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ミトロジア  作者: ビタードール
一部】一章『アマノとジャック』
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第11話 【天界騒動】 後編

 天界の刑務所では、デモとアイムが神々や天使達に囲まれていた。


「流石ミカエルだ」

「ゼウス様程ではありませんよ」


 デモは、ミカエルと隣の神の会話で気付く。隣の神がゼウスと言う名前だと。その名前は、神や悪魔で知らない者が居ない程の有名神の名前だ。


「アイム、大丈夫か?」


 デモは周りを警戒しつつ、以前絶望しているアイムの顔色を伺う。


「……大丈夫だ。ただ、神や天使のくせして美しさの欠片もねぇなと考えていただけだ。やり方が汚ねぇ」

「それじゃあ、軽く掃除してから帰ろうか」


 デモはそう言って指から液体を放った。その液体は、近くで破裂して周りに飛び散った。飛び散った液体は、その場で大爆発を起こし、刑務所を粉々に吹き飛ばす。

 刑務所が壊されたことにより、収容されていた囚人達が次々と逃げていく。周りで待機して居た神や天使は瓦礫に挟まった者がほとんどだ。


「囚人を追え!」


 瓦礫に挟まってた者が次々と逃げた囚人を追おうと飛び立つ。しかし、デモが流れるように神々の体に触れる。不思議なことに、触れられた者達は気を失い、天界から落ちてしまう。


「人間になったように感じた……何なのだ奴は?」


 それと同時に、アイムがミカエルの首を掴み、宙に舞った。


「てめぇを殺して逃げることにした……目の前でルゼの母親を爆発したこと、後悔させなきゃ気が済まない」

「はっ……な……せ……」


 首を締め付け、トドメを刺そうとした時、雲のようなものがアイムの体を包んだ。それでも、構わず絞め殺そうとしたアイムだったが、雲がアイムの腕をへし折った。


「ちっ」

「けほッ、助かりましたゼウス様」


 雲は人の形になり、雲から肉体へと質感が変わる。どうやら、雲の正体はゼウスだったらしい。


「アイムダメだ……奴らの仲間がどんどん来る。逃げるよ」

「しかし!このままじゃ気分が収まらねぇ!」

「このままにする訳ないじゃん」


 デモはニヤリと笑い、アイムを引っ張りながら上空へ飛んだ。その手には、黄金に輝く禍々しいエネルギーがある。


「やばい!何かやばい!皆転移で逃げろ!」

「無属性魔法、ゼロ.メーデン」


 手から放たれた魔法は、圧倒的な範囲力で周りの神や天使を吹き飛ばした。建物はほぼ全て崩れ、周りに居たほとんどの者が光を受けた。


「おい!街にまで被害が行ってるぞ!」

「大丈夫、光を食らった者は皆人間になったよ。下界で新たな人生始めるだけさ」

「規格外……まぁ、別に一般の奴らもどうでもいいが」

「帰るよ。やり過ぎると必要以上に追われちゃう」

「それボケか?もう手遅れだぜ」


 崩壊した街の上に居たデモとアイムは、光に包まれてその場から姿を消す。


 *


 デモとアイムはルゼの居る下界まで戻っていた。これから二人は、ルゼの母親が死んだことを告げなければならない。


「ごめんルゼ、お母さん助けれなかった」


 デモが表情を変えないで言った。声は穏やかで申し訳なさそうな声だが、表情はそうでもない。


「そう」


 ルゼは表情を失い、死んだ声で呟いた。だが、すぐに涙をポロポロと流し、デモとアイムから顔を背けた。

 デモは黙ってルゼの背中を擦り、寄り添うように抱き締めた。決して言葉は掛けなかったが、ルゼが泣き止むまで近くに居た。

 アイムは、デモのように慰めることはせず、冷めた表情のまま家から出て行った。だか、その表情が悔しそうなものだったのは確かだ。


 *


 天界の更に上の世界、それは神々だけが住むことを許された神界。その神界では神々が会議を行っていた。


「邪神天悪が派手にやったな。街一つ消しやがった」

「魔女の子の行動も目立っている。早めに捕まえるか殺すかしたいな」


 神々の影は何十何百もあり、その中央には五人の影が見える。


「デモとか言ってたな?邪神天悪のリーダーの……奴が放った魔法で神や天使が人間になったと言うのは本当か?」

「本当だ。人間になった者は今下界でのうのうと生きている。自分が神や天使だったことなんて微塵も覚えていない」

「デモ、知らない名前だが……最高神レベルなのは間違いない」

「下手したら主神レベルかもな」

「それより案を出せ!何か作戦とかないのか?」

「あります!」


 一人の神が声を張って立ち上がった。神々は、一斉にその神の方を見る。


「何だ?言ってみてくれ」

「魔女の子の方ですが……彼女の身内の魂がこちらに来ました」

「身内?」

「人間です。その魂を人質にし、魔女の子を誘き寄せましょう」


 神々が悪巧みをする中、一人の神がその会議から気配を消してその場から立ち去った。まるで、会議に興味がなかったかのように、すたこらと足を運んでいる。


「邪神天悪のデモも魔女の子のアマノも面白そうだが、皆注目すべき場所を間違えている。歯車が回り始めたのは邪神天悪でも魔女の子が原因でもない」


 その男は一見目立たないが、不気味な美しさを放っていた。オシャレに結んでいる黒髪、女性のような綺麗な顔立ち、黒い服、目は赤く透き通っている。


「人間の子供だ……魔女の子の天……噂ではジャックとか言う名前の人間。そいつが魔女の子に拾われてから騒がしくなった。とっても気になる」


 その男は、一人静かに呟いている。


「ケッケッケ……神々も何か企んでるようだし、俺も悪巧みするかな」


 男はニヤッと笑い、闇の中に姿を消した。


 *


 その日は大雨だった。その雨の中、アマノとジャックは傘を差して木の上に座って居た。目の前では、人々が黒い服を着て葬式を行っている。死んだのはジィジだ。

 アマノは虚ろな目をして下を向いている。ジャックは決してアマノの方を見なかったが、アマノの背中に落ちる雨を見て、さりげなく羽根を広げて雨を防いだ。


 葬式が終わってしばらくすると、二人は無言のままジィジの家に向かった。家にはいつもアマノが頼み事リストを置く場所がある。その場所に、一つの手紙があった。


「手紙……読む?」


 ジャックが静かにそう言うと、アマノは背を向けたまま首を縦に振った。


「アマノ様へ。今これを読んでいるということは私はこの世を去ったのですね。突然死んですみませんね。アマノ様はアマノ様らしくやりたように人生……いや、神生を生きてください。今まで私を頼ってくれてありがとうございます。これからは私の息子を頼りにして下さい」


 手紙を読み終えたジャックは、横目でアマノの様子を伺っていた。アマノは長めに目を瞑り、静かに深呼吸をしている。


「人間にはなりたくないね」


 アマノが顔を背けたまま言った。


「……なんで?」

「別れの連鎖だから……寿命で死なない私からしたら余り考えられない世界だよ」

「俺もあんま分からないよ」

「そうね。けど、ジャックもいずれは死ぬ」

「つまり……何が言いたいの?」

「私もよく分からない……だから気にしないで」

「そう」


 二人は、いつもと違う雰囲気に苛まれ、アマノの胸の奥がざわめいていた。ほんの少し気まずそうな二人は、再び無言になって森に帰った。


 森に変えると、森の前のお賽銭に一つの紙が挟まっていた。たまたま挟まった様には見えない。アマノは不思議に思い、お賽銭から紙を引っ張った。


「あいつら……」


 先程まで死んだ目をしていたアマノは、手紙に目を通して怒りの表情を浮かべた。ジャックが初めて見るアマノの怒りだった。


「何て書いてるの?」

「魔女の子とその天に命じる。貴様らの爺さんの魂が地獄に行って欲しくなかったら貴様ら二人の命を差し出せ。さもなければ爺さんの魂は地獄行きだ」

「爺さんって……ジィジのことか。どうするアマノ?」

「勿論魂を天国に返すし、私達も死なない道を選ぶ」

「分かった」

「早速行くよ」


 アマノは、手元で手紙を塵にし、怒りの表情のまま天界へ向かおうとした。


「待つんだ二人共」


 だが、聞き覚えのある声が二人の足を止めた。二人が振り向くと、そこには死んだと思われていたデモが居た。


「デモ!?何で生きてんだ?」

「新聞見た?デモ.ゴルゴンは生きていたんだよ」


 デモは、笑いながら二人の元まで足を運ぶ。


「何か用?急いでるんだけど」

「そのペチャパイを拝みにき――」


デモがアマノの胸に飛び付くが、そのまま蹴り飛ばされる。


「ホワッッ!」

「で?何しに来たの?」

「いたたっ……僕も行くよ」

「……何を企んでるの?」

「一度助けた命を死に追いやりたくないからね」

「天.シックスの件ならお互いの為でしょ?助けられたとは思ってないわ」

「あぁ、そっちじゃないんだけど……」


 苛立っていたアマノは、デモを睨むように見ていて、鬱陶しそうにしている。


「別に来ても良いけど、邪魔したら貴方殺すから」

「取り敢えず、作戦立てたらどう?少し冷静になって」

「……分かった」


 アマノは目を逸らし、少し不満そうにしながらも冷静になることを優先した。


「考えた」


 数分考えたアマノが、冷静さと穏やかな表情を取り戻した。


「言ってみて」

「ジャックはジィジの魂を探して天国に返す役割。魂の場所や天国の場所は私やデモとテレパシーでコンタクトを取りながら教えるわ」

「分かった」

「そして、私が連中を引き付ける役割。デモは私を追う者を再起不能にする役割。追われる私と追うデモで挟み撃ちになるわ」

「了解!」


 話し終えた三人は、天界へ扉を開けて姿を消した。静まり返った森の付近で、静かに空気が蠢いている。

 そして、天界への扉が消えると、そこに音も気配もなく一人の男が足を運んだ。


「あれが魔女の子のアマノ……俺じゃ勝てないな。それにデモ.ゴルゴン……俺に気付いてて敢えて気付いてないフリをしていたな」


 オシャレに結んでいる黒髪、女性のような綺麗な顔立ち、黒い服、赤い目――男は、ニヤッと笑った。


「ケッケッケ……ジャックの行先は魂の行き場か」


 男も天界への扉を開き、無邪気な笑みでニヤッと笑ったまま赤い瞳を輝かせた。

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