その1 ちょっとした疑問
最寄りの駅までは徒歩で十五分。
僕は毎朝、通勤のためにその駅まで歩いている。
途中に、信号機のある交差点が一か所だけある。
そして不思議なことに、僕がそこへ着くと、歩行者用信号機はいつも赤なのだ。
――ったく、またかよ。
いつもそう思う。
もちろん、気のせいかもしれない。
歩行者用信号機の青は、車道用信号機の青より点灯時間が短いはずだ。
だから赤で待たされる確率の方が高いのは理解できる。
例えば、車道用の青信号が歩行者用の二倍の時間点灯しているなら、赤で待つ確率は67パーセントくらいになるのだろう。
それでも僕の感覚では、九割以上の確率で待たされている気がした。
そう、感覚時間だ。
青信号のまま渡れる日は、立ち止まることもなく通り過ぎてしまう。
ストレスを感じない出来事は、あまり記憶に残らない。
その一方で、赤信号で足止めされる時間は妙に長く感じる。
だから僕の記憶には、実際よりも「待たされた時間」の方が大きく記録されているのだろう。
人はこんなことを「些細なこと」だと言うだろう。
僕も頭ではわかっている。
でも、この赤待ちについて、ちょっとした疑問が僕の中で燻っていた。
――実際はどうなんだろう。
僕はどれくらいの確率で、あの信号機の赤待ちに捕まっているのだろう。
一度気になったら、放置できないのが僕だ。
実際に確かめるべく計画が僕の頭の中で静かに進行していた。
この時の僕は、自分の人生を変える入口に立っていることなど知る由もなかった。




