表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
73/162

2-24

大柄な獣人の傭兵達が、一斉にニルセン様に攻撃を仕掛ける中、彼はしなやかな動きで、それを回避していく。そして、焦れた敵が、体勢を崩したところへ素早い一撃を仕掛けていった。

敵の数など物ともしないニルセン様を前に、傭兵達の士気がどんどん下がっていく。


一人また一人と傭兵達が倒されていく様子を、私は固唾を呑んで見守った。

大丈夫、ニルセン様は絶対に負けないと、自分に言い聞かせて。



ニルセン様が、半数以上の敵を床に沈めると、この場から逃げ出そうとする者が出始めた。

ニルセン様は、そんな敵にも容赦無く剣を振るう。そして、とうとう、一人の獣人だけを残して、襲ってきた傭兵を全て倒してしまった。



「細っこいのに、よくやってくれたなぁ、兄ちゃん!流石は、天下の獣人騎士様ってか!だがなぁ、それもここまでだ!ガハハハハ!」

残っていた一際体の大きな獣人が、大声で笑う。

その余裕な態度に、呆気に取られた瞬間、私の体は、強い力で後ろに引かれた。

私を羽交締めにした細くて白い腕が、更に私の体を締め上げる。

その腕に激しく抵抗すると、腹部を殴られ、短剣が突き付けられた。



「随分遅かったじゃねぇか、雇用主様よぉ。」


「煩いわね、この役立たず!たった一人に、なんてざまなの!さっさと殺しなさいよ!」


「はい、はい。分かりましたよ。て、ことだからよ、兄ちゃん!嬢ちゃんの顔を、目の前で切り刻まれたくなかったら、抵抗すんなよ?」

傭兵が剣を構えると、ニルセン様は悔しげに顔をしかめ、持っていた剣を床に落とした。



「ダメです、ニルセン様!逃げて下さい!」

私が必死に踠いても、キャロライン様の細い腕は外れない。

その抵抗に苛立ったのか、キャロライン様は大きな唸り声を上げて、私の体を床へ叩きつけた。



「ああ!ゴミのくせに!何も出来ないくせに!私の邪魔をするんじゃないわよ!ああ、腹が立つ!切り刻みながら、殺してあげるわ!」


頭を強く打ち付け、動けなくなった私の腹部に、キャロライン様が足を乗せる。

掠れた目で見上げたキャロライン様の顔は、愉悦と憎悪が混在していて、とても醜かった。

せめてもの抵抗で、キャロライン様を睨みつけると、彼女は死を見せつけるように、ゆっくりと短剣を振り上げた。



まだ、死ねない。

このまま、ヴェイル様に会えないまま、死にたくない!

ずっと蓋をしていた、見ないようにしていた欲望が、後悔と共に私の中から這い出してくる。



その時、私の感情を燃料にして、胸の奥が熱く燃え始めた。そこから溢れ出した魔力が、空気中に広がり、迫り来る短剣に向かって集まっていく。そして、ギリギリの所でそれを受け止めた。

薄い魔力の膜越しに、驚いた表情のキャロライン様と目が合う。その瞬間、彼女の姿が消え、私の上に乗っていた重みもなくなった。



いったい何が?

状況を確認しようと、痛む体を起こす。すると、冷えた体が求めていた温もりに包まれた。



「ああ、良かった。無事で良かった、ステラ。」


「ヴェイル様。」


ヴェイル様は私を抱き上げ、縋り付くように、ブラウスの襟元に顔を押し当てている。

私も、今はこの温もりを感じたくて、力一杯、ヴェイル様の体に抱きついた。



「ヴェイル様、ヴェイル様、私、怖かった。ヴェイル様に会えないまま、死ぬのかと思ったら怖かった…。」


「ああ、俺もだ。ステラを失うかと。」


抱きついたヴェイル様の大きな体は、小刻みに震えていた。

私が腕に力を込めると、ヴェイル様も、更に強く私を抱き締め返してくれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ