第532話.後夜祭はこうでいい
ピリリッとひりついた空気が肌を刺激する。緊張感に満ちた静かな時間。何分の間も過ごしたかのように錯覚してしまいそうなその時間を過ごしながら、生徒会長の口が動き出したのを私達は確実に捉えた。
「それでは改めまして、1位の発表です。記念すべき文化祭売り上げランキングの第1位は……」
あらかじめ用意していたのだろう。ドラムのSEが流れ出す。内心ベタな演出だこと、なんて思いつつも、やはり結局はこれが一番緊張感を増すのだ。
ドラムの最後にシンバルのバーンという音がスピーカーから流される。そして会長は1位となったクラスの発表するのだった。
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後夜祭の楽しみ方は人それぞれである。
主催は生徒会ということになってはいるが、何か大きいイベント事をするのかと尋ねられるとそうではないと言わざるを得ない。逆に個人で先に申請を出していれば好きな事ができるのもうちの高校の後夜祭の特徴である。
一つ例に出すと、昨年は某テレビ番組のごとく、屋上から思いの丈をぶちまける企画が執り行われていた。夜中のテンションが通常よりも高い時に行ったためか、その盛り上がりというのは異常だったことを覚えている。
今年も何かするのだろうかと色々聞いてみたりするが、それらしき情報は特にない。体育館のバンドくらいか。
私は刻を伴って歩きながら外に出ることにする。外とは言っても素直に一階から出たわけではなく、屋上に出たのだ。
普段人の立ち入ることが少ないためか汚れは所々目立つものの、ここまで暗くなってしまえば何も気にならない。私は屋上に出る直前に入手しておいた大きめのダンボールを敷くとその上に座った。隣をポンポンっと叩いて刻も座るように促す。
「終わっちゃうね」
最初に出た言葉はそれだった。
楽しかったね、面白かったね、ではなく終わっちゃうねという非常に寂しい言葉。けれど、それが一番適しているのだと思う。どうしようもなく、私達には次が無いのだから。
ごろんとダンボールの上に寝転がると、刻も一緒に寝転がる。視界に移るのは街の光のせいで薄くしか見えない星と、一つだけ強く光るお月様。
「満天の星空、いつかは見てみたいね」
「冬休みに、どこか星の見える場所に泊まりに行こうか」
「それいいね。色々調べとくよ」
「そうしておいてくれ。俺は受験に決着をつける」
「うん。あ、でもお泊まりに行く前にデートの約束も忘れちゃやだよ?」
「分かってる。ちゃんとデートの事も考えておくよ」
「ありがと」
そんな会話をしながら長い後夜祭の時間を2人で過ごす。
校舎や中庭の方からは賑やかで楽しそうな声が聞こえる一方、屋上は静かでいい。
ぐっすり眠れてしまいそうなくらいには疲れている体を休めながら、私は刻の方にごろんと体を寄せた。
第532話終わりましたね。後夜祭とは何たるかを知らないので、作者が書きたいように刻と蒼の絡みを書きました。この2人はこうして仲睦まじい姿を見せてくれるだけでこちらまで幸せになるのでいいですよね。
さてと次回は、16日です。お楽しみに!
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