11、 ナナ、魔女になってルカを配達する
題名が変わりました。よろしくお願いします。
11、 ナナ、魔女になってルカを配達する
わたしは駕籠に乗ったルカを配達しながら進んで行く。左右にはよこたんとかのさんが飛んでいる。二人はほうきには乗らず、普通に両手を前に出して、スーパーマンのように飛んでいた。
大体、空を飛ぶときの態勢はこのスタイルが常識になっている。
空気抵抗を減らし、防御魔法の消費を少なくするには、どうしてもこの格好になってしまうのだ。スピードは時速100キロぐらいだろうか? 2時間もすると、アナーザワ町が見えてきた。
いったん町に降りて、休憩をとる予定である。さすがに、このスピードでの移動は魔力を消費する。よこたんの限界ギリギリの速度である。
町の広さは1キロメートル四方ぐらいだろうか? 町全体が、高さ10メートル程の石の城壁に囲まれている。
まさに城塞都市といったところだ。南の森に対する守りが主な目的の町である。
城壁の周りをさらに水堀が囲んでいて、二重の守りになっている。門は北側と東側に二つあった。
また、堀の外側には田畑と農家が広がっており、緊急時には、住民全員が城壁内に避難する仕様になっていた。
わたしたちは、町の東門付近に降り立った。スタンピードの発生警報がされていた影響で、南の森に続く東門の周辺は混雑はなかった。イータムロ村からの避難者も人口が少ないために、混雑がないのだろう。
一方、北門前は避難する人で行列ができていた。
ルカが門番に王国からの使者証明書を提示すると、すぐに中に通された。通された先は学校の校舎ぐらいの大きさの領主の館であった。
案内された先は、広さが教室ほどの来客用の部屋だった。
部屋の中央に豪華なテーブルセットがあり、わたしたちはここで、休憩をすることになっていた。
侍女たちがいそいそとテーブルに、料理を運び始めていた。
「みんな、お疲れ様です」
ルカがわたしたちに声を掛けてくれた。
「よこたん、大丈夫だった?」
「ボクは限界近かったです。これ以上のスピードアップはすみませんが、無理かと思います」
「わらわは、まだまだ余裕なのだわ」
「なな、わたしも駕篭の中で限界のスピードだったよ。これ以上、スピード上げたら、吐くわ」
「リア充は一度、吐いてもらいますかね」
わたしが黒い笑みを浮かべてルカを見ると、ルカは目を細めて、こちらを軽く睨んできた。
「なな、いい加減にしないと回復薬に毒入れるよ」
さすがにルカをこれ以上、揶揄うのは身の危険につながるので、ここまでにしよう。わたしはそう考え、話題を変える。
「ところで、ここにアーリンっていうダイーチの妹がいるんだよね」
「ななたん、ダイーチ様には妹はいません。正確には妹のように可愛がっている娘です」
よこたんが驚愕の事実をいきなり放り込んできたので、周囲が騒めいた。
「え、ルカ、知ってた?」
「わたしも知らなかった。てっきり妹だと」
「わらわも知らなかったわ」
カノさんは当然のようにぶんぶんと首を左右に振った。
「二人は本当は愛し合っているのです」
よこたんが放り込んできたものは、大爆発を起こした。周囲は一気にヒートアップする。年頃の女子なので当然である。
「え! よこたん、その話しもっと詳しく聞きたい!」
「クンユーから聞いてはいたけど、彼女がいない本当の理由はそれだったのね」
「わらわには、よくわからん」
よこたんはさらに話を進めようとした時、ドアを静かに開けて、ローブ姿の中年男性が現れた。
「その話の続きは、わしからしよう」
「カイン君」
よこたんが席を立ちあがって挨拶しようとするのを、片手を伸ばして止め、そのままの合図を送った。カイン伯爵自らが、よこたんの前まで歩き、丁寧に頭を下げて挨拶をした。
「校長先生、遠路はるばるお疲れ様です」
「カイン君もお出迎えありがとう」
実はよこたんは魔法学校の校長先生だったのだ。衝撃の事実ではあるが、今は急いでいるので、その部分には触れないでいる。簡単な挨拶の後、伯爵はゆっくりと移動し、テーブルの端にある席に座った。
「今は緊急事態、礼式は省き、挨拶させていただく。わしがこの町の領主カインだ」
「はじめましてルカです」
「おお、聖女様でしたか、わざわざご足労ありがとうございます」
それからわたしたちは順番に挨拶を交わした。よこたんは恩師で最初に挨拶は済ませてあるので、他のメンバーである。挨拶が一通り終わると、伯爵は先程の続きを話し始めた。
この街の領主カイン伯爵と妻のマーガレット、それにダイーチは幼馴染で、この町の出身だった。
王都にある魔法学校で3人は魔法を学びあった仲だった。魔法学校に行く理由は、南の魔物の森が近いこの城塞都市を守るためである。
伯爵は跡取りとして、ダイーチとマーガレットは魔法測定値が高く優秀だったからだ。
3人は10歳から魔法学校で学び、この国の成人である15歳で卒業した。その頃のマーガレットは、ダイーチに恋をしていた。学生時代のダイーチはモテモテで金髪なふさふさした髪と影のある笑顔が美しい少年だった。
伯爵と実はダイーチもマーガレットに恋心を抱いていた。二人は恋のライバル関係だったのだ。
卒業式の時、マーガレットはダイーチに思いを告げた。
しかし、ダイーチは生涯をかけて両親の仇である魔物討伐をすると、心に決めていると本心を語った。
そのため、誰とも結ばれるつもりはないとマーガレットに断る理由を話した。マーガレットは故郷に戻り、しばらく落ち込んでいた。
やがてアナーザワ町の魔法団に所属し、魔物討伐に貢献した。その時、同じようにカインも故郷の魔法団に所属し、マーガレットと共に討伐に励んでいた。その二人が恋愛の距離を縮めていくのは、自然の成り行きであった。そして、二人は結ばれた。
一方、ダイーチは努力に努力を重ね、王都の魔法師でトップまで上り詰めたのだった。
満足する結果を墓前に報告するため、ダイーチもようやく、アナーザワ町に帰省したのだ。それは卒業から10年ぶりの25歳での里帰りだった。
しかし、その時、事件が起こってしまった。
その頃、カインとマーガレットの間には、5歳になる娘アーリンがいた。
アーリンとマーガレットを乗せた馬車が、イータムロ村から帰ってくる途中で、ダンジョンから抜け出したホワイトベアに襲われたのだった。
普段ならありえない場所での魔物の出現に馬車の護衛は、ことごとく命を落としていった。
絶体絶命の危機に現れたのが、ダイーチだったのだ。
それはまさに偶然であった。ダイーチは両親の墓参りに寄ったイータムロ村からの帰りだったのだ。
ホワイトベアはかなりの強敵で、王都の最高魔術師であるダイーチでも苦戦する相手ではあった。それでも何とか追い払うことができた。
そして、馬車に乗っているアーリンとマーガレットに再会した。幼い頃のマーガレットの面影があるアーリンをダイーチが妹のように可愛がるのは当然なことだった。
アーリンの方は、自分たちの危機に颯爽と現れたダイーチに恋をした。初恋だった。
それから5年後の10歳の時に、アーリンは両親と同じように魔法学校に進学した。ただ、アーリンの目的はダイーチであった。ダイーチは魔法学校の講師も勤めていた。
学生時代の5年間をかけて、ダイーチにアタックするアーリンであったが、妹以上には見られなかった。
そして、卒業式に母と同じようにダイーチに思いを伝えたのだが・・・母と同じように玉砕してしまった。
そこまでカインが話したところで、再びドアが開かれた。入ってきたのは、赤い髪に赤い瞳の小柄な女の子だった。
「アーリン、今はお客様と話し中だ」
カイン伯爵は軽く注意するが、礼式を約すと言っていたので、それほど強い口調ではなかった。
「王都からのお客さまと聞いて来たのですが・・・」
わたしたちの方に目を送るが、そこにダイーチの姿がないのを確認するとため息をついて肩を落とした。
それでもよこたんと目があうとよこたんに迫るよう近づいた。
「校長先生、ダイーチ先生は、一緒ではないのですか?」
「ダイーチ先生は王都で今回の指揮をされているわ」
「そうですか・・・」
その言葉にアーリンはがっかりして項垂れた。その姿を見て、ルカがひらめいたとばかりに、いたずらっぽい笑顔を浮かべた。
「はじめまして、アーリン。わたしはルカと申します。先程、あなたのことをカイン伯爵様から聞かせてもらったわ」
「はじめまして、聖女様」
「一つ質問してもいいかしら」
「わたしでわかることならば」
「まだ、ダイーチのことが忘れられないですか?」
あまりにもストレートすぎる質問にアーリンは一瞬、固まったが、考えを巡らませたのか、すぐに小さく頷いた。
「会いたいですか?」
「ダイーチ先生が迷惑ではなければ」
アーリンは小声で答えた。その言葉を聞いて、ルカは紙とペンを侍女から借りて、素早く手紙を書いた。そして、その手紙をアーリンに手渡した。
「アーリン、緊急の用事です。この手紙をクンユー王子まで届けてもらえないですか?」
アーリンは一瞬、カイン伯爵の方に目を送った。
カイン伯爵は娘に向けて強く頷いた。
父の返事を確認すると、アーリンはルカから手紙を預かり、すぐに部屋を後にした。
その姿を見届けてからわたしはルカに質問を浴びせた。
「ルカ、結果はどうなるの?」
「この結末は王都に帰ってからのお楽しみ」
「では、ルカ様、ななたん、出発しましょう」
「わらわは待ちくたびれたぞ」
再びルカは駕籠に乗り、わたしたちは、アナーザワの町を後にした。
読んでいただきありがとうございました。明日はカラオケに行く予定です。一人カラオケです。




