第九十話 灰の補助士
――戦いが終わり、祭壇に沈黙が訪れていた。
砕けた石柱の陰に、ひとつの影が佇んでいた。
フードを深く被り、血に濡れた剣を杖代わりに突き立てている。
「……終わったのか」
かすれた声が、誰にも届かぬように落ちた。
光の欠片が舞う。その中心で、
勇者アルヴァンの剣が静かに輝きを失っていく。
その男――は、ぼんやりとそれを見つめた。
「……結局、あんたらも“神”に選ばれた駒の一つだったんだな」
彼の眼は、怒りでも悲しみでもなかった。
ただ、遠くに消えた光を映していた。
「俺は違う。神にも、誰にも縋らねぇ。
――俺は俺の力で、ここまで来たんだ」
彼の背中には、無数の傷跡と焼印が刻まれている。
“無力の証”。
しゃがみ込み、勇者の剣を拾い上げる。
「……ビジネス勇者が死んだ。
なら――次に、この世界を救うのは、誰だ?」
小さく笑った。
それは諦めのようで、同時に何かを決意した笑みだった。
「……誰にも期待されねぇなら、俺がやるさ。
この腐った“神の娯楽”ってやつを、終わらせてやる」
影はアルヴァンの痕跡と聖剣レイヴァンを吸収し立ち上がり、
崩れた祭壇の奥へと消えていく。
足跡の先には、まだ煙る夜明けの光。
――その歩みこそが、後に“灰の補助士”と呼ばれる男の始まりだった。
彼は異世界に召喚され勇者パーティーとなる
はずだった。
不細工でデブで簡単な補助魔方しか使えなかった。
おまけに引きこもりで他人とコミュニケーションが取れず
エロゲと食事と排泄と寝る事しかしなかった。
そんな男が夢にまでみた異世界召喚。
妄想や夢にまでみたハーレム生活が始まるのだと思っていた。
召喚した国の国王は
「また、ハズレが出て来たわい」
と、俺を奈落の底に捨て置いた。
――あの日、俺はゴミのように捨てられた。
石の床に叩きつけられた瞬間、肺の奥から血の味が込み上げた。
見下ろす王の顔は、まるで汚物でも見るようだった。
そう言って、俺の召喚は終わった。
光に包まれ、英雄たちが選ばれていく中、俺だけが地の底へと突き落とされた。
――“失敗作”。
それが、この世界での俺の肩書きだった。
* * *
あれから、どれくらい経っただろう。
地下の洞窟で目を覚ましたとき、
身体中が痛くて、まともに立つこともできなかった。
食料もなく、水もない。
生きるために、俺は泥をすすり、虫を噛み、
野犬の死骸を奪い合うほどに落ちぶれた。
それでも、生きた。
生き延びた。
「……死んでたまるかよ。せっかく異世界に来たんだぞ……」
最初はただの負け惜しみだった。
けれど、何度も死線を越えるうちに、
その言葉だけが“自分”を繋ぎとめる唯一の呪文になっていた。
やがて、魔獣の棲む谷に辿り着いた。
光の届かぬ洞窟の底。
そこにいたのは、腐りかけた魔族の亡骸と、淡く光る魔石。
腹が減っていた俺は、ためらわずにそれを喰った。
――その瞬間、頭の中に焼けるような痛みが走った。
《スキル派生条件を満たしました。称号:灰の補助士》
視界が白く染まり、
全身の骨が悲鳴を上げる。
だが、死ななかった。
それどころか、体の奥から力が湧き上がってくるのを感じた。
「な……なんだ、これ……!」
脳裏に浮かんだ言葉が、すべてを変えた。
《模倣の祝福》――
相手の能力を一時的に自分へ写し取り、
繰り返し使用することで、永久に自力化するスキル。
つまり――
“支援不能”だった俺が、世界のすべての“支援”を自分に集約できるようになったのだ。
弱った魔獣の《再生》を模倣した。
すると、裂けた腕が元に戻った。
次は、魔族の《魔力増幅》。
そして、倒した冒険者の《剣技特化》。
何でも喰えば、強くなれた。
だが、それでも俺は知っていた。
この力は“救い”じゃない。
“渇き”だ。
強くなっても、俺を認める者はいない。
勇者パーティーにいた女神のような仲間たちも、
もう俺の名前すら覚えていないだろう。
――それでも構わねぇ。
構うもんか。
この腐った神の選抜ごっこを、俺が終わらせる。
誰にも選ばれない者が、誰よりも強くなる。
それが、この世界への復讐だ。
* * *
俺は勇者の力を得た
―ーーだが、まだ足りない。
だが、まだ足らない。
歴代勇者の能力を手に入れたとしても
体つきが変わっても
足らない。
女の子が。
普通この展開だと、エルフのお姉さんが俺の力を認めてくれて、仲間になり、あんなことやこんなことが起こりそうになる焦れったいのを楽しむはずが!!!
くそ、なんだあのパーティーは!!?
地味な男に可愛い女の子、美しい獣族、妖艶な魔女、エルフ、メガネ、、、全てが集まっているんだぁぁぁぁ!!!
羨ましい!!!!
今に見てろ!
嫉妬の焰がお前をやきつくしてやるからな!
ひ、ろ、し
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