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侵略のポップコーン  作者: 進常椀富
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異星からの狩人2

 翌朝。

 朝食は米のごはんに鮭の切り身、玉子焼きに味噌汁。

 すべて鈴木が作った。


 朝食が済むと、アマガはまず屋上へ行きたいと言った。

 ミッションシップの残骸から修理に使えるパーツを見つけだすためだという。


 アマガが先頭に立って屋上へあがっていき、メリコと鈴木も続いた。

 進常は部屋を掃除すると言い、あとに残る。


 屋上にはミッションシップがバラバラになったパーツの山が鎮座していた。

 朝陽を受けてキラキラ輝いている。


 アマガがメリコに言った。

「単一でできるだけ大きいクロンダイト合金の塊を探してください。動力路に使うには可能な限り継ぎ接ぎを避けないとなりません」

「わかったー」

 二人は腰をかがめてパーツの山をかき分け、漁りはじめた。


 鈴木はクロンダイト合金の見分けもつかないため、そこらへんをぶらぶらするしかない。

 おかっぱを隠すために、朝から日除け付き帽子を目深に被っている。


 鈴木が晴れ渡った空と眼下に広がる街並みを眺めて時間を潰していると、

 かなり経ってからメリコが腰を伸ばした。

「だめ。こんなのしか見つからない……」

 その手のひらにある金属塊は五百円硬貨くらいの大きさしかない。

 それでも大きいほうで、小さいものは一円玉サイズだった。


 アマガも立ちあがった。

「こっちもだめです。こんな小さな破片ばかり集めても修理はできません。無理やりつなぎ合わせたら、いつ壊れるかわからないでしょう」


 思わぬ展開に鈴木はうろたえた。

「えぇ? それじゃミッションシップは直せないの? ぼくたちの作戦の要なのに!」


 アマガは申し訳なさそうに言った。

「わたくしも自壊装置の作動を体験するのは初めてで。こんなに細かくなるものだとは知りませんでした……」


 鈴木はため息をついた。

「はぁー、どうしよ……」


 こうなると鈴木たちには宇宙へ攻めこむ手段がない。

 可能性があるとしたら新たな敵の出現を待つしかないだろう。

 新手の敵も必ず宇宙船に乗ってやってくる。

 その乗機をなんとか無傷で手に入れるしか、方法はないように思われた。

 また後手に回る。


 そこまで考えて、鈴木は頭に手をやった。

「まいったなー……」


 そのとき、スタッとなにかが降り立つような音がした。

 音のほうへ目をやると、アマガのすぐ隣に人影が立っていた。

 真夏なのに黒いコートを着た、黒髪の女が。

 まるで空から降りてきたようにしか思えない出現だった。

 そして、実際そうらしかった。


 アマガは驚いて立ちすくんでいた。

 黒尽くめの女は手を伸ばしてアマガの首筋を触った。

 それだけで、アマガは無力に崩れ落ちる。


 メリコは素早く反応した。

「アンタ誰!」

 言うが早いか殴りかかる。


 黒い女はメリコの腕を絡めとる。

 メリコは右腕を取られてしまったため、光線銃が抜けない。

 代わりに蹴りを放った。

 黒い女はその足もつかんでしまう。

 メリコの片腕と片足を取った女は身体を回転させ、フルスイングでメリコを投げ飛ばした。


 屋上の外へ。


「きゃあああああっ!」

 メリコが悲鳴を残して落下してゆく。

 八階建てのこの高さから落ちたら、いくらなんでも助からない。

 メリコは死ぬ。あっけない最期だった。


「メリコちゃん!」

 あまりの衝撃に、鈴木は身動きできなかった。

 黒い女は鈴木を一瞥するが、ほとんど無関心といってもよかった。

 無表情のまま、口を動かさない不思議な喋り方で独り言のように言う。

「ひとりは殺してしまったが、ひとり生け捕りにできればよいじゃろう。こいつの生皮を剥いでハラワタを引きずり出せば、母上の怒りも治まるであろう」


 鈴木は混乱のなかにあった。

 こいつは誰だ? 

 敵だ! 

 なぜ進常はこの敵を察知できなかったのか? 

 なぜ味方であるはずのメリコとアマガを襲ったのか? 

 なぜ鈴木には無関心なのか? 

 すべてがわからない。

 確実な事実はひとつ。

 

 こいつはメリコを殺した!


 絶望が怒りに変わる。

 熱い、灼熱の怒りに。


 せっかく友達になれたのに。

 遠い宇宙からやってきて、奇跡的な流れで友達になれたのに。

 初めてできた女の子の友達だったのに。 


 そんな彼女をあっさりと殺しやがった!


 復讐は! 

 なさねばならない!


「うぉおおおおおッ!」

 鈴木は怒りの雄叫びをあげた。

 額に第三の眼が開く。

 全身から、そして身体の外のどこかからも、力という力が額に集まってくる。

 それは報復の力だった。


 黒い女は身体を屈め、倒れたアマガに腕を伸ばす。

 アマガまで殺らせはしない! 

 鈴木は叫んだ。

「死ねぇえええええええーッ!」

 第三の眼から光の槍が飛びだし、黒い女の身体を貫く。

 黒い女は苦悶の叫びをあげる。

「くぁああーっ!」

 ぎくしゃくと手足を踊らせたあと、くるっと回転して仰向けに倒れる。

 もう動かない。

 復讐は成された。敵は死んだ。


 鈴木は肩で息をした。

「はぁはぁはぁ……」

 ひと呼吸ごとに興奮が治まっていく。

 怒りの熱が冷めていく。

 代わりに後悔と冷たい恐怖が湧きあがってきた。

 とうとう人を殺してしまった。

 敵を殺したところでメリコは戻ってこないというのに。

 すべてが悲しい。

 涙が湧いてくる。

 時間が戻ればいいのに。

 楽しかった昨日に戻りたい。

 ものを食べるときのメリコの笑顔をもう一度見たかった。

 可愛い声を聞きたかった。


「スズキー!」

 まだメリコが生きているかのように声が聞こえる。可愛い声が。

「スズキ、だいじょうぶ? あいつは? 倒した?」

 いやこれは本物の声だ。

 鈴木は声のほうへ頭を巡らした。

 光線銃を抜いたメリコが屋上へ登ってきたところだった。


「メリコちゃん! 無事だったの!?」

「うん。頭から落ちなかったから。カンパニースーツが衝撃から守ってくれた」

 鈴木はカンパニースーツの性能に舌を巻く。

 まさか八階の高さから落ちても無事だとは。


 メリコが無事だったことは素直に嬉しい。

 だが、そうすると自分が恐ろしい罪を犯してしまったことだけが残る。

 黒い女の死体は消えたりしない。


 鈴木は涙目で訴えた。

「ぼく、人を殺しちゃったよう。どうしよう……?」

 メリコは銃をホルスターに収め、なに食わぬ顔で言った。

「向こうが襲ってきたんだから、返り討ちにあっても文句いえないよ。アマガの手当しないと。いったいなにされたんだろ?」


 メリコは倒れたアマガに向かっていった。

 鈴木もついていく。

 アマガに近づくということは黒い女の死体にも近づく。


 そのとき、ぷしゅーっという空気の抜けるような音ともに、黒い女の顔がぱっくり開いた。

 中から何者かが叫びをあげて飛び出しくる。

「天誅ーっ!」

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