初めての破壊女王
「そうか?イオリにもとうとう二つ名がついたんだな?いいなぁ〜〜、二つ名」
俺はイオリを見ながら羨ましそうにそう言ったのだが、パーティメンバーの様子がおかしい。
特にコトハさんは俺と目を合わせてくれさえしないよんだけど。
「あの?シンヤ殿も先程二つ名で呼ばれていたぞ。気付かなかったのか?」
それに、エリシスが真顔でそんなことを言う。
あれ?
二つ名でよばれてたっけ?
もう一回呼んでもらえば俺がどんな二つ名で呼ばれているか分かるだろうか?
さっきの騎士風の冒険者のところに走っていく。
「ちょっとそこのお兄さん、俺の名を言ってみろ。」
仮面をかぶっていないし、胸に7つの傷などもないがそう尋ねてみた。
「あ、ゴールデンボーイ。どうしたんだ急に?ちなみに君の本名はしらないぞ」
彼は確かに俺の通り名らしいものを言ったが、、、
どういう意味なんだ?
なにかの暗喩なんだろうか?
「なんで、俺の通り名がゴールデンボーイなんだよ?意味がわからないよ。」
俺は素直に尋ねてみた。
「それは、、だって、、、露骨過ぎないか?ゴールデンボールだと?
それにそこの美人のお姉さんも最初は破壊女王にしようかという意見もあったんだがな、結局前の通り名のままが知名度が高いからやめになったんだよ。」
えっ?ゴールデンボール?
クラッシュクイーン?
あれ?
それって、ゴールデンなボールがクラッシュして‥‥
‥‥サイス戦の最終戦争に居た勇者隊のメンバーは、、、、レンか?
まさか言いふらされた?
あいつ、イケメンの皮を被った悪魔だったのか?取り敢えず顔の形が変わるまで殴らないと気が済まない。
「でも、まぁ、通り名とかある冒険者は例の人探し冒険者狩りに狙われる気がするし気を付けてな。」
‥‥なんかいい感じで話を締められたけど、なんだ《人探し冒険者狩り》って?
「なんなんですか?その《人探し冒険者狩り》って?」
やっぱり気になって尋ねた。
「なんだよ?知らないのか?ここの所、冒険者狩りが出るんだが、命はとらないらしいんだよな。じゃあ、金目のもの目当てか?というとそんなこともないんだよ。
完全に冒険者を制圧した後奴は言うんだ。
コイツを知らないか?って。」
騎士風の冒険者は割と面倒見の良い性格だったらしく丁寧に説明してくれた。
「えっ?でも、ちょっと疑問なんだけど。なんで、冒険者限定なんだろうな?しかも、何故か狩られちゃうんでしょ?それにその探し人に心当たりのある冒険者もいなかったの?」
俺の疑問は尽きることがない。
というか怪しすぎるだろ。
「あ〜、はじめの二つは正直言うとわからないんだが、最後の一つは答えられるよ。その似顔絵が下手すぎて何描いてるかわからないらしいんだよ」
あっ?それはそれは‥‥
それって一生探し人見つからずじゃないの?
「そうなんだ。とにかく気をつけるよ。ところで、そいつの外見はどんなんなんだ?」
「それが二足歩行で黒山羊の頭と漆黒の翼をもっているようなんだよ。そして、右手の甲に紋様があるらしいんだわ。わけわからん外見だろ?」
「それに襲われるとかホラーだな。兎に角見かけたらダッシュで逃げるしかないかな。
ありがとう。」
バフォメットか?この冒険者が馴染みがないようなので恐らくこっちの世界の人は知らないのか?
ということは冒険者狩りは転移者か?
とはいえ、そうそうは遭遇してしまうものでもないだろうし、取り敢えず皆でダンジョン系の依頼を探すことにした。
多いのは採取系か獲得系の依頼だけど、ここはやっぱり俺の運頼み獲得系でいくことにした。
火食い鳥のクチバシ、トロル肉、大ムカデの肝、その3点の依頼を受けた。これらは特に達成出来なくても罰則はないらしいけど達成率には反映されるらしい。
依頼を受けてから気づいたけど、これ依頼を受けないで、獲得したアイテム分だけ後で依頼を受けて即達成でよかったんじゃないか?
ちなみに肝心のエリシスはなぜかサイン攻めにあっていて『破壊女王、その拳で私のも破壊してください』とか神経を疑う発言をしているファンも居るんだが。
所謂、我々の業界ではご褒美‥‥な感じなのか?
そして、エリシスが俺たちの依頼の受け方のマズさに気付いたのが、俺たちが依頼をうけ終わってからだったのが俺たちらしい気がするよ。
ちなみに、獲得系とは魔獣のドロップ品、採取系とはダンジョン特有の薬草や、毒草、果実などを採取することだよ。
そう言えば、ちょっと気になったんだけど、
凛のその後がものすごく気になる。
メッセージしてみようかな。
「凛、元気にしてるか?落ちこんだりもしたけれど、俺は元気です。そう言えば、ギルドマスターに真相を確かめたの?」
こんなフランクな感じでいいかな?
『元気だよ( ^ω^ )
あれから色々あったんだよ。
ギルドマスターに聞いてみたらやっぱり凛は怖い人だから近づかないようにお触れが出されていたみたい‥‥‥
それで、
『怖い人だから食事もタダにしちゃえ。』
って思ったからタダだったらしいよ(/ _ ; )』
え〜、どんな考え方してるんだよ?そのギルドマスターさんは。
「うわぁ、ほんとにゴメンな。脅しがこんなに効くとは思わなかったわ。もしかして凛ってレベルが物凄く高かったりするの?」
そうだ、例えばレベル1の人の威圧と、レベル999の人の威圧はかなり差があるはずだ。
『レベル95だよ( ´ ▽ ` )ノ』
「意外と高いな。なんでそんなに高いんだ?レベル1から始まったんだよな?」
質問攻めばっかりで申し訳ないけど本当に意味がわからないよ。
『オーガの軍団を1人で倒したし、毎日討伐系の依頼を沢山受けてたから、気付いたらなってたよ?もしかして旦那様より高かった?』
うん、俺より遥かに強いんだけど、、、
イオリと戦ったらどちらが勝つんだろうか?
「俺より全然高いよ。ところで色々ってまだ続きがあるの?」
「うん、街に居辛くなったし、いい機会だから旦那様の居る西に向かうことにしたの。そして、街道を西に歩いて、そこから森に入ったところで、魔王軍の人達に囲まれていたの。
ビックリしちゃったよ(((o(*゜▽゜*)o)))』
あれ?物凄くヤバイ場面のはずなんだけど、全然そんな感じがしないのはスタンプのせいなのか?それとも本当に全然ヤバくなかったのか?
イマイチよくわからないんだけど。
「それって相当まずいんじゃないかな?凛は大丈夫だったの?まあ、メッセージがこんな感じで出来てるってことはうまくにげられたってことなのかな?」
俺は意味がイマイチわからないので無難に返すしかなかったよ。
『違うよ。魔王軍の人達も西に行くっていうから馬車に一緒に乗せてもらえることになったの。ラッキーだったよぉ。☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆』
えっ?
この娘何言ってんの?
もしかして、電波の状態悪いのかな?
‥‥そういう問題じゃないか?
「そもそも、魔王軍って人じゃないよな?えーっと、怖くないの?」
『皆んな、いい人達だよ。一々傅くのはやめて欲しいんだけど皆、女の子の扱いに慣れてるのかな?』
???なんて読むんだ?
スヌホで調べてみよう。
あっ、『かしずく』か?
どしらかというと『従う』とか、『仕える』時に使う言葉なきがするんだけど。
凛って、なんかおっとりしてるから、良家のお嬢様かと思ってたんだけど意外と勉強出来ない子だったりするの?
「え〜と、子供の頃、知らない人について行っちゃいけないって親に教わらなかった?」
なんて返していいか分からずそう返してしまった。ちょっとイヤミな言い方だったかな?
『???前の世界では1人で外に出たことがないから、そういうシチュエーション自体なかったかも∧( 'Θ' )∧』
あれ?やっぱり良家のお嬢様だったの?
聞いてみるか?
「前の世界では親がお金持ちだったの?」
聞き方が露骨過ぎたかな?
『うん、私専属に仕えている人とか運転手さんが居たよ』
うわぁ、別世界だな。でも、それなら疑問が残るんだけど、その魔王軍って前世の従者ってことはさすがにないだろうし、何者なんだろ?
「うーん、いい人達なんだろうけど、ほんとに危ないことがあったら全力で逃げるんだよ。」
確か、彼女は最強だからこれで大丈夫な筈だ。それにしても、凛は危なっかしいな。
「シンヤく〜ん、何やってるの?あれ?電源の付いてないスマホなんかジッと見てなにやってるの?病んじゃったの?コトハさんが癒してあげようか?」
メッセージに夢中になり過ぎてコトハさんが近づいてくるのに気づかなかったけど、電源が付いてないってどういうこと?
俺はもう一度コトハさんの前に凛とのメッセージのやり取り中のスマホの画面を見せた。
「なに?こんな真っ暗な画面を見せてどうするつもり?」
すると、コトハさんが不思議そうにそうたずねるのだった。
あれ?もしかしてこれ、バカには見えないヌマホだったの?
バカにしか見えないスヌホだったらどうしよ?
などと俺がバカな事を考えていた間に凛があんな事態になっているなんて俺は想像だにしていなかった。
次話から凛の回です。彼女は性格上、話は淡々と進んでしまいますのでここ数話は我慢願います。




