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The way home  作者: 櫻眞理恵
10/10

追加 8-2

唇を重ねているのが

彼だということが

なんだか

信じられなくて


唇が離れるたびに

目を開けて

確かめてしまう



どれくらい経ったのか

分からないけれど

名残惜しげに

唇を撫でて

彼の唇が離れる


彼の背に回っていた

自分の両手に

力を込める


幸せに浸っていたら

目が覚めて

自分の部屋の天上が見える

なんてことになったら

どうしよう




額を合わせて

焦点を結べない程

近くで見つめ合う



考えたら私は

この人のキスしか

知らない


10年と少し前

彼の部屋で

テスト勉強をしていた時に

さっきの

探るような

真剣な表情を見た


付き合いだして

1年と少し

経っていたけれど

この人に色を感じたのは

あの時が初めてだった


あのまま

キスされても

私は受け入れただろうけれど

この人ときたら


 キスが

 したいです


真っ赤な顔で

表明したのだ


思わず正座で


 はいっ


と返事をしてしまうくらい

彼は緊張していたし

私も緊張していた



思い出して

額を合わせたまま

ふっと微笑む


 なに?


彼が

怪訝そうに尋ねる


 思い出しちゃって


笑みを広げて言うと

至近距離の彼も

微笑んだ


 お前なぁ……


苦笑しながら

何のことを言っているかを

理解しているらしい彼が言う


 だって

 「キスがしたいです」はどうなの


言いながら

笑い声が漏れてしまう


 お前だって

 正座して「はい」って

 どうなんだよ


笑う彼の頬が

少し熱い



2人でくすくす笑う


心の中に

「大好き」が

満たされていく



 ねぇ


思い立って

声をかける


 キスが

 したいです


少し驚いたらしい彼は

けれど

笑いながら


 はい


と答えた



少し首を伸ばして

笑った形のまま

唇を触れさせる


私の頬に触れている手に

力が籠もって

彼がまた

私の唇を奪っていく


こんな

大人のキスが

出来るようになったんだ

少し複雑な気持ちで思う


彼は

他の人のキスを

知ってるんだろうか



尋ねて良いのか

まだ少し

確信が持てない



高校生の頃とは

少し違うぎこちなさで

唇が離れた


そのまま顔が離れ

腕を引っ張られて

ソファに身を起こされる


少しだけ

不安を覚えながら

彼の顔を見ると

やはり少しだけ

不安そうな彼が

私の頬から肩に

手を滑らせて


短く息を吸ってから

言った


 もう手放す気はないからな


真剣な目で

まっすぐ

私を見つめてくる


視線に

心の底まで

貫かれたような気がして

どくん

心臓が大きく打った


 愛してる


自分の心臓の音の合間に

彼の低い声が聞こえた



 ずっと

 愛してる



その言葉が

自分の隅々にまで

染み渡っていく


ああ


私は

この言葉が

聞きたかったんだ


この人の声で


この人の心で




引いた筈の涙が

また

押し戻されてくる


また一つ

口付けが落とされて




真剣な目の彼が言う



 結婚しよう



目を離せず

見開いたまま


目に膜が張るように

涙が壁になっていき

視界が歪んでいく


涙の壁が

ぱちんと弾けて

頬を流れていく




何も言葉が出てこない

頬を流れる涙が

連れて行ってしまったんだろうか




 嫌か?


言葉が出せない私に

彼が不安げに尋ねる


私は慌てて

頭を左右に振る

頬を流れていた涙が

吹き飛びそうな勢いで


まだ言葉が出てこないので

がば と

彼の首に抱きついた


私の背に

彼の手が回される


言葉が出ないのが

気づかれたのかも知れない

ぽんぽん と

背を優しく叩かれる


そして


 結婚

 したいです


と囁かれた


涙が止まらないまま

笑ってしまう


私は

体を離して

ソファの上に正座した




 ……はい




涙声で

顔もぐしゃぐしゃで

10年かけて作り上げた

「デキル私」は

ひとかけらも残っていないけれど

にっこり笑って

そう答えた


余裕がありそうに見えていた彼は

それでも緊張していたようで

ふっと息を吐くと

頬を少し染めて

にっこりと笑った


この人に恋をして

もう10数年も経つのに

その笑顔で

私はまた

恋に落ちた




 俺に言うことは?


ぽうっと彼を見つめていたら

催促された



……言いにくい


目を伏せる


今まで生きてきて

言ったことのない言葉だからか


心から

伝えようとしているからなのか


簡単には出てこない



彼はこちらを見つめながら

大人しく待つことにしたらしい


ちらっと

目を向けると

口元に笑みは浮かべているが

目は真剣だった


もう一度

目を伏せて

呼吸を整える



顔を上げて

まっすぐに

彼の目を見つめる



 ずっと

 貴方だけ愛してた


 ずっと

 貴方だけ愛してる




言い終えると同時に

引き寄せられて

抱き締められた


キスが降ってくる




 待たせてごめんなさい


キスの合間に

囁くように言う



背と

膝の下に

腕が差し込まれて

ふっと

体が浮く


 もう待たない


抱き上げられ

そう宣言される


そのまま

廊下に出て

家の奥に歩いていく


何となく意味が分かって


 はい……


照れくさくて

声が小さくなる



 10年分

 しっかり受け取れよ


そんな言葉が耳に入り

視界が霞むかと思うくらい

顔が熱くなった



彼が肩でドアを開ける


 おかえり


部屋に入りながら

今日2回目の

その言葉を聞く


 ただいま


後ろで

ドアが閉まる音がした


追加のお話はこれで終了です。

これ以上追加していくと、R18になりそうなので(笑)、ひとまずこれで、完結とさせていただきます。

もしかしたら、また追加させて頂くこともあるかも知れません。


ともあれ、お読み頂いてありがとうございました!

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