初めての逆魔法少女
「橋本、ホントに良かったの?」
宮下さんが窺うような様子でたずねた。
「いや、その場の雰囲気に飲まれて思わずオッケーしちゃったんだよな。今からでも取り消せないかな?」
俺は決闘なんかしたくなかったので幼女にお願いした。
「ダメじゃ。もう仲間に伝令を送った後だから貴様が間も無く儂のチームメンバーとして登録されるじゃろう。脱退は出来ないのでな。貴様がでないと、儂らは2人で決闘祭を勝ち抜かねばならんのじゃ。ほら、こんなに可愛い娘っ子がそんな思いをするのは可哀想だとは思わんのか?」
しかし、クーリングオフ期間はもう過ぎてしまったらしい。それにしても、本当に23歳なのか?思わず頭をナデナデしたくなる可愛さだ。
とはいえ、別に契約を結んだ訳ではないし、馬鹿正直に彼女の言い分に従う必要はないだろう。
「さぁ、宮下さん。とりあえず飯だ。その後観光でもしようぜ。決闘祭も一度見てみたいし、チケットどこに売ってるか探しにいかない?」
「こら、貴様。無視するでない。」
幼女は無視されたのに腹が立ったのか、頰を膨らませて怒っていた。
「いや。タダ働きとかそれこそムシのいい話じゃないかな?『タダより安いものはない』って授業で習わなかった?」
「貴様は無性に腹のたつ言い回しを使うのじゃな。儂の方が年上という事を忘れたんじゃないかの?」
そう言って幼女は無い胸を張っていた。
「いや、そのビジュアルを見ているととても年上には」
そう。胸はぺったんこだし、ツインテールは宮下さんとかぶっているが、宮下さんよりはるかに幼い容姿をしていた。
「それはどういう意味じゃ?もしかしてそろそろヴァルハラに行きたくなったのなら儂が送ってやろうか?」
そう言って幼女が持っていた杖を構える。
「いや、幼女に冥府に送られるほど落ちぶれてはいないからな。とはいえ、流石にこんな見た目の君に手をあげたりできないんだけど」
「ああっ、なるほどそうなのじゃな?まぁ、心配することはない。一度模擬決闘をしてみるか?」
「だから、君みたいに幼い感じの娘に手を上げたり出来ないんだって。」
「まぁ、良い。ここは決闘場じゃからな、決闘してみればわかる。勝負始めじゃ」
そう言って幼女は杖を振り下ろす。
「ヤバッ、、ふぅっ、助かっ‥なんだよ?それ?」
何とか繰り出される杖をかわしたところで相手を見る。目の前にはナイスバディのお姉さんがいる。もしかして、変身なのか?
しかし、服は破れたりしていないし、髪の毛もツインテールからポニーテールに変わっている。まるで、魔法少女の変身のようだ。
「マジか?逆魔法少女状態で、戦う時は年をとるのか?」
「どう?お姉さんに惚れちゃダメだからね。」
感情を乗せない声色でそう言いながら投げキッスをする。
思わず赤面しそうになったが、なんとか耐えた。いや、少し赤くなってしまったのかもしれない。
だって、さっきまでの幼女スタイルと全然違うんだからな。出るとこ出てるが、足が長くスラッとしていて全体的にはややほっそりした印象を受けるし、まさに大人の女性だ。
「‥もしかして、ホントに惚れちゃった?お姉さんと火遊びしちゃう?」
そういって彼女はウィンクする。
「こら、そこの女狐。何してんのよ?大体、橋本も橋本よ。」
俺は宮下さんに胸ぐらをつかまれていた。
「あははっ、いや。大人の魅力が、、、」
「えっ‥と、どこ見ながら言ってるのよ?」
えっ?あれ?いつの間にか俺の目線は無意識に宮下さんの胸に注がれていた。
「いや、ちょっと‥ご、誤解だ。」
‥結局、宮下さんに言い訳は通じず、俺は両頬に紅葉を作るのだった。
「‥儂、置いてきぼりじゃな。」
元幼女のお姉さんの呟きは闘技場の誰に伝わることもなく、空気に溶けていった。




