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乱心令嬢リーベミオのたった一つの望み  作者: 池中織奈
番外編

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ロベルダ公爵家のその後 ⑥


 手紙の返事はなかなか来なかった。【ニクスの花】の団長はどうやらユウディス王国の公爵に構う時間はないらしかった。

 ――そもそも彼らがこの国から去ったことに関しても、もしかしたら不興を買っている可能性は十分にあった。



「……父上、リーベミオは」

「まだ見つからない」





 公爵は長男の言葉にそう答えた。




 彼はがっかりした表情を浮かべる。リーベミオの兄であるロベルダ公爵家の長男は、切り捨ててしまった妹の真実を知って、酷く落ち込んでいた。





 あの頃――まだ子供だった彼は、リーベミオが突然訳の分からないことを言いだすのを聞いて、動揺し、不気味に思い、それから考えないようにしていた。そのまま、リーベミオのことを思い出す予定もなかった。





 それなのに、神託が下った。

 ――他でもない、切り捨てたはずの妹が何も悪くなかったと証明されてしまった。

 そうなれば罪悪感が当然増してしまう。




 あの時、もっと違う対応は出来なかったのかと――そればかりを考えてしまっていた。

 まだ若い公爵子息は、リーベミオのことを考えると耐えられなかった。自分がこうして当たり前の日常を送っていることが辛かった。周りの視線も考えて、胸が苦しいとも思っている。

 だから、父親に縋る。




 自分でリーベミオを探しに行こうとする余裕は彼にはない。人の目を恐れている部分も大きいと言えよう。

 この世界の貴族達の多くは信仰深い。神殿と深いつながりを持っている者が多くいる。

 彼の友人達の多くもそうだ。彼等からしてみれば、ロベルダ公爵家と距離を置きたくなるのも当然だった。



 神に認められる少女を、乱心令嬢などとそう言い放ったのだから。

 落ち込みながらも、ロベルダ公爵子息はなんとか前に進もうとはしている。やれることは進めている。

 ――それでも気を抜くとすぐに、リーベミオのことを考えてしまった。







「……父上、私達はなんということをしてしまったんでしょうか。リーベミオのことを信じられなかった」

「そう、落ち込むな。私だってそうだ。親なのに……あの子が狂ってしまったのだとそう思い込んでしまった。私もリーベミオに再会することが出来れば、謝罪をするつもりだ。あの子はもう二度と、私達のことを家族と認めてくれないかもしれない。ただ……出来る限りのことはしたいと思っている」

「はい……。私も、リーベミオに許してもらえるのならば、また以前のように話すことが出来たら……とそう思います。ただ身勝手なことを言ってしまっていることはもちろん、理解していますが……」




 顔色を青くする長男。

 彼にとって、リーベミオは大切な存在だった。自慢の妹だった。それでも自分にとって理解の出来ないことを言い続ける彼女のことを突き放してしまった。家族であるのならば、もっと……歩み寄ることが出来たはずなのに。





 それに加えて、神託が下らなかったらそのまま捨て置いてしまっただろうという事実が余計につらかった。

 自分はそんなにも薄情で、冷たい人間だっただろうか……。それを考えても、自責の念にかられる。





「ああ。そうだな……。ただいつ会えるかも未だ分からない状況だ。君も辛いと思うが、リーベミオは私達が気に病みすぎるのを良しとはしないだろう。リーベミオのことを探すのは、私達大人が行う。だから、君は……普段通り生活をしていたらいい」




 公爵はそう答えながらも……娘は自分たちのことなど、もう気にしてもいないのだろうなとは思っていた。

 寧ろ自分たちが気に病んだことに関しても、リーベミオはどうでもいいとさえ思っているだろうと分かっている。



 とはいえ、息子がこのまま落ち込み、何もしないまま引きこもってしまうのは親としても困る。

 なんせ、リーベミオ・ロベルダに会えるのがいつになるのか分からない。もちろん、全力で探すつもりではある。

 しかしだからといってすぐに会えるか分からないのだから、当たり前の生活はした方がいいだろう。





「……でも」

「でもではない。確かに公爵家は厳しい目で見られるだろう。私も……冷たい視線は周りから向けられている。しかし、それで私達が閉じこもって、公爵家としてもやらなければならないことをやっていなければリーベミオと再会した時に呆れられるだろう。それに陛下からも、厳しい目で見られてしまう」




 レリオネル・ユウディスに気づかなかったこと、リーベミオ・ロベルダを乱心令嬢と断じてしまったこと。

 それは王家と公爵家の双方の罪である。

 ただ公爵家がそれで行動をやめ、公爵家として必要なこともしなければ王家からは何を言われるかも分からない。



「はい……分かりました」



 父親の言葉を聞いて、長男はそう言って頷くのであった。


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