第534話.バイトの面接
デート日和な1日を満喫し終えたら、私達はゆっくりと散歩をしながら駅に向かった。
空はすっかりと暮れていて、遠くの方がほんの少しだけオレンジ色。あと30分もすればとっぷり暮れるんだろうなと思いながら、歩みを進める。
秋の季節がより一層濃くなり、夏の気配はすっかりと消えうせた。日中も思い切り体を動かせば汗はかくものの、普段通りに生活する分には汗もかかず非常に暮らしやすい気候となっている。
食べ物も美味しくなってしまう季節だからついつい食べ過ぎちゃいそうになるのでそこは気をつけつつ、この季節をめいいっぱい楽しもうかと計画するのだ。
ところでだ。私も刻も受験が終わり、その合格の可否も既に届いているわけだ。ありがたいことにどちらも冬の前にも関わらず桜咲いてくれたおかげで、こうして残りの高校生活を謳歌できる訳だが、さてこの後はどうしようかという問題が立ちはだかる。
確かにこれまでは受験という大目標があったからいいが、これ以降は特にそういったものが無い。つまるところ何もすることが無いわけだ。もちろん部活には顔も出すつもりだが、代が変わる事も考えると今までのように頻繁に顔を出すのもいかがなものかと思うわけである。
うむ、デート三昧というわけにも行かないし、何よりそんなことをするとお金の方が普通にピンチになっちゃうのだ。あまり両親からの仕送りで遊びまくるわけにはいかない。
そんな事を考えていると私ははたと思いつく。
「ねね、刻に1つ提案があるんだけどさ、いいかな」
「ん、提案?」
「うん」
私はそう言うと思いついたその案を刻に話すのだ。
✲✲✲
さて、デートの日から幾数日が経った今日。私は履歴書とその他もろもろの必要物をトートバッグに入れて歩いていた。
目指すのはいつも使っているスーパー。そしてその中のサービスカウンターに今日は寄る。
「すみません、電話で連絡させてもらっていた空宮ですが」
「あぁ、はい。お話は聞いてますよ。少し待っててくださいね」
チェッカーリーダーと書かれた名札をつけた店員さんにそう言われ、私は少しの間ボーッとたって待つことにする。待つと言っても2分ほどで店の奥から店長らしき人が出てきたのだけれども。
「きみが空宮さんかな?」
「あ、はい。空宮です」
「じゃあついて来てくれるかな」
そう言われて歩き出した店長の後ろを私はついて歩く。
店の奥にある店員ノミが立入ることの許されているスライドドアの向こうに行き、さらにその奥にある個室にへと案内された。
「じゃあ、そこに座ってもらえるかな」
「は、はい」
「緊張はしなくても大丈夫だよ。リラックスね」
初めてはいる場所だったので体の硬さと言葉の硬さから何となく察したのだろう。私はそのアドバイス通り出来るだけリラックスするように努める。
「じゃあ、まずは持ってきた履歴書を見せてもらえるかな」
「あ、はい。これです」
ファイルにまとめておいた履歴書を渡す。店長はそれを見ながらふんふんと頷いていた。
「高校三年生なんだね。受験はもう終わったのかな」
「はい。一応推薦の方で合格を貰ったので」
「なるほどなるほど。それで時間ができたからバイトでも始めようかなって感じかな」
「まぁ、そうですね。一応近くには住んでますけど、親の手元から離れて暮らしてるので。あまり仕送りに頼るのもいけないかなって」
「なるほどねぇ、分かりました。あ、そうだ。一応バイトの面接の子には全員やって貰ってる簡単なアンケートとテストがあるからそれだけパパッと終わらせちゃってくれるかな。あ、正答率とかは気にしなくてもいいからね。正直この結果は関係なしに採用とか決めるから」
「あ、分かりました」
持ってきていたシャーペンでカリカリと2択のアンケートと簡単な数字の式の問題を解き終えると、私はその紙を店長に返す。
「はい、受け取りました。そうだね、見た感じ人柄も良さそうだし、というか空宮さんって元々ここのお客さんだよね」
「そうですね。自炊するのでここはよく使います」
「なるほどね。うん、一応後日に採用かどうかは連絡させてもらうけど、十中八九採用だから安心して今日は帰ってください」
私はそう言われてホッと一安心しつつ、ありがとうございましたとだけ言って店を出た。
手に重さを感じずにこの店から出るのはなんだか新鮮な気がしてならない。ともかく、今日は目的を達成できたからそれでいいとするのだ。
第534話終わりましたね。蒼はどうやらスーパーでアルバイトを始めるようです。ということは、刻も何かしら始めるのかもしれませんね。何をするんでしょうか。
さてと次回は、20日です。お楽しみに!
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