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初めての信頼

すみません、6000字超えたので半分に分けました。


「大丈夫?イオリちゃん。」

私はイオリちゃんを背におぶって歩いている。


イオリちゃんは光魔法の適正は在るから防護魔法は使えたんだけど、パーティメンバー全員を一瞬で完全に護るのはフツーは出来ない。出来るのがさすがイオリちゃんってとこなんだよね。


でも、今回はさすがに無理がたたったのか、彼女はフラフラで立っていることさえ出来ない状態だった。

だから、私がおぶるとすぐに気を失ってしまった。


こんなところに留まっていても危ないだけ。先に進むしかないんだよね。

でも、ふと我に返る。今はアヤもシンヤ君も居ないんだった

それを実感すると怖くて一歩も前に進めなくなった。


‥そう、私はただの臆病者なんだ、、、

元々、人生に波風を立てたくないと思って静かに笑っているだけだった私がこの世界に来た。このままだと、色んな物に流されて最悪の結果を迎えてしまうとなんとなく感じたし、側には信頼できるアヤも居たからとにかく頑張った。

結果、異世界デビューとか言われたけど確実にレン派の中からコトハ派も数人出てきた。


しかしその結果レンの不興を買ったのかアヤとも引き離され、アヤが戻ってくるまでは散々だったけどね。


シンヤ君は私を参謀タイプとか言ったけど、そんなことはない。シンヤ君やアヤが前や横にいてくれるからこそなんとか冷静でいられただけ。


そう、私が信頼できる人間はあの2人だけで、それは前の世界も今でも変わらない。

前の世界で2人を信頼できるようになったエピソードは今は置いておくけど、それは真実なんだよね。


家族だって信用できなかった。

私をあんな奴に嫁がせようとしたぐらいだから、私よりお金が好きだったんだと思う。




ほんとうは、こんな死と隣り合わせの世界で生きていくだけで気が狂いそう。

このまま3人でのんびり暮らせたりしたらいいんだけどね。


どうせ、シンヤ君は誰かに片想いしてる。だから、もしアヤに恋心が目覚めても私たちの関係は変わらないと思う。私もシンヤ君のことは気になるけど、、私はたぶん本当の意味で恋したことは生まれてから一度もないんだと思うんだよね。


シンヤ君とパーティメンバーの誰かがくっついたりしたら話はややこしくなりそうなんだけど、彼が片想い中だから暫くはなさそうだしね。


あれ?なんで、シンヤ君が片想いしてるってわかるのって?


シンヤ君は時折、もう動かないスマホの画面を見つめている。私が初めて見る愛おしそうな表情でね。


もしかしたら、片想いではなく前の世界で恋人だった人との思い出が詰まっているのかもしれないけど、どうせ二度と会えないし片想いと何も変わらないよ。


そして、相手は気になるところだよね。

ズーッと引きこもってた筈だし。あれから何度かアヤと一緒に家に様子を見に行ったんだけど、その度妹さんに追い返されたし、中々家族以外と会える環境になかった筈だけど、、、どこで知り合ったのかな?


えっ?

ウソ?

もしかして、、そういうことなの?


今までの事実をふまえて熟慮すると、結論が見えてしまった。


あっ、今はそんなこと考えてる場合じゃないのに、、、余りの恐怖に現実逃避してたみたい。



不意に、ドゴッ、、、という激しい音がしたので振り返る。すると、バフォメットに似た化物がそこに立っていた。

崩れた天井をもろに浴びたくせにかすり傷一つ付いているようには見えない。


、、、現実逃避なんてしている場合じゃなかった、、、それに、恐怖でホントにアタマが回らない。



どうしよう?

ガルムを召喚する?

魔力も無限じゃないし、温存しておくべきかな?


‥アヤ、シンヤ君。どうしたらいいかな?

考えが纏まらないよ。


わからないよ、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて。


私が壊れかけている間に敵は目の前にいて口を開いた。


「おにいしっとぅと?知っとぅよね?知らんと?死ぬと、死にとぅと?」

矢継ぎ早の質問に狂気を感じて後ずさる。


「おにいってなんなの?答えたら見逃してくれる?」

勇気を振り絞って質問すると謎の紙を見せられた。紙には禍々しい絵が書いてある。


「なにこれ?」

私は考えなくそうつぶやいてしまった。


すると身体が急に重くなり、立っていられなくなった。

しまった、、、ウソでも知ってるフリをするんだった、、



私はそのま仰向けに倒れてしまう。

そして、化物は持っていた凶器を振り上げた。


「シンヤ君、助けて‥」

そう呟いたのを最期にそのまま私の意識は途絶えた。




「宮下さん、俺、好き‥‥かもしれない人が居るんだ。だからごめんなさい?」

俺は宮下さんに頭を下げて謝罪する。


「‥‥なんで疑問系なのかしら?それに、勘違いしないで欲しいのだけど当時のと〜っても幼くて判断能力の無い時代の私に好かれていたからって今でも好かれてるなんて勘違いはやめた方がいいわ。自意識過剰と思われるわよ。」

宮下さんはそっぽを向いて俺にそう弁明した。


「‥‥そうなんだ?だよな。変な勘違いしてごめん」

チックショー、恥かいたじゃないか。


そうだよな。俺に唯一告白してくれた人だけど、以前の告白はからかいじゃなかったってことだな?

それが分かっただけでもちょっとテンションが上がった。


しっかし、今の状態は気まずい、、、なにか話さなきゃ。とはいえ、彼女と会話のキャッチボールなんて出来そうにない。


「そういえばルイは何処にいるの?」

特に会話のネタもなかったので気になることを聞いた。なにしろ、俺と宮下さん単体なら戦闘能力が低いからな。

敵にあうとthe endだ。



「‥は、それって、、まっ‥‥まさか‥‥二人っきりだからって、私に‥‥‥い、イヤラシイことしようとしてるわね?だ、ダメだからね、そんなことしたら大声だすわよ。」

‥‥なぜ、、、こうなるんだ?


宮下さん目線では昔片想いしてた人に、数年後襲われそうになってるってこと?

結構な修羅場だよな?

まぁ、完全に冤罪だけど、、、


それでも僕はやってない的な、、、


「いや、俺は無実だ。取り敢えず看護士呼んでくれ」

あれ?介護士だったっけ?


「‥‥それをいうなら弁護士じゃないかしら?あの1分に1回は『異議アリ』って叫ぶ職業のことでしょ?」

いや、ヒドイ誤解だ。世の中の弁護士さんごめんなさい。この子も根は悪くないと思うんだ、赦してあげて。



「偏見に満ち満ちて、悪意すら感じるんだけど。宮下さん思い込み激しいとか言われない?」

スルーしてもいいけど、この娘、放っておくとなにを言い出すかわからないし、一応訂正しておく。


「えっ?産まれてから一度たりとも言われたことはないわよ。」

彼女は自信に溢れた表情で答えた。

その自信はどこから湧いてくるんだろうな?


「そっかぁ、覚えてないのか?きっと記憶喪失なんだよな?君の名前は宮下レナ。職業は確かネコミミメイドだったはずだぞ。なんでいつもの制服着てないんだ?」

うん、会話内容はともかく、宮下さんとこんなに会話できるとは俺のトーク力も中々だな。

そのうちひな壇芸人にクラスチェンジできるんじゃないか?


「‥‥看護士というか、医者にアタマ見てもらったらどうかしら?」

いや、会話にはなってないみたいだった



「そっか?宮下さん、お医者さんゴッコがしたかったの?」

俺がヤケクソでからかってそういうと、、、


「もう手遅れかもしれないからもう一度言うわね。医者にアタマ見てもらったらどうかしら?あっ、人類初の脳移植とかいいわね?」

宮下さんは凍りつくような瞳をしてそう答えた。


「おっ?いたいた。よりによってコイツか?」

俺が宮下さんの瞳に凍らされている間に背後に人が迫っていた。聞き慣れた声、、、帝国の剣トモヤだ。

どうする?


振り返らずに叫ぶ。

「ラックゾーン、ダーツ召喚」

そして、世界は時を止めた。


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