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*ヴェイル視点 14

『こんな体で、夜会には参加出来ない。』


そう言ったステラの声は、微かに震えていた。『醜い』という単語を彼女が口にした時は、泣いているのかと思った。



違うんだ、ステラ。

こんなつもりじゃなかったんだ。

すまない。

すまない、ステラ。

貴女をここまで追い詰めてしまった。悲しませてしまった。

俺は、思い上がっていたんだ。

俺ならステラを幸せにしてやれると、どこかでそう思っていた。

だから、ドレスを貴女に贈った。

夜会で貴女と踊る幸せな時間を夢想して。



ステラの震える肩に、手を伸ばそうとした時、戻ってきたメルデンに止められた。

そして、メルデンは、不甲斐ない俺達からステラを遠ざけた。

去り際に、一瞬、振り返ったステラと目が合う。しかし、愚鈍な俺の体は、その縋るようなステラの視線に、立ち竦むことしか出来なかった。






暫くして、俺はやっと動くようになった重い足を引きずり、一人、部屋を出る。ステラの体に残る夥しい数の傷痕について、ゼイン医官に話を聞くために。

今の俺にはもう、それしか出来ることは残されていなかったのだ。




ゼイン医官は予想していたのか、遅い時間に突然現れた俺を、驚く事なく受け入れた。



「そうですか。あの傷を見ましたか...。アデライード陛下の許可がないので、詳細は語れませんが、今後の治療のために少しだけお話ししましょう。ステラは、ある非合法組織が所有していた人体実験用の奴隷だったのですよ。その施設から救出されたステラに、今尚残る後遺症が、あの硬化した傷痕と、魔力を求める体です。」


「実験用だと!?後遺症とは、どういう事だ!?今までステラに魔力を提供していたのは、魔力欠如症の治療のためではなかったのか!?」

予想もしていなかった酷い事情に、吐き気が込み上げる。



「はい、直接的には違います。殿下から受け取った魔力は、ステラの体の維持に使われていました。」


「魔力を失うと、ステラはどうなる?」


「...一時的に手足が動かなくなるとかなら良かったんですがね。ステラの場合は、心臓が止まります。過去に一度、魔力を使い切って死にかけた事があるんですよ。」



心臓の停止。

それは、生物にとって死の確定だ。


今まで感じたことのない恐怖が、腹の底から這い上がってくる。どんなに強大な敵と対面しても感じなかったというのに。



「ステラ、を、救うには、どうしたら、いい?」

俺の声が、情けない程酷く震えていた。



「唯一の希望は、貴方ですよ、殿下。貴方の魔力ならステラを救える。」

ゼイン医官の目に、鋭い光が宿る。


その目は、俺の覚悟を測っているようだった。






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