戦闘狂になるか殺人鬼になるか
あけおめです、眠いですね
昼過ぎにギルドに帰ってきたタクヤ達は ギルドに依頼達成の報告を済ませ報酬を受け取りにきた。
「お疲れ様でした!では報酬の3000ゼニです!」
「ありがとう」
タクヤは内心ボアラ達について何か聞かれるんじゃないかと思ってヒヤヒヤしていたが特に何も聞かれることなく報酬を受け取ることができた。
しかし周囲のおそらくC級以下の冒険者達はタクヤ達を見てヒソヒソと何か言っている。
早々に立ち去ろうと思ってギルドから出ようとしたら出口で数人の男が立ちはだかってきた。
「おいあんた……」
タクヤは内心で来るか?!と思いいつでも神羅を抜けるように身構えたが襲われることはなかった。
「ボアラの野郎をぶっ殺したのあんただろ?!いやあ助かったぜ!あいつ強えからってよくC級から報酬金強奪してきやがるんだよ……しかも噂によると獣人やエルフなんかは攫って奴隷商に売りつけたりするらしいぜ。あんたらの後をついてった時はまた犠牲者が出るもんだと思ってたけど無事でよかったぜ!」
「はあ……?」
他の男達はうんうんと頷いている。
ボアラはよほど嫌われていたのか隅の方にいる冒険者は「今日は祝いだ祝い!!」とか言ってる奴らもいる。
これが普通なのかそれともよほどボアラが嫌われていたのかわからないがここに長居するのは良くないと思いホロの手を取って急いでギルドを後にした。
しばらくホロの手を取って歩いていたタクヤはハッとして慌てて手を離した。
「ご、ごめんホロ……乱暴すぎたな。ああいう雰囲気は慣れてなくてな……」
「私なら大丈夫です、それより早く戻ってタクヤ様と果物を食べたいです!」
謝るタクヤにホロは微笑みながら言った。
「そ、そうか?じゃあ急ぐか。今日から二人部屋になるし前より過ごしやすくなると思うぞ」
他の冒険者に見つかるのも面倒なのでさっさと宿に向かう。
宿に着くとベリックがいつも通り営業スマイルで迎えてくれた。
「おかえりなさいませタクヤ様。昨日お伝えした二人部屋の件についてなのですがベッドのことを聞いておりませんでした。二人用のベッドと一人用のベッドが一つずつのほうのどちらになさいましょう?」
「ふむ……一人用のベッドのほうで頼むよ、そのほうが疲れも取りやすいだろうしな」
「かしこまりました。ではすぐにお部屋の荷物を運びます」
ベリックがそう言いながら指をパチンと鳴らすと奥からガタイのいい男が数人出てきてタクヤの部屋に向かった。
荷物は少なかったので荷物運びはものの数分で終わりタクヤ達は早速新しい部屋のベッドに大の字で寝転がって寛ぎ始めた。
「前のも良かったけどこのベッドも気持ちいいな〜ホロ」
「はい!幸せです〜」
「……あ、風呂入ってなかった。俺は先に風呂入ってくる。ホロも後で入るようにな」
「……スゥスゥ……」
いつの間にか寝ているホロの毛布をかけてから風呂に入りにいった。
タクヤは風呂で今日の出来事について考えいた。
ボアラ達との戦闘中俺は明らかに殺すのを楽しんでいた。
気をぬくと手が震えてくる。
人を殺した罪悪感などではなくまた殺したい、もっと血を浴びたいという殺人鬼のような思考をしている。
この世界に来て人殺しをしたのは初めてではない。
一人目は正直見た目も言動も完璧にゴブリンを真似していたせいで人間を殺した実感が薄かったしシンラの眷族にもなっていなかった。
そしてシンラは眷族の契約を結ぶときにシンラの血を入れられたからおそらくは覇竜の血が原因なのだろう。
「というわけでシンラ、教えてくれ」
『ふむ……我の血の影響は確かにあるだろうがそれは人殺しというよりは戦闘狂に近い感覚だ。しかし貴様は戦いにまだ慣れきっていないだろうから一つ間違えればただの殺人鬼になる。気をつけておくがいい。それと貴様の魔力量のほうも異常だ。死炎は炎系の魔法では最も魔力を消費するのだが貴様は平然としている』
「……普通の人が使ったらどうなるんだ?」
『魔力枯渇で倒れるか最悪死ぬだろうな、人間の魔力の生成能力は分からぬが貴様が異常なことだけは確かだろう』
この世界は死というものが本当に身近に転がっているのを改めて実感させられる言葉を聞いてしまった。
死炎を使わなければ俺が負けてたかもしれないから文句は言えないし新たな魔法を使えたのはよかった。
「魔力の方はともかく殺人鬼にならないよう注意しないとな、今回はボアラがかなり嫌われていたからよかったけど次やれば俺がお尋ね者になるだろうな」
『せいぜい注意することだ、死ぬことは許さぬぞ。そろそろあの娘が戻ってくるぞ。我は寝る』
耳をすますと部屋の外からパタパタと足音がする。
部屋に入ってきたホロは真っ黒なネグリジェを着ていた。
「に……似合いますか?宿屋の主人の娘さんがくれた物なんですが……」
ホロは顔を真っ赤にして恥ずかしそうに聞いてくる。美人なだけでなくスタイルもいいホロが露出度が高いネグリジェを着ながらモジモジしていると男ならどうしても反応してしまうわけでタクヤはあまり見ないようにしながら答えた。
「あ、ああすごく似合ってるよ。立派なネグリジェもらえてよかったな、ホロ」
ホロはそれを聞くと嬉しそうに尻尾をブンブン振り嬉しそうに近寄って着てタクヤの隣に座り優しげに微笑みながら呟いた。
「……タクヤ様が何をしても私は味方です。耐えられなくなったらいつでも私で発散してくださいね……」
「……まあ騒がれてたしわからなきゃおかしいよな、こんな人殺しと一緒にいていいのか?」
「あの人達を信じてるわけじゃありませんよ、私は獣人だから鼻がいいんです!血の匂いくらいわかりますよ!私はタクヤ様を人殺しだなんて思ってません、やらなきゃなられるような状況だったのでしょうし仕方ありませんよ、私だって同じ状況なら相手が同胞でも迷わず殺します」
迷わず殺すか……この世界ではこれが普通なんだろうな。 現代から来た俺ではまだこの世界に馴染めていないだけか。
「ありがとうなホロ、そこまで追い詰められてたわけじゃないけどなんか開き直れそうだ」
「え?そうなんですか?精神が強いタクヤ様も素敵です!私はいつでも構いませんよ?なんなら今すぐにでも……!」
「とりあえず夕飯食べような?さっきから何回もノックされてるのホロも気づいてるだろ?」
実はホロと話し始めたあたりから食事が運ばれてきてドアを従業員がノックしていたのだがなんとなく会話を続行していたのだ。そろそろ従業員が怒りそうだし何より夕飯が冷めてしまうのは困る。
「うぅ……いい雰囲気だったのに台無しです〜」
ベッドでゴロゴロしながら愚痴っているがホロのお腹からはグ〜っと可愛らしい音が鳴っている。
「よしよし、今日は一緒のベッドで寝てもいいから起きなさい」
頭を撫でてやるとホロは嬉しそうに跳ね起きた。
「絶対ですよ!?約束しましたからね?!」
「……添い寝だけだぞ?」
童貞の俺にはまだきついんだ、悪いなホロ。明後日からは何を狩ろうかな……。
ホロと一緒に夕飯を食べて眠りについた。
眠っている時発情したホロに夜這いされかかったがなんとか振りほどいて抱き枕にしていい権利を与えたら手足でガッチリ抱きついてきた苦しかった。