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「も、もう…、赦して下さい…」
褒められることが、こんなに恥ずかしいなんて知らなかった。
誰かに聞かれてるわけじゃないのに。
「何だ?まだまだ俺は、語れるぞ?ステラ、こんなことで恥ずかしがっていては、この先大変だ。これに慣れるのも花嫁修行の一つだな。ハハッ!」
ヴェイル様は、赤い顔で睨む私を揶揄うように笑っていた。心から楽しそうに、幸せそうに。だから、その愛溢れる瞳に釣られて、つい私も笑ってしまった。
「お手柔らかにお願いしますね」
「それは、約束出来ないな。早く慣れてくれ」
「もう…」
苦笑いを浮かべた私を、ヴェイル様が抱き上げ、窓際の椅子まで移動する。そして、ヴェイル様は、私を膝に乗せたまま、椅子に腰を下ろした。
「母上が、サウザリンドに…、父上の下に戻った」
闇の中で見たミシャのコレクション。
ミシャは、輝く魂を持った者達を闇に堕とし、その体と共に保管していた。その中には、ヴェイル様のお母様がいた。
彼女は、ミシャにその運命を弄ばれた被害者だった。
「王太后様は、ご無事なんですか!?」
「母上は、全ての記憶を失っていた。父上や兄上…、あれだけ嫌った俺のことさえ分かっていなかった。だが、あんな穏やかな母上は初めて見た。父上も、幸せそうだったよ。あの二人は、きっと大丈夫だ」
「そう、ですね。幸せになって欲しいです」
「いつか、二人に会ってくれるか?」
「もちろんです!」
ヴェイル様にとってお母様との記憶は、他人に触れられたくない辛く悲しいものだった。だから、まだ昇華しきれない複雑な感情は残っているはず。でも、ヴェイル様がお母様を語る顔は、とても穏やかで、慈愛も垣間見えた。
ヴェイル様と王太后様も、きっと大丈夫。
二人の親子の絆が、再び結ばれる事を願って、私はヴェイル様の胸に体を預けた。
ヴェイル様と過ごす時間は、何よりも幸せな一時だった。
朝は、ヴェイル様と共に目覚めて、暖かい日差しの中、美しい庭を散歩する。午後は、図書室で本を読み、その後、お茶の手解きを受けた。夜は、星を見ながら話をして、また二人で眠りに就く。
幸せで、幸せ過ぎて…。
それで、気付いてしまった。
ヴェイル様、お仕事は?と。
騎士団長のヴェイル様は多忙だ。短い間でも、一緒に働いたから知っている。彼は、こんなにも簡単に休暇が取れる方ではないと。
でも、この三日、私達は庭以外に外へ出ていない。しかも、誰もヴェイル様を訪ねて来ないのだ。
絶対におかしい…。
でも、それとなく聞いても、はぐらかされてしまう。
あれ?
これって、あまり良い状況ではないのでは?
そう思った私は、もう一度、ヴェイル様に聞いてみることにした。今度は、はっきりと。
そんな時、硝子が崩れるような激しい音が部屋中に響き渡った。




