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3、ナナ、ルカのリア充に嫌がらせをする

よこたんと学校帰りに遊びました。

3、ナナ、ルカのリア充に嫌がらせをする





翌朝の食堂で食事を終え、ブリコ討伐に出かけようしていると、よこたんがやってきた。相変わらず青ローブ姿で可愛い顔をしている。通常運転のよこたんである。しかし、その姿とは裏腹に、朝一番の衝撃を伝えてきた!





「ナナたん、今日は魔法回復薬が足りないので、討伐は中止になります」





よこたんの言葉にわたしは絶句した。


少しずつ楽しくなってきたリアルファンタジーゲームができない・・・スマホゲームを今日はやりすぎだからやめなさい。と母親に止められた時のようなムカッとした気分になった。


それでも我慢できずに、リアルゲーム再開の解決方法を探ってみた。


魔法回復薬がないから中止! ならあれば、討伐はできるのだ。では、肝心の魔法回復薬! どこで手に入るのか!! そこが問題だ! よこたんに質問してみると答えは簡単だった。





「回復薬は、薬草と魔石を合わせて魔力を注いで作ります。昨日の分は聖女様が用意してくれてたものです」





なるほど、わたしはニヤリと悪い微笑みを浮かべた。薬草と魔石と聖女がいれば、いいのだ。聖女がいれば・・・。聖女と魔石は準備完了しているからあとは、薬草のみだ。





「薬草ってどこにあるの?」


「森にもありますが、城内の薬草園でも栽培しています」


「ナイス、よこたん、これでゲームを再開できる。わたしについてきて」





わたしはよこたんを連れて、ルカの部屋に向けて移動した。





我々はそこで衝撃の光景を目の当たりにした!


ルカの部屋の前で、ルカとクンユー王子が周囲を警戒するように見渡してから、部屋にこっそりと入っていく光景を目撃したのだ!


 信じられない光景だった。 え? ルカと王子がなんで? 後ろを振り返り、よこたんの顔を覗く。





「あ、やっぱり噂は本当だったのですね」


「噂?」





ここで、驚いて事態を待っていても何も始まらない。とりあえず、ドアまで歩いて、コンコンとノックすると、ルカのどきっとしたような気配が感じられた。





「はい、どちら様ですか? 今、ちょっと急いでいるので、あとにしてください」





という断りの声が聞こえてきた。今がチャンス! 無視して、強引に入る。





「ナナだけど、入るよ」





幸いなとに、部屋にカギは掛かっていなかった。ドアを開けると、部屋には慌てたルカとクンユー王子の姿があった。


わたしは、二人を交互に見渡した後。





「え、なんでここにクンユー皇子が?」





わざとらしくとボケてみる。


王子は苦笑を浮かべ、わたしを見つめてきた。わたしはその視線に耐えられず、視線を外し、後ろにいたよこたんを盾にして、よこたんの脇から二人を覗き見た。





わたしはルカに魔法回復薬を、作ってくれるようにお願いしてみた。


スケジュールで忙しいのはわかっているがリアルゲームの魅力には逆らえない。すぐにでも参戦したいので、強引に頼んでみた。





「ま、魔法回復薬ね。い、いいわよ、まだ予備があるからどうぞ」





そういうと、小さい袋に詰まった魔法回復薬を差し出してきた。それを受け取り、よこたんに手渡すと、よこたんは収納袋に閉まった。





「ナナ、これで全部、渡したよ。でも材料の魔石がないから明日の分は無理かな」





遠回しにこれ以上の製作を断るルカに対し、わたしはよこたんを見た。


よこたんもわたしを見て真意を察して頷いた。


それからよこたんは空間収納袋から昨日回収した魔石の一部を取り出してみた。


よこたんは可愛らしい無垢な笑顔で告げた。





「あと1000個以上あるよ」


「え、せ、千個って、え、なぜ?」





一瞬、ルカは困惑の声をあげた。





「ルカは、王子とリア充する時間はあるのに、魔法回復薬を作る時間はないのかな?」


「リア充って、それはちょっとね」





ルカは、そう言いながら王子をちらりと見て助けを求める。





「リア充とは?」





王子は?な表情を浮かべた。王子にわかるわけがない。異世界人なのだから、いや、日本人以外にはわからないだろう。


王子の助けが不発なのを見て、わたしはダメ押しをする。





「ダイーチに聞いてみようかな?」





わたしは、黒い笑みを浮かべた。


ルカには悪いがこれはどうしようもないのだ。リアルファンタジーゲームの魅力には逆らえない。


今日もレベル上げのために討伐がしたいのだ!


ゲームは1日サボったら元のテクニックに戻るのに3日はかかるという言葉がある。サボることはできないのだ!





ルカはもう一度、王子に助けを求めようと視線を送ったが、王子は降参とばかりに両手を肩の上の位置まで挙げて、顔を軽く左右に振った。


ルカはがっくりしたのか、頭をカクンとさせ、力を抜いたように肩を落とした。


すぐに顔を上げ、魔石を眺めると、顔を引きつかせながら苦笑で答えた。





「よこたん、こんなに魔石、す、すごいね。じゃあ、預かるね」


「ナナたんと頑張りましたから」





よこたんは細い腕を持ち上げて、力こぶを作るポーズをとる。ツインテールがすごく可愛らしい。





「はい、作りますとも、だからね、ダイーチ筆頭魔導士にはね、内緒ね」





それから魔石の受け取りが行われた。


よこたんが空間収納袋から魔石を出すのと同時に、ルカは自分の空間収納袋の中へと移していった。





その姿がカッコ良かったので、討伐に行く馬車の中で、よこたんに空間収納魔法のやり方を聞いた。馬車が目的地に着くまでの間に、なんとかわたしも覚えることができた。





「そんなに簡単にできるものではないのに・・・」





よこたんはちょっと不思議そうな感じで首をかしげていた。





魔法を覚えるのに関しては、学校の勉強よりも簡単にできたので、わたしとしては、すごく嬉しかった。魔法の才能があるのかも?


これからはよこたんにもっと魔法を教わろうと思った。





それからわたしたちは、魔物の森の討伐に取り掛かった。


「ファイア」


「ファイア」


魔物の森に叫び声が響き渡った。





そして、夕方には、かなりの数のブリコを退治し、レベルを満足するほど上げることができた。


討伐を終えて、城に戻る馬車の中でわたしは悩んでいた。


今朝は、討伐に必死だったために見逃していたが、改めて時間が経つと、ルカと王子の関係に思うものが湧き出てきた。


困った時のよこたんに聞いてみる





「よこたん、ルカと王子の件ってどうすればいいのかな?」


「そういえば、ななたんは、王子に見られて、ぼくの後ろに隠れましたが、二人の交際には反対ですか?」





わたしは両手のひらをよこたんの前にそっと出して小さく振った。





「そ、そんなことはないよ。二人はお似合いだと思うよ」





実際、イケメン王子とルカはお似合いだと感じていた。


ルカは中学生の頃から美人でモテキャラだったが、両親から中学生のうちは恋愛禁止令が出ていたので、特定の交際はなかった。


それでもよく告白はされていたが、ルカ自身も今はまだ早いと言って断っていた。


その中にはイケメン王子のような美形もいた。それが異世界にきてすぐに王子といい関係になっている。お金かな? ルカは昔からお金が大好きだったような気がしないこともないが・・・どうなのだろうか? そんなことを考えているとよこたんが心配そうに声をかけてきてくれた。





「あの時、王子さまの視線を避けてましたが、王子さまは苦手ですか?」





「お、王子が苦手というか、わたしの場合、同世代の人が苦手なのかな」


それからわたしはよこたんにその理由を話し始めた。


話は中学生に戻る。


自分で言うのもおかしな話ではあるが、中学入学当時のわたしは、色白で目鼻立ちがしっかりした美人な外観と、明るかった性格もプラスして、男子に人気があった。


クラスの男子の間では、人気NO1とか言われていた。実際、仲が良い男子たちの家に遊びに誘われたことも何度もあった。





そして、わたしの心を深くえぐるように傷つけたあの出来事は、中学2年生の6月の中間テスト明けに起こったのだった。


男子たちに混ざって、クラスNO1人気の原田君の家に、テレビゲームをしに行ったことが原因だったらしい。


わたしはそれまで異性をあまり気にしていなかった。だから、男子たちと一緒にスマブラなどの対戦ゲームで盛り上がったり、男子たちのグループともよく遊んでいた。


それを狙われてしまったのだ。


テスト明けに突然、陰口を囁かれるようになった。


「ビッチ!」


「男好き」


「遊び人」


最初はなんのことかわかなかったが、急に周囲の女子たちから避けられるようになり、そして、無視されるようになった。


そんな状態が、夏休みが明けても続き、だんだんとわたしの心は壊れていった。


先生にも相談したが、「あなたの勘違いなんじゃないの?」とか「この学校にはいじめはありません!」など逆にわたしが悪いように怒られ、しまいには、「なぜ、あなたは周りに合わせられないの、みんなに迷惑をかけるの!」


それは先生のいじめ容認発言だった。


さらに、わたしは教室で孤立し、陰口をいわれ、しまいには靴箱の靴の中にコウモリの死体まで入れられ、脅された。


あまりの出来事にわたしはぞっとしてその場で泣いてしまった。


そこに現れたのが、いじめグループのリーダー村中だった。


「コウモリが死んで悲しんでいるのね。おほほほ」


笑いながら嬉しそうに告げられた・・・わたしは怖くなって、もう動けなくなり、その場で卒倒した。


そこからの事態は、早かった。


わたしのいじめのことを知った父親が学校側と話し合い、学校側の言う「この学校にいじめはありません」というコメントに怒り、わたしに転校の意思を確認してから、小学校からの友人が多くいる隣の学区に転校させてくれたのだった。





しかし、それでもわたしにはいじめの後遺症が残り、同世代の男女が怖くなってしまったのだ。


昔から知っている顔見知り以外との会話がなかなか難しいのだ。


カウンセリングの先生によると、初めは動物の友達を作り、それから年上のお友達を作り、最後に同年代の友達を作るように言われた。





「ななたん、大変だったんだね」





わたしの話を聞き終えた後、よこたんはわたしの頭を優しくそっと撫でてくれた。


わたしはその時、自分が涙を流しているのに気が付いた。


顔を上げ、よこたんを見た。よこたんは、心配そうな目を向けながら微かに頷いた。





「大丈夫だよ、この世界では、ぼくが付いてるから! いつまでも一緒だよ」


「よ、よこたん!」





次の瞬間、わたしは、よこたんにしがみつき嗚咽をあげていた。わたしの頭をよこたんが優しく体全体で包み込むように抱きしめてくれた。


そのまま馬車は、ゆっくりと城へと向かって行った。


最近、お母さんの足の小指にひびが・・・

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