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初めての文通

「冒険者の皆様及びギルド職員にも準備がありますからね。出発は明後日の朝からですよ。」

営業スマイルを浮かべて、青いショートボブの髪の糸目の職員は答えた。


うん、糸目だからホントに笑ってくれたのかもわからないんだけどね。


「えっ?明後日からなんですか?」

俺はてっきり今日にも出発するかと思ってたよ。

逃げられたらどうするんだろうね?

ともあれ、暇になったよ。


今日明日はどうしよ?


まぁ、行くとこもないしまたダンジョンに入る事にした。


このパーティもバランス悪いように感じるんだよな。俺が行くっていうと誰も反対しないんだよ。


よく言えば協調性があるけど、悪く言えば主体性がないんだよな。

唯一自己主張してくれるコトハさんも、今日は少し様子がおかしいしね。


なにしろ、コトハさんが目を合わせてくれない。

俺を騙してた上に逆ギレして気マズイんだろうか?


そして、例の狙撃犯をかなり警戒をしていたにもかかわらず、今回は特に変わった事もなく地下5階までたどり着いてしまった。


そして、大きな広間のような場所に出た。

奥には二階建ての一軒家のようなものが建っている。冒険者用の休憩所かなにかかもしれないね。


そして、一番の問題なのが、広間の至る所にトロルが居るんだよね、サイスの城に居た数より全然多い。

10体以上は確実に居るんだよ。


ちょっとこれはマズイかもしれない。


「イオリ、魔法頼む。そして、イオリが魔法を撃ったらすぐに退却するよ。また、挟み撃ちにされたらさすがにキツイしね」

俺がそう言うと


「アネモス」

イオリがノータイムで魔法を使った。

すると、そこかしこで大量の小型竜巻きが現れてトロルを巻き込んでいく。

まるで嵐だよ。しかし、俺たちのいる所には一つも竜巻はない。つまり、完全にイオリのコントロール下にあるんだろうね?


俺がイオリの立場なら《魔導士》とか《賢者》とか自称するのは、、、、さすがに痛々しいから仲間にその二つ名を広めてもらうんだけどね。。


そして嵐がおさまると立っているものは、、危ないっ、、助かったぁ。


目の前には炎の剣を持ったイオリが居る。


うん、何を言ってるかわからないね。

一から順を追って説明しようかな?



嵐がおさまって視界が晴れてくると、トロルは全滅していたのだが、、、目に入ったのは俺めがけて一直線に飛んでくる紙飛行機だった。


恐らく前に俺やアヤを狙撃してきたものだろう。


当たればタダでは済まないだろうね。

しかし、俺は避ける暇がなかった。

俺が死を覚悟したその時、イオリがどこからか炎の剣を出して紙飛行機を真っ二つにした。


うん、こんな流れだね。


「イオリ、ありがとう。というか、イオリ、そんなのも使えたの?」

最早なんでもありだな、イオリは。


イオリと凛を手中にしている俺は天下とかサクッとれそうな気がするよ。


「追撃、、、は無しなのね。もしかしたら、狙撃しか攻撃手段がないのかしら?」

コトハさんの呟きを聞いて俺は閃いた。


これだ!


「狙撃犯〜、取引がある。俺の実力はしっているかどうかわからないが、俺とゲームをしないか〜?」

俺は叫んだ、しかし、返事がない、、ただのしかばねの、、、、あれ?紙飛行機が飛んできた。


丁寧に紙飛行機を開くと

『と、と、取引ってなんだ?も、ものすごく気になるんだが、はやくおしえるんだなぁ』

と書いてあった。


いやいや、どっかの美少女ヒロイン凛みたいに面と向かったら話せないパターンなの?


「俺と一対一で決闘しろ。もし、お前が勝ったら仲間の魔法使いの奴隷契約の主人を俺からお前に変えてやる。そして、俺が勝ったら、、、」

俺は口をモゴモゴさせて何か話したようにみせかけて相手の反応を待った。


しかし、返事がない。ただの‥‥失敗か?

俺がそう思った頃、また紙飛行機が飛んできた。あくまでも話さないつもりか?


『つ、つ、続きが、き、き、気になるんだな。は、は、早く言うんだな。』

よしっ、かかった。


でも、一流の釣り師は獲物がしっかりエサに食いつくまで合わせたりしないんだよ。


「だからさぁ、俺が勝ったら、、、、」

俺はまた口をモゴモゴさせて何か話したように見せかける。


‥‥やりすぎたか?

今度こそ返事がないんだよ。


それより、イオリが不安なのか俺の服をギューッと握っている。

そういえば仲間には何も説明していないんだけど大丈夫かな?


そんなことを考えているとようやく相手から紙飛行機が飛んできたので開くと

『ぼ、ぼ、僕がわるかったんだな。

も、も、もう一度大きな声で話して欲しいんだな』

と書いてあったので、ここが潮時だと思い、勝負をかけることにした。


「俺が勝ったらブルーラットの肝臓の粉が欲しいんだ。アレがあればイロイロできるからな。」

俺がそう言うと、またすぐに紙飛行機が飛んできた。


『ぶ、ぶ、ブルーラットの肝臓の粉の価値をわかってるんだな。そ、そ、それで決闘のルールを言うんだな。』


「俺は近接戦闘タイプだから遠距離タイプのあなたはそこのちょっと簡易砦みたいになっているところから始めるってどうだ?俺は逆側のあそこの端からはじめるけどどう?」

ここは大広間みたいなものなんだけど、俺は入口近くから始める。


そして、出口近くには二階建ての一軒家のような建物がある。


入り口から建物(砦)までは200メートル位の距離がある。


そして、平らな屋上の上に登れば、俺を狙撃しやすい位置から俺を狙うことが出来る。


入口の扉は押して開くタイプだから建物に入って何かで扉を押さえておけば暫く時間が稼げるし圧倒的に相手に有利な勝負だ。


受けてくれるだろ?


また飛んできた紙飛行機を祈る気持ちで開けながら、書いてある文章を見る。


『い、い、いいんだな?い、い、いまから取り消すって言っても受けつけないんだな。』

よしっ、かかった。


いよいよ、決闘が始まる。

その前に特訓の時間を貰うことにした。

アヤが天井に登り、俺を上から狙撃する。


アヤは砦の前から始めて、俺が扉から50メートル切ったあたりで、アヤが屋上に辿りついた。そこから素早く《ターゲットオン》する。


「うわぁ」

出力を抑えてくれた筈なのにも関わらず、光弾を剣の腹で受けた俺は吹っ飛ばされたよ。


それから、俺はチェンジオブペースや、サイドステップを使って何とか光弾を避けながら砦の前に辿り着いた。

しかし、そこで光弾の直撃を受けて俺は倒れてしまった。


「降参だ。アヤ、追撃は‥ウッ、、、」

ちょっと、降参するのが遅くなったのか、

追撃の光弾を頭に受けた俺は意識を手放してしまった。


ん?

あれ?

俺何してた?

何か柔らかい枕に寝かされているようだ。


「あっ?起きたん?ごめんなぁ」

大きな胸越しに顔が見える。あっ、前にもあったなこの景色。


ということは、膝枕中なのかな?

鼻の下を伸ばして膝枕を堪能したいけど、

この先の展開は前にも経験している。


まるでタイムリープだね。


俺は体を起こすと、周りを見渡した。


案の定、俺を心配そうに見つめているイオリ。俺を心配そうに見つめているエリシス。俺のことを冷ややかに見つめるコトハさんが居た。


あれ?コトハさん?

もしかして、コトハさんだけ俺の下心に気付いてたの?


「あっ、大事なくて良かったね。私は心配なんてしてなかったけど、イオリもアヤもエリシスも本当に心配してたんだからね。

それで、どうする?私はもう勝負なんてすっぽかしていいと思うけど。」

コトハさんは俺と目を合わせずにそう言った。まだ、逆ギレしてるの?


でも、声色は心配したようにも聞こえるし、オンナゴコロは複雑過ぎて俺にはよくわからない、、、、


「もちろん、やるよ。10回勝負したら9回は勝てる勝負なんだからな。」

俺はここで引く選択肢はない。

イオリが俺の右手の服の裾をギュッと握っている。彼女は少し目尻を下げて不安そうな顔で俺を見ている。


「イオリ、そんなに心配しなくても、危なくないからな。すぐに終わらせてなんかうまいものでも食べに行こう。」

俺はイオリの頭をなでてそう言いって、夜はビーフシチューを食べることに決めた。異論は認めない。


そして、俺は奴との勝負に向かうことにした。


大広間の入り口付近で仲間と俺は居る。

一方、奴、レイはダンジョンの奥から砦の扉の前までようやく出てきた。


そこまで視力がいいわけではないのでパッと見の印象だけど、小柄で、髪はややショート気味か?あまり強そうには見えない。


俺は頭の上で手を一定のリズムで叩き始めた。表現が分かりにくいかもしれないかな。


陸上の走り幅跳びとかでよくやってるやつだよ。そして、それに合わせてコトハさんとアヤが手拍子をしてくれた。そして、それに合わせてイオリとエリシスも手拍子をしてくれたので俺のテンションがMAXになった。


「よし、じゃあ、スタートだ」

そのテンションそのままに俺がそう言って、砦に向かってダッシュした。


レイは、早速扉を開けて中に入っていった。

俺はとにかくダッシュしていた。

ここのダッシュでプレッシャーをかけるのがこの作戦の肝だからね。


そして、あっさり、砦の扉まで着いた。

まだ、レイは屋上には辿り着いていないようで、俺は1回も攻撃を受けていない。


扉を開けようとしたが、何かを扉の前に置いているのか、簡単に開きそうにない。


どうするか?


考えるのも面倒くさいので2.3メートル下がって一気に扉に向かって体当たりする。


意外と簡単に開いた。扉の前に机とか置いてただけのようだ。まぁ、こんなとこで時間をかけたくなかったんだろうね。俺は勢い余って倒れてしまったけど。


すぐに立ち上がると目の前に二階に上がる階段があったのて慎重に登った。


階段を上がるとフロアの奥の方に屋上に続く階段が見える。


そして、その手前には網に吊られてもがいているレイがいた。


「うわぁ?こんなにあっさりワナにかかるなんてなぁ?レイってバカァ?」

レイが反撃できない体勢なのを見て俺はレイを思いっきりディスる。


もちろん、俺とアヤの特訓を目くらましにして、他のメンバーにワナを作ってもらってたんだよ。


「あはは、しかし、ほんとにこんな子供でもかからないワナにかかるなんて、ほんとにどうやったらそんなことできるか教えてくれない?」

俺はニヤニヤしながら更にレイをディスってやった。

レイは悔しいからか網の中でウゥ〜、ウゥ〜、と唸りながらバタバタもがいていた。


やっぱり喋らないんだな。


「あはは、正論過ぎて反論できないの?

ほんとにマヌケな姿だね。生きてて恥ずかしくな‥あっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

尚もレイをディスりながらレイに近づいていた俺はレイと同種のワナにかかり、マヌケにも網で吊られる羽目になってしまった。


あれ?ワナは一つじゃなかったの?



つづく

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