初めてのロリババア(嘘)
「参りました。」
俺は木刀を手放し、両手を挙げる。
「ふぅ、弱すぎますよ。よくもその腕で決闘祭の時期にイズモンに来ましたよね。良かったら白札をお渡ししましょうか?」
ギルド職員さんは小太刀サイズの木刀をバトンのようにクルクルと回しながらそんなことを言う。もしかして、まだ本気出してなかったのだろうか?
「白札って?」
「ああっ、そうですね。『私は観光に来ただけですので、決闘は受け付けません。』という意味で提示するフダなのです。普通は女子供にお渡しするものなのですけどね。」
ギルド職員さんは苦笑いを浮かべてそう言う。
「はははっ、いや、俺はスキル依存だからいざとなればそこそこ戦えるんだけどな。」
まぁ、半分は負け惜しみだ。
俺も冒険者としては多少は経験を積んだと思っていたのだが、手も足も出なかったんだから。
「ふぅ〜ん、良いですよ。次はスキルを使っても。それに、私はこれでもマジックリフレクターと呼ばれていますので、魔法系のスキルと相性はいいですよ。」
ギルド職員さんが豊かな胸を張ってそんなことを言うのだ。
「あぁ、そっち系はなるべく出ないように祈っとこう。ちなみに俺が勝ったら1つゆうことを聞いてほしい。」
俺は決闘に勝った場合、条件に仲間がこの街に来てないか調べてもらうことにした。
「えっ、あっ、それが目的でさっきはワザとスキルを使わなかったのですか?弱すぎると思っていましたが、スキル特化タイプでしたか?こっ、こんな卑劣な人だなんて思わなかった。ちょっとゴブリンに似てカワイイ人…なんて思ってたのに。受けます。その代わりあなたが死んでも謝りませんよ。」
ギルド職員さんは豊かな胸を手で隠すような仕草をしながらそんなことを言う。
「いや、それが目的って、絶対かんちがいしてるでしょ?俺は単に…「変態の言うことは聞こえません。さぁ、また闘技場があいたからとっとと行きますよ。遺書とか書かなくて大丈夫でしたか?とりあえず、後でしらばっくれないように契約書を作りましょう。」
俺の弁解を無視して職員さんがそんなことを言うので、もしかしたら勝ったらそういうお願いしても聞いてくれそうだ。
まぁ、冒険者ギルドを、出禁になりそうでとてもお願いできないのだが。
契約書の作成が終わった後、俺達は移動して職員さんと向き合う。
「さぁ、始めますよ。どこからでもかかってきてください。」
そう言う彼女は先程と同じく小太刀の二刀を構えている。時折バトンのように小太刀を回すのは彼女の癖なのか?
まぁ、考えている暇はないか。先程のように瞬殺されるのはごめんなので俺は高らかに叫んだ。
「ラックゾーン、ダーツ召喚」
その時、世界は時を止めた。
「あっ、シンヤ君だ?久しぶりぃなのです」
女神ルーが可愛い笑顔で俺に微笑みかける。
なんだろう、この幼い感じのルーに癒されてしまう俺が居る。きっと最近、ツンデレっ娘と一緒にいるせいで心が荒んできているのかもしれない。
大体、デレないツンデレって既にツンデレじゃない気がするのだが。
「あっ、久しぶり、元気にしてたかい?ところで、リヴとアリアはどうしてる?」
「2人とも相変わらずなのです。それよりもダーツするのです?」
そう言うと、ルーはダーツ部屋に案内してくれた。部屋の中央にダーツの的があるシンプルな部屋だ。
的をよく見るとピクリと動いたのがわかった。
間違いない、例の動く的だ。
これでステータス100倍確定ということか。
楽勝だな。
俺は肩の力を抜いて矢を放つ。
しっ、しまったぁ〜。
矢は放物線を描いているが、的よりかなり高い軌道だ。的が大ジャンプしてくれない限り的に当たることはない。そして、ジャンプすると流石にルーにバレてしまう。
仕方がないか?
「あっ、後ろに宇宙人の集団が?」
俺は明後日の方向を指差してそんなことを言うと、つられてルーがそちらに向いてしまう。
「う、宇宙人の集団なんてどこにもいないのです。シンヤ君は嘘つきさんなのです。」
ルーは頰を膨らませて拗ねていたが、俺は大満足だった。
そう、アイツならやってくれると思っていた。
的、お前はオトコだ。
まぁ、的に性別があるのかは知らないけど。
「あっ、的のど真ん中に当たってるのです。さすが幸運の女神の私のお陰なのです。」
そう言って、ない胸を張るルーはとても微笑ましかった。
的の奴はきっとこの笑顔を守る為にこれからもダーツの度に動いてくれることだろう。
なんて俺に都合のいいwin-winな関係なんだ。
「さすが、ルー様。惚れそうです。今度のダーツの時も来ていただけると嬉しいです。」
俺はとりあえず褒めてみた。
まぁ、褒めるのはタダで出来るしな。
「ノンノン、ダメなのです。ルーはみんなのもなので、シンヤ君が独り占めは良くないのです。まったくぅ、シンヤ君は欲張り屋さんです。まぁ、どうしてもと言うなら考えてあげなくても…」
ルーが長々と話している途中で時が動き出した。
ギルド職員さんは変わらず隙のない構えをしているが、俺は一足飛びに間合いを詰めて無造作に上段から木刀を振るった。
しかし、なんとか反応した職員さんは右手の小太刀で止めにかかるが、俺に押し込まれていく。たまらず左の小太刀も合わせて踏ん張りにかかった所で、俺は木刀を離して相手の懐に潜り込んだ。
そのまま、腹に右拳の一撃を見舞う。
そう。よく漫画とかで見る、腹に一撃で気絶させるやつだ。
しまった。
身長差を考えておらず、少し狙いが上にズレてしまった。鳩尾に拳が突き刺さる。
そのまま彼女は、まるで重力に耐えきれなかったかのように崩れ落ちた。
そして、ヴグゥとかなんとか乙女にあるまじき、うめき声をあげて苦しそうにしている。
近くにいた冒険者が控え室に連れて行き、看護すること一時間。やっと、職員さんは起き上がれるようになった。
「な、なんてことするんですか?スキルを使うって言ってませんでしたか?まったく魔力の波動が感じられなかったんですけど。」
「魔力の波動ってなんだ?」
ネット環境があれば『魔力の波動とは』って検索するのだが、この世界では人に聞くしかないからな。
「普通の人は見えませんが、魔眼スキル持ちなら相手の魔力の揺れというか動きが見れるんです。スキルを使っているときはその揺れが顕著なんですよ。あなたからは普段は魔力が見えませんし、波動を感じられたのはスキルを使った一瞬だけでした。その後は明らかに肉体強化のスキルか魔法を使った筈なのに全く魔力すら見えませんでした。もしかして、スキル依存は嘘で、元から近接戦闘が得意なのに、私を嵌めるためにさっきの決闘では手加減してたんですか?しかし、契約がありますから。あなたが望めば私を性奴隷にすることも…ケダモノ。」
ギルド職員さんはそう言って、自らをかき抱くような仕草をする。
「見損なったわ、橋本。橋本は全然モテないけど、女の子をそんな風に扱うことは絶対しないと思ってたのに。」
なぜか宮下さんに平手打ちを食らった後、宮下はそんなことを言うのだ。
2人とも、頼むから人の話を聞いてくれるかな?
「ちょっとそこの2人、この子の話も?聞いてあげてくれんかの?」
すると、如何にも魔法使い然とした格好をした幼女が俺を庇ってくれた。
「あっ、ありがとう。」
だから、素直にお礼を言ったが、そうではなかったらしい。
「いやっ、そんな曇りのない目で感謝されてもこまるのだが。下心ありありなのでな。」
幼女はそう言って困ったように頰をかく。
「あの、まさか、俺の身体目当てなんですか?」
俺は自らをかき抱くような仕草をする。
さすがに幼女は守備範囲外なのだが。
「ふふふんっ、貴様は面白いやつじゃな。どうじゃ決闘せぬか?」
幼女は偉そうに腕を組んで俺を挑発してくるが
「しない。っていうか、ここの住人はやたら決闘したがるよな。」
俺は呆れたように呟いた。
「あぁっ、違うのじゃ。儂と決闘するのではないぞ。『決闘祭に一緒に出ぬか?』と勧誘しておるのじゃ」
「えっ、、お嬢ちゃんも決闘祭ってのにでるのか?大丈夫?」
彼女の華奢な体躯を見ているととても決闘できるようには見えない。
「お嬢ちゃんではないのだぞ。お姉さんなのじゃ。これでも23歳だからな」
そう言って胸をはる彼女はどう見ても10歳前後に見えるのだが。
というか、話し方から言ってロリババアかと思ったんだが、違うのか?
何もかもが中途半端なやつだな。
しかし、そんな幼女に丸め込まれて決闘祭に、でることになってしまった。




