、アマノの小さな胸に顔をこすり付けており、たくさん照れちゃうしている。ジャックは一瞬にして悟る。ポム吉はバカなんだと。

 そして、アマノはポム吉をワイヤーで縛り、一瞬にしてバラバラに細切れにする。


「ほわぁ~」

「このエロ吉……」

「照れちゃう」


 細切れになったポム吉は、再び体が再生して元に戻る。

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