初めての握手
「すまんな。ナツミは極度のオトコ嫌いなんじゃ。」
俺に頭を下げるロリ姉さんことセツナさん。
「いえいえ。でも、これなら尚更、俺がチームに加入するのは難しいですよ」
俺はショックを隠しながらもなんとか冷静に意見を返した。
「いや、ここいらでナツミも男嫌いを治さないと嫁の貰い手が‥「誰が年齢=彼氏いない歴の女なんですか?」
「だからこそなんじゃよ。ナツミ、お主、年下の彼氏が欲しいと言っていたのではなかったのか?」
そう言ってセツナさんはエールを自分のコップに注ぎ込む。
「た、確かに年下の彼氏が欲しいとは言ったけど、こんなゴブリンみたいのじゃなくてジャ二ーズ系の彼氏が欲しいんだけど」
ナツミさんが髪をかきあげながら少し面倒くさそうにそう答えた。
「いや、ジャニーズ系の可愛い顔の少年が車に轢かれて顔がグチャグチャになったと思えば可愛く見えんかのう?」
えーと‥セツナさんがフォロー?を入れてくれているが、これってフォローなの?
「え〜っ、正直キモかわいくもないし、全部が中途半端感があるわ。こんなならジャムのおじさんのほうがまだ萌えるんだけど。」
『僕の顔を食べて』の顔を焼いているおじさんにすら負けているというのか?
「もう、やめてあげた方がいいわよ。」
俺が凹んでいると、珍しく宮下さんが2人を諌めてくれた。
心が弱っている今、優しくされていると思わず惚れそうになるからあんまり優しくしないで欲しい。
「そうじゃな。まぁ、もう、メンバー登録を済ませたのじゃろ?なら、2人で決闘祭を迎えるよりマシだとおもうことじゃな。」
セツナさんは言い終えてエールをあおった。
この人が飲んでいると未成年飲酒感が半端ないな。まぁ、二十歳越えてるからいいんだろうけど。
「そ、そうね。せっかく来たのだし決勝には残りたいわよね。だから、血の涙を流したいくらい我慢して、このゴブリンの加入を認めるわ。セツナもどうしても会いた‥叶えたい願いがあるしね。」
そう言いながらナツミさんは右手に手袋をつけ始めた。
1枚、2枚、3枚、一枚足りな〜ぃ。ではなく、3枚手袋をつけた右手を俺に差し出す。
いやいやいや、そんなことまでして握手しなくてもいいんですよ。
むしろ、『そこまで我慢して握手をしているんだ』と思うと、握手を拒否されるより胸が痛いんだが。
そうは言っても拒否するわけにはいかず、渋々彼女の手を取った。
その後、彼女は手袋を脱ぎ捨てると、焼却処分した。
もしかして、汚物は消毒‥なのか?
そして翌日、今度はナツミさんと模擬決闘することになってしまった。
ナツミさんはショートソードくらいの長さの木刀を正眼に構えている。オーソドックスな戦い方のように見えるが結構スキがあるようにも見える。
強いのか弱いのかちょっと判断つかないな。
俺はコテねらいで軽く木刀を振ったが軽くかわされた。かと思うと、彼女の姿を見失った。
俺は咄嗟に前に飛ぶと、カツンという音が背後から聞こえた。その音を聞いた俺はそのまま体を捻って元いた場所へ飛んだ。
「まさか、読まれてた?でも、私のスキルは知らないはず‥キャーッ」
そして、ナツミさんに抱きついた。
そして、彼女の体の柔らかさを堪能しつつ2人で倒れこんでいる最中、後頭部に衝撃をうけて俺の意識は暗転した。




