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裏庭で野良猫に餌をあげていた私が王太子妃になるまで  作者: 椿


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31/31

チョビss




オイラの名前はチョビロッツォ13世。

兄弟の中で1番小さかったオイラは幼い頃に母に見捨てられ、死ぬ寸前だった。

そんな時にロベリアと出会い救われた。


「チョビ、また太った?」

ぶみゃぁ


食事をくれた。飲み物をくれた。

寂しくて凍てつきそうな心に温もりをくれた。

ロベリアが来ない日は寂しかった。

木陰で彼女と過ごす穏やかな時間が大好きだった。


「オスカーさん?」

「ぎくっ」

「おやつ、あげてませんよね?」

ぶぅぅ

「あげてないあげてない!」

「その手に持ってるのは?」


あ、ちゅーむ。

オイラの好物を持ってくるとは流石オスカーだ。

さっさとよこせとパンチをすると2人揃って仕方ないとでもいうようにオイラにちゅーむを差し出して、食べている姿をジロジロと見てきた。

そんなに見てもやらないけど。


「本当に最後ですからね。」

「はい」

み゛ゃぁ…


このオスカーは、オイラとロベリアの世界に突然現れた。

他のやつと違ってオイラに石を投げたり、手であっち行けと払うような素振りをしないからそこにいることを許してやった。

チョビロッツォ13世というかっこいい名前をつけてくれたのもオスカーだ。

だんだんとロベリアとオスカーが仲良くなっていく。


きっと2人は番なんだと思った。

それならずっとそばにいればいい。

でもそうじゃないとロベリアは泣く。

オスカーは寂しそうにする。


ロベリアに攻撃する人間も出てきた。

許せなかった。敵だと思った。

それでオイラは戦おうとしたらロベリアはまた泣いたんだ。

オイラはオスカーの家に連れてこられた。

ここなら安全だといって。

ロベリアとの時間がなくなった。

オスカーともずっと一緒にいられるわけじゃない。


家の人間はオイラにご飯をくれる。

飲み物もくれる。

ずっと寂しかった。冷たかった。


でもそんな時間は長くは続かなかった。

オスカーがロベリアを攻撃するやつを捕まえたんだって。

やるじゃないか。オイラが虫の狩り方をずっと見せていたおかげだな、きっと。


でもやっぱりロベリアはいなかった。

オスカーはそばにいてくれた。

ロベリアは頑張ってるんだって。

オイラは知ってる。

彼女がいつもあの裏庭で歯を食いしばっていた姿を。

人間はめんどくさいと言っていた姿を。

嫌なら逃げちゃえばいいのに。

どこか静かなところでロベリアとオスカーとオイラでまた過ごせばいいのに。


ご飯を食べて、散歩をして、昼寝をして。

そんな毎日を過ごしてどのくらい経っただろう。

ある日外から人間の叫ぶ声が聞こえた。


「王太子万歳!王太子妃万歳!」

「婚約おめでとうございまーす!」


あまりに大きい声に昼寝から飛び起きた。

美味そうな食べ物を運んで、大きな布を窓に吊り下げたり家の人間達は慌ただしく走り回っていた。


ロベリアが帰ってきた。

なんだかヒラヒラしてて登りやすそうな布を体に巻き付けて。

顔についてた丸いのが無くなってなんとなく違うけど匂いだけは変わらない。

子猫の時からそばにいた匂い。

また重くなったと怒りながら優しく抱きしめてくれた温もりも変わらなかった。


ロベリアとオスカーが共に過ごすようになった。

前よりずっと仲がいい。

また1匹になるのかな。


「どうしたのチョビ?」

「どうしたんだチョビ?」


でも2人は気づいてくれた。

仲間に入れてくれた。

寂しくない。


「なんか元気ない?やっぱり病気に…」

「いや、この前獣医に相談したら健康体だって言ってたぞ。」

「こんなに太ってるのに?」

「太ってるのに。」

ぶみゃぁ


2人が抱きしめてくれる。

ここはいろんな人間が出入りしていてうるさいけど暖かい場所だった。


「あ、そうだ。

結婚式のドレスだけど5着でいいよな?」

「ごっ!?

ダメです!いくらすると思ってるんですか!

1着で充分ですから!」

「予算外は俺の方で出すから!」

「ダメです!!」

「俺が見たいんだよ!!」


…オイラを挟んで喧嘩しないで欲しい。

オスカーが笑って

ロベリアが怒って

オスカーが甘えて

ロベリアが折れる。

いつものことなのにまたやってる。

2人は今度結婚式ってやつをやるらしい。

人間はめんどくさい。

そんなものしなくても一緒にいたらいいのに。


でも前みたいに2人とも悲しそうじゃない。

2人とも嬉しそうだからいいかと思った。


うるさいはずの2人の喧嘩の声はオイラには心地の良い子守唄だった。


「チョビ寝ちゃった…」

「じゃあ静かに話し合いを…」

「ダメったらダメ」

「………本当に?」

「……ぐ…3着、それ以上はダメです。」

「ありがとう!!」


ほらね

やっぱりロベリアが折れることになった。







これで本当に完結です。

最後は、本編では描ききれなかったその後のお話でした。


作者が密かに気に入っていたオスカーの侍従と、チョビのお話です。

本編の最後の方ではあまり姿を見せられなかったチョビも、これからはロベリアやオスカーと一緒に、のんびり過ごしていくのでしょう。


本編のおまけとして、少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。


最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

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