表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
望月と少年の非日常譚  作者: 義春みちを
3章 鍛冶屋を求めて。
45/47

3章 14話:ぽっかり空いた穴

「おかえり!お風呂沸かしてあるよ!」


明るく出迎えてくれたのは天使———リリレヴァだった。自然な笑顔を取り戻し、きらきらと微笑んでいる。ダンピールだが、ウツキにとって太陽のような存在。何かしようという原動力は彼女がいなければ無かっただろう。


「ありがとう。るなてぃ、お姉様先に入ってきてくれよ。」


女の子はどんな事を考えているのだろう。異性の入った風呂に入るのは抵抗があるのか。それとも、自分の入った後のお湯に入られるほうが嫌なのか。ウツキは前者だと仮定し、提案した。


「ええ。そうさせてもらうわ。」


「では、お先失礼しますね。お嬢様も、お風呂の準備をさせてしまい申し訳ございません。ありがとうございます。」


手を重ね、肘をグッと引き、綺麗なお辞儀をする。こちらにも振り返り、微笑みと会釈をしてみせた。


そうして2人だけになった玄関。まっすぐで純粋な視線に耐えられず、そっぽを向いた。近くにいるのだから、話せばいいのに。いつか遠く離れてしまうのではないかと怖くなる。


いつもそうだな。


前の世界でも、卒業して、疎遠になって。もう会えなくなる前に、何か残せる物は無いのか。


「ウツキ、入らないの?」


「あっ…!いや…その、外にいるから。だ、大丈夫」


支離滅裂だ。何を言えば良いのか、分からない。言い淀む前に話そうとすると、言葉がまとまらない。頭に浮かんだ言葉だけが、意味を成さず、先行した。


「ふ〜ん。」


リリレヴァは扉の向こうへ消えていった。

悲しみより先に、安堵した。それがなぜか、とても嫌だった。


カルデラを満たす水のほとりで、芝の上に寝転んだ。太陽は相も変わらず、明るく周囲を照らしている。


「…太陽が無いと、何も見えない。」


ふと、そう思った。


何故上手く言葉が出ないのか。普段はもっと出るはずなのに。1番伝えて、知りたい人と話せないのか。

好きで所謂『コミュ症』になったわけじゃ無い。失言するのは誰にだってある。それぐらいわかってる。みんな理解して、立ち直ってる。

ただ他の人よりも、転んだ傷が治りきらないだけ。


「いつからこうなったかなぁ…」


自分の真上。手の届かないところから太陽の光が差す。目が眩み、瞼を閉じる。


「こうすれば、眩しくないよ。」


頭を優しく持ち上げられる。そして、乗せられた所は柔らかかった。

目を開けると無邪気な笑みを浮かべるリリレヴァ。


「日傘取ってきたんだ。マニャーサに行ってから、あまりお話しできてなかったし。一緒にお外にいたくて」


「ぁ…」


嬉しい。けれど、何を返せばいいのか分からない。相手のどこを見て、目はどれぐらい開いて、声の大きさはどれほどで。

なにも、分からない。わからないから、顔を隠した。何も分からないから、その場から逃げようとした。


「私といるの、嫌?」


「そ、そんな事無い!」


あまり突拍子も無い事を言うので、声が大きくなる。否、リリレヴァからしたらそう感じる態度だったかもしれない。


「お話しするの、嫌い?」


首を横に振る。


「そっか。

…じゃあ、逃がしてあげない。」


頭の上に手を乗せて、撫でられる。


「元気ない時に、お母様がこうしてくれたんだ。ウツキ、疲れてるのかなって思って。元気出してほしいなって、思って。」


心音がうるさい。それでも、リリレヴァの声ははっきりと聞こえた。


「ウツキ…さ、もしかしてお話しするの苦手?」


小さく頷く。


「私も、そうだったんだ。引っ込み思案で、人の目を見れなくて。…でもね、誰かと話せないのはとっても寂しいから、お話ししようって思ったの。ウツキが嫌だって言うまで、寂しくなくなるまで、ずっと一緒にいるから。」


顔を覆う腕を少しずらし、リリレヴァの目を見る。口元は隠して


「嫌なんて…思わない、から」


今まで、こんなにも気にかけてもらった覚えがない。嬉しさと気恥ずかしさで、再び顔を覆う。


リリレヴァは予想していなかったのか、驚いた顔で数秒固まる。口をぱくぱくとさせ、言葉が詰まる。言いたい事がまとまったのか、少し微笑んだ。


「じゃあ、ずぅっと一緒…だね。」


ウツキはその表情を見る事ができなかった。何処か切なそうで、嬉しそうで、儚げな表情を。


□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇


見覚えのない天井があった。いつの間にか寝ていたようだ。体を起こすと、自分がソファで寝ていたことに気づく。


「…確かここは」


ガラスのテーブルに、空のポット。お洒落なタッセルに固定されたカーテン。ここは以前、説明してもらった応接間であった。


「もう起きたの?私の見張りという名の休憩が無くなったじゃない。永遠に寝てなさい。」


部屋の入り口に目をやると、ソルティアが茶葉と2つカップを持って立っていた。


「殺そうとするなよ!…てか、なんでこんな所で寝てるんだ?もしかしてさっきまでのは夢…⁈」


「さぁ…?確かめる為にもう1度夢の中に行ってくればいいじゃない。」


ソルティアは応接間の蛇口を捻り、ポットに水を汲む。対面のソファに座るとクッションが反発し、桃色の髪はふわっと揺れた。無言で淡々と紅茶を淹れる。

出来た紅茶をそれぞれカップに注ぐ。ウツキは1つカップを取ろうとするが、下げられる。


「紅茶なんて飲んだら寝れなくなるでしょ。香りで落ち着くだけにしなさい。」


「それって温かい紅茶だった場合冷めねえか?」


目を丸くして、ぱちぱちと瞬きをする。


「貴方、紅茶の1つも飲んだことないわけ?寝る前に香りを楽しんで、起きたら火で沸かして飲む…当たり前じゃない」


ボッ…


目の前で一瞬にして火が着き、消えた。

どこにも引火せず、カップの中の紅茶だけが湯気を出している。


「…あちっ」


吐息で冷ましても尚、熱いほどの温度。———もしかすれば、ソルティアが猫舌なのかもしれない。


「…くたばりなさい」


「理不尽ッ!」


「寝ないなら何処か行きなさい。私はこのままサボるわ。やるべき仕事は終わっているもの。」


本当に意味もなくやれ永眠だの、くたばれだの言われたのか。そう思ったが口には出さなかった。わざわざここに残る理由もないので退室する。


「あ、そうそう。風呂って今誰かいる?」


「いないはずよ。私と姉様はもう入ってるから覗こうったってそうはいかないわよ。」


「の、覗かねーし⁈」

おはこんばんちゃ、みちをです。

ハイ、更新劇遅です。で、でも!来週分はもう書いてますし!なんならこれ予約投稿で日曜の0:13分に書いてますから!

実質土曜日ですから!

うん。わかってますよ。そもそも遅れてる時点でね。よく無いよね。

イ、イヤ、ボクニモ ボクノ セイカツガアッテ

ケッコウ カツカツ ノ ギリギリデスゴシテタリ ラジバンダリ

ソモソモ、 x ノ コウシン モ シテマスシ オスシ…


で、ではまた次回も見てくださると幸いです!(逃げ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ