逃れられない呪い
昔、世界はやさしい場所だと思っていた。子供の頃の静かな幸せが、ずっと続くと信じていた。でも世界は突然残酷に変わって、小さな心が信じていた温もりを全部奪っていった。
死ぬことは、もう怖くなかった。怖いのは、昔わたしを笑って抱きしめてくれた手が、今はわたしを殺そうとしていることだった。
「どうしてみんな、ジアのことを化け物って呼ぶの?どうして死ねって叫ぶの?ジアには、全然わからないよ。」
胸が痛くて、ずっと泣いていたい気持ちだった。息を吸うたびに苦しくて、飲み込んだ嗚咽が肋骨の奥で疼いていた。
「どうしてみんな、ジアを嫌うの?」
足ががくがく震えて、体がしびれて、もう立っていられなかった。暗くて果てしない森の真ん中で、わたしはくずおれた。それでも、この小さな体の中にある何かが、生きることを諦めさせてくれなかった。
最初から決めていた。諦めることだけは、自分に許さないと。ふらふらしながら、また立ち上がった。ひび割れた声で、涙を流しながら、木々に向かって叫んだ。誰も答えてくれなかったけれど。
「ママ…パパ…ギア…スス…」
「もう死にたいよ。お願い、終わらせて…ジア、すごく疲れちゃった…」
同じ言葉が何度も口からこぼれて、やがて疲れ果てて、震える小さな笑いだけが唇に残った。
「誰もジアの声、聞いてくれない。神様さえ、ジアの話を聞いてくれないんだ。」
何時間も歩き続けた気がする。目的も、明日への希望もないまま。
「これがジアの運命なの?ジア、何か悪いことしたの?化け物になんて、なりたくなかったのに。」
体中が痛かった。服はぼろぼろに破れて、乾いた血が小さな手にこびりついていた。何度も転んで擦りむいた膝は、歩き続けても鈍い痛みが消えなかった。
髪の間から突き出た小さな角は、今夜はいつもより重く感じた。硬くて不思議な感触が、頭皮の上でまだ馴染めずにいた。細くて震える尻尾が、一歩進むごとに冷たい空気に触れて、自分の体がもう元の形ではないことを思い出させた。
数日前から、目に映る色が消えていった。今見えるのは灰色と鈍い銀色だけだった。周りの木々はもう茶色でも緑色でもなくて、ただ濃淡の違うぼんやりした影にしか見えなかった。
「ジア、もう色がちゃんと見えないんだ」誰もいない場所で、小さく震える声でつぶやいた。「ジアの目、人間の目みたいに働かないの。」
耐えがたいほど長い時間が過ぎたころ、遠くから微かな音が耳に届いた。
「水!水の音がする!」
弱々しくて震える声が喉から漏れた。安堵と信じられない気持ちが半分ずつだった。この手つかずの森で、優しいものなんて何一つ見たことがなかったから。
「み、水…!やっと…水…」
それまで見えていたのは、暗い木々と漂う闇、そして静寂に満ちた森だけだった。
足がどんなに震えても、体が今にも倒れそうでも、わたしは音の方へ歩き続けた。何かがわたしを止めなかった。あの音が本当に流れる水だという希望に、必死にしがみついていた。不思議なことに、耳がいつもより敏感に、あらゆる葉音や遠い水滴の音を拾っていた。
「本物であってほしい」心の中でそう願いながら、片足ずつ引きずるように進んだ。「お願いだから、今度こそ本当に水でありますように。」
けれど川辺に出る代わりに、いつの間にか、小さな花が咲く隠れた草地に迷い込んでいた。世界から隠されたような、ひっそりとした場所だった。太い木々が四方を囲み、まるで生きた壁のように寄り添って、この静かな一角を外の厳しさから守っていた。
水の音は、さっきよりずっと近くはっきり聞こえていた。この静かな場所は、さっきまでいた敵意に満ちた森とは違って、どこか柔らかくて、疲れきった感覚にも優しく感じられた。まるで森自体が、この一角だけ残酷さから守ろうと決めたみたいに。
匂いさえ違っていた。湿った土と、何か甘い香りが混ざって、この不思議な感覚だけがかろうじて気づけるくらいかすかだった。優しい風が草地を吹き抜けて、震える小さな尻尾にそっと触れた。その一瞬だけ、自分の体が怖いものだとは感じなかった。
とうとう足の力が抜けて、わたしは柔らかい地面に崩れ落ちた。もう一度立ち上がる力は残っていなかった。
「ジア、少し休みたいだけ」冷たい草の上でつぶやいた。瞼がどうしようもなく重くなっていく。「ちょっとだけ休んで、それから水を探しに行くから…」
暗闇はあっという間に視界を飲み込んで、あの希望に満ちた水の音にたどり着く前に、意識が遠のいていった。
はじめて、小さな気持ちが胸に芽生えた。
「もしかしたら、まだ大丈夫かもしれない。」どこか先で、小さな希望が待っていた。それは小さいけれど、強かった。世界がやめろと言っても、消えようとしなかった。
果てしなく重く感じられた時間の中で、一筋の希望が現れた。かすかだけれど、たしかにそこにあった。今夜の暗い空に浮かぶ遠い光のように、静かに見守っていた。森が一瞬だけ残酷さを忘れたその場所で、一人きり丸くなって眠る、小さくて怯えた子供を。




