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初めてのシンヤ教団

「‥‥ということで、シンヤ様は勇者隊のエースに圧勝したけど、その時のシンヤ様はとても可愛かったと思うの」

まだイオリの俺自慢は続いていたんだけど、そこは《カッコよかった》の間違いじゃないの?


1時間後、

「魔王の配下からみんなを逃す為にシンヤ様はこう言ったと思うの《手柄を一人占めにしてしまって悪いな。後で報奨金で一杯ずつなら奢ってやるよ。》って」

オ〜ノォ〜、無自覚に人の黒歴史を掘り返すなよぉ〜、やめてくれぇ。


更に1時間後、

「私が金貨二枚以上する杖を壊してしまった時も優しく、、、」

って何時まで続けるんだよ?これ?


「はいはい、イオリちゃん、また後で聞いたげるからまずはこの子達を地上まで送り届けてあげようね?」

コトハさんがなんとか話を切ってくれたよ。


そして、彼らを放って置くわけにはいけないのでしょうがなく来た道を戻る事にした。


しかし、さきほどと違い《森の子達》のメンバーは俺を尊敬の眼差しで見ていた。


イオリ、もしかしてさっきのはシンヤ教の信者獲得の為の布教活動だったの?


「ところでケイタお兄さんに聞きたい事があるんだけど聞いていい?」

リーダーの少年、ラグが俺に質問する。


「なんだ、なんでも聞いて構わないぞ」

俺はウェルカムな態度で両手を広げて少年の次の言葉を促したよ。



それが間違いだったと気付かずに、、、



「お兄さんの恋人はこの中の誰なの?」

ラグは無邪気に爆弾を投下した。


「えっ?」

なに言っちゃってんの?

女の子複数人に男1人のパーティにその質問は禁句だろ?


例えば、誰か特定の人の名前を言ったとして他の女の子のリアクションが怖いし、言われた本人にゴキブリでも見る目で見られる、若しくは急に敬語を遣われてしまうなんてことになったら死にたくなるし、パーティ崩壊だよ。


どうしてくれんの?


でも、ここで凛の名前をだすのもやっぱりマズイだろう。まだ、誰にも話してないんだし、ここは無難に行くしかないな。


「いやぁ。お兄さんモテナイので、パーティのメンバーもそういう目では俺を見てないと思うぞ、皆んなそれぞれの魅力があっていい娘だとは思うけどね。」

ふぅ〜、どんだけ気を使って話さないといけないんだよ。


しかし、これで危機は去った。

悪は滅びて俺は幸せに暮らしましたとさ‥‥‥とはならなかったよ。


「じゃあ、私、立候補しよっかな?」

そう言って魔法使いの女の子が右手を上げていた。


「うーん、ウチのパーティは厳しいぞ。なんてったって魔王の配下を倒してるからな。」

俺はそう言った。

ちなみに俺は国語力がないとか、超鈍感だとかそういう訳じゃないよ。


とにかく必死でこの話題から離れたいが為に全力で気づかないフリをした。


「シンヤくん、ちょっと、、そこに正座してくれるかな?」

いや、地面は結構凸凹だし、砂利もあるからここで正座はちょっと辛いと思うんだけど、こういう時のコトハさんは有無を言わせぬ迫力があるんだよ。


俺は力なく床に座り正座した。


「シンヤくん、女の子の想いには誤魔化したりせず、真摯に答えなきゃダメでしょ?」

俺が正座するとコトハさんは説教を始めたけど言ってることはもっともだった。


やっぱりコトハさんにはバレてたか。

それに、俺が不誠実過ぎたよ。


ちらっと見てみると魔法使いの女の子が泣きそうだった。


「ごめん、俺、よ‥好きな人がいるんだ。だから君の気持ちには答えられないんだよ、ホントにごめんな」

俺は正直に言った。一瞬、嫁って言いかけて焦ったけどね、、、


「いえ、こちらこそ、いきなりごめんなさい。ちょっとカッコイイなぁ、って思っただけだから気にしないで下さいね。」

そこまで思いつめてもおらず、ちょっと良いな。っと思った程度だったようだ。


喜んで良いのか、悲しんで良いのかな?

それもあるけど、そろそろ足が痺れてきたんだけど、、、、まだ、コトハさんは許してくれそうにないよ。


「で、その好きな人って?」

コトハさんに問い詰められるけど、とにかく誤魔化すことにした。


「俺がその人を好きと言うのはこんな場ではなく、然るべきタイミングで言うつもりだよ。」

コトハさんをジィーッと見つめて、わざと意味深に言ってみる。


すると、コトハさんはとくに紅くなることもなく

「そ、そ、そうだよね。女の子はロマンチックなシチュエーションで告白される方が嬉しいしね。うん、うん、そうだよね、、この話は終わり。」

あっさりと引き下がってくれた為、安心してダンジョンを戻ることが出来た。


「ラグ、君のパーティ駆け出しにしてはそこそこは強いよな?」

帰りに会った魔獣との戦闘を見る限り、個人のレベルも、連携も駆け出しの中ではかなりいい部類だと思うよ。

なんで地下二階であんなに苦戦してたんだ?


駆け出しはとりあえず地下4階まではいって戻ってくるのが通例らしいが、彼らは二階の途中でかなりの苦戦をしいられていて、俺たちに助けられたカタチだ。


「ありがとうございます。あれ?これって褒められてるってことですよね?それぞれ師匠の元で訓練して、街の近くで魔獣相手に連携訓練を重ねた挙句二階で全滅しかけたんだから、皆それぞれ訓練のやり直しですよ。褒められることなんて何もありません。」

ラグは俺なんかよりよっぽどしっかりしたリーダーだったよ。


「それよりもシンヤさん達は名のある冒険者とお見受けしますけど、この街では見たことがありません。普通、こんなハー‥‥女性の人数が多いパーティは目立ちますしね。

普段は別の街で活動されているのでしょうか?」

ラグが重ねて話を続けた。

いま、ハーレムパーティっていいかけたのか?


「あ〜、あれ?俺たち有名人かと思ってたらそうでもないのかな?サイスを倒したって結構すごいことだと思っていたんだけど。

コトハさん的にはどう思う?」

俺はあくまでも、コトハさんに話を向けたけど、、、、



「???えっ???あのサイスを倒した冒険者さんってシンヤさんだったんですか?」

驚いた声色でやたら反応する魔法使いの少女。なんか面倒くさいし、今度からは魔法少女って呼ぶことにする。


「さっき、イオリの話で出てきただろ?名前までは言ってなかったけど。」

もしかして、この話で魔法少女にますます惚れられてしまうんではないだろうか?

ほんと困るよ。


「えっ?じゃあ、あの勇者隊と知り合いの冒険者ってシンヤさんだったんですか?私、レン様のファンなんですけどやっぱりレン様はカッコイイですか?」

えっ?やっぱりあっさりイケメンに寝返ったのか?オンナノコはやっぱり信用できない、、、、


「うん、うちのリーダーより全然カッコイイよ。紹介したげようか?」

コトハさんがそう答える。


いや、まぁ、そうなんだけど、、、、、、、


いや、コトハさんってもしかして、俺のこと好きなんじゃないの?

って思ってみたりした時期が俺にもありましたよ。

まぁ、その幻想もぶち殺されるどころか粉々に砕け散ったけどね、、、


「えっ?仲が良いんですか?」

魔法少女が驚いて尋ねる。



「うん、いいよ。」

コトハさんが即答する。

あれ?もしかして、レンとコトハさんって???


認めないぞ、、美男美女の彼氏彼女なんて。

俺は心に血の涙を流しながらこの世の全てを憎んだ。


「あの、、、間違えていたらごめんなさい。コトハ姉さんとレン様ってお付き合いしてるの?」

や、め、ろ、、、き、き、た、く、な、い。


「そんな訳ないよ。面白いこと言うね。レンは親戚だから昔から知ってるだけだよ。」

魔法少女の問いかけにコトハさんはそう答えた。


なんだ、、もう少しで、世界の全てを憎んで世界を滅ぼしてしまうところだったよ。


そうこうしている内にやっとダンジョンの入り口に戻ってきたので《森の子達》のパーティメンバーと別れ、また彼らと出会った地下二階の大きなホールのような所へもどってきた。今回はゴブリンが居なかったのでさっさと先を進んでいた時にエリシスが声を上げた。


「なんで、こんな物の燃えカスがここにあるんだ?もしかしてさっきのゴブリンは人為的なものか?」



「やっぱり人為的なものか?」

俺はそうつぶやいたけど、


「知ったかぶりはよくないと思うの、、」

イオリにはバレバレだった…


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