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初めての転校生



それからは大変だった。

勇者隊の追っ手から逃げ続けて数日。

イズモンに到着した。



「ものすごい人ね。お祭りでもあるのかしら?」

宮下さんは初めてきた渋谷のスクランブル交差点を見た地方出身者みたいなことを言っていたが、飾りつけされていたり、屋台がひしめき合っている様子をみると、本当になにか祭りがあるような雰囲気だ。


「とにかく、はぐれないように手をつなごう。別に邪な企みがあるわけじゃないからな。皆んなとはぐれて、宮下さんともはぐれてしまったら、俺はもうどうしていいかわからなくなるし」



「あっ、これが橋本のツンデレなのね。初めて見たわ。」

宮下さんはニヤリと憎たらしくも可愛い笑みを浮かべてそんな事を言う。


「いや、俺にツンデレ属性はねぇよ。ところで、これからどうする?」


「まぁ、順当に言うと仲間を探すしかないんじゃないかしら?」

俺も彼女の意見に異論はないので、とりあえずここの冒険者ギルドに行ってみることにした。


ひときわ馬鹿でかいたてものに剣がバッテンの形で交わったような看板。

冒険者ギルドだ。



まだ30メートルは先にあるが、、、今までで大きな建物な為、妙に威圧感がある。


その時、誰かとぶつかった。


そしてその誰かは尻餅をついたような体制で倒れてしまった。しかし、不思議なことにその女の口には食パンがくわえられている。


「いった〜い、どこみてんのよ?今日は転校初日だっていうのに最悪だわ」

そういう少女の服装はまるで現代の学校のような制服姿だ。

これで俺が学校に行くと、俺のクラスに転校生が転入してくるって展開が始まりそうだ。

しかし、話は予想外の方向へ転がって行く。

というか転がされていく。


「最悪だわ‥だから、決闘してよ。」

‥一体何を言っているのか頭が理解してくれなかった。もちろん、どこが『だから』なのか考えても結論は出ない。


だから


「ことわる」

そう言って彼女を立たせることもなく、先を急ぐ。


しかし、露店で焼き菓子を買っていた老人が小銭をぶちまけてしまったので思わず立ち止まって一緒に小銭を拾ってあげることにした。


すると、先ほどの少女が俺に駆け寄り

「決闘してよ」

とまた言ってくる。


仕方なく無視し続けて、そのまま小銭を拾いきり老人に手渡した。



老人は目の縁にしわをいっぱい溜めて俺に笑顔でお礼を言った。そして、気持ちよくお別れする筈だったのだ。彼があんな事を言いださなければ。


「おぅ、本当にありがとう、坊や達。本当に今時珍しい感心な若者じゃな。どうじゃ、決闘せぬか?」


「ろ、老人、何をいってるんですか?決闘はしませんよ。」


「いやいや、一回くらいよかろうて。なんならそこのお嬢さんと二人掛かりでいいぞ。どうじゃ?」


「すみません、遠慮しときます。」

そう言って俺達はダッシュして逃げた。


はぁはぁはぁ、この街は頭のおかしい人が多いぞ。


なんとかたどり着いて、ギルドの受付に並ぶ。


「あ、冒険者殺しの討伐等、経験が浅いながらも将来有望な冒険者さんなんですね。」

彼女はデータベースか何かを呼び出したのか?そんな事を言う。しかし、それで終わらないのがこの街のいい…悪いところだ。


「どうです?私と決闘しません?」

なんて彼女までが言うのだ。



「ぞ、なんで、みんな決闘したがるんだよ?俺は決闘なんてしたくないんだからな。」

俺が思わずキレると、冷静な顔でギルド職員さんは言うのだ。


「なに言ってるんですか?ここは『決闘の街』イズモンですよ。あなた達は何のためにここにきたんですか?」


その言葉を聞いた時、俺はイズモンにきてしまった事を深く後悔するのだった。


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