↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
122/162

3-28

「眠らないのか?」


「ヴェイル様…。少し緊張してしまって。」


湯浴みで熱った体を窓際で冷ましていたら、いつの間にか、すぐ近くにヴェイル様が立っていた。



「夜風で体が冷えている。もう奥に戻ろう。」


返事をする前に、背後から伸びてきた逞しい腕に抱き上げられて、部屋の奥へ運ばれる。その間、私の頭には、ヴェイル様の甘過ぎる口付けが降り注ぎ続けていた。



「ヴェ、ヴェイル様っ!」


「何だ?獣姿の時は、これが普通だっただろう?」


「で、でも!い、今は…。」


今夜のヴェイル様は、人の姿に戻っている。

神殿の中央部にある祈りの間であれば、一晩ぐらいなら元の姿に戻っても大丈夫なはずだと、姫様に直談判したらしい。

その結果、歴代の巫女や神官達が神に祈りを捧げてきたこの場に、寝具を持ち込んで簡易の寝所を作ってしまったのだ。


そんな神聖な場所に敷かれたカーペットの上に下ろされた私は、ヴェイル様に再び抱き締められていた。



こんな事をしていていいのかしら。

何だが罰当たりな気が…。


トントンとヴェイル様の背中を叩くと、私の首元に彼の熱い吐息がかかった。



「ステラにしてやりたいことが沢山あるんだ。美味い物を腹一杯食べさせたいし、サウザリンドの色々な名所に連れて行きたい。ステラが望むなら、世界中を旅してもいいな。そして、貴女が気に入った場所に、俺達二人の家を作るんだ。そうだな…。一年中、赤薔薇が咲く白亜の城なんてどうだ?」


「ヴェイル様…。」


「毎年、豊穣祭にも参加しよう。絆のリボンを結んで、俺達は、祝福された夫婦になるんだ。」


「私達が、夫婦に…。」


「ああ、そうだ。式も考えなければな。ステラの花嫁姿を誰にも見せたくないから、出来れば二人だけで挙げてしまいたいんだが。それは、兄上が許してくれないだろうな。」



「嬉しい…。ヴェイル様、私、凄く、凄く、幸せです。」

ヴェイル様が紡ぐ言葉の一つ一つに、私の胸が幸福な熱で満たされ、涙が溢れる。ヴェイル様の背中に回した腕に力を入れて、強く抱き付くと、彼の胸に私の涙が吸い込まれていった。


すると、ヴェイル様は、私を囲う腕の力を緩め、ゆっくり顔を上げた。

急に離れていく熱に寂しさが込み上げた私は、縋るようにヴェイル様を見上げる。すると、ヴェイル様の両手が、私の頬を包んだ。



「世界のどんなものよりも、貴女が愛おしい。俺の全てを貴女に捧げる。だから、どうか、俺と結婚してくれ。貴女がいない人生なんて、もう考えられないんだ。愛してる、ステラ。」


「私も、ヴェイル様を心から愛しています。どうか、ずっと、お側に置いて下さい。」


ヴェイル様への返事が、自然と私の口から溢れ出た。あれだけ悩んでいたのに。

私の望みは、もうずっと前から、私の中で決まっていたのだ。



「ああ、約束だ。」


ヴェイル様は、少し掠れた声で囁くと、真剣な表情のまま私に顔を寄せてきた。

私とヴェイル様の距離がなくなり、お互いの唇が重なる。

触れ合った場所から生まれた熱を追いかけて、私は夢中でヴェイル様に縋りついた。



幸せ…。

この方を愛することが出来て、愛してもらえて幸せ。


名残惜しくも、唇を離した私達の顔には、幸福に満たされた笑みが浮かんでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。