#09 逆張りのテクニカル指標と必勝のストラテジーと
永禄十二年(1569)十月二十九日
本日は徳川饗応の日。
家人たちのいちゃいちゃの夜を終えた天彦は心の観測と制御に努めた。
色々と模索した結果、行き着いた発想はやはり初心に立ち返る。であった。
せっかく国家などという幻想単位が成立する前時代社会に生まれ落ちたのだ。どうせならまったく違うメソッドで生きてみたい。
これこそ天彦の初心。所信とは少し違うが、転生を確信しどうにか生きられそうな手応えを掴んだときの第一感であった。
そして同時に世界には正義や世界など存在せず、ただ誰かの思惑や物語のみで引っ張られていくのなら自らが描けばいい。そんな己惚れもちょっとあったりなかったり。
いずれにしても天彦はマインドで何かを突き動かすことを苦手としている。対外的な評価は別として事項評価基準で向いていないとも思っている。
よって常にテクニカルな何らかの指標、例えば騰落レシオ(逆張りのテクニカル指標)の罫線とか。あるいは何らかの勝率誘導型ストラテジーといった論理的数学論でアクションの動機づけを行ってきた。
だが確率が役に立たないことはこの十年に満たない戦国暮らしで身に染みた。
結論、確率は収束しない。これはけっして暴論ではない。あくまで個人的な経験則だが収束させるためには人の命はあまりにも短すぎたのである。
とくに人の命が一杯の茶碗の飯よりも価値が軽いとされるこの戦国室町時代に措いては。
そういうこと。頭でっかちはやめにする。今ここに新たなレイヤーの突入した新星天彦が誕生したのである。……とか。
御大そうな御託をツラツラ652文字で並べ立ててみてもバレてますよね。
お前、いっつも好きなことしかしてへんやん。って。あるいは嫌いなこと厭なこといっこもせーへんやん。って。あ、はい。
つまり、
「どうぞ。美味しいですよ」
「おう美味そうじゃ。お前、名前は」
「天と申します。お侍様は?」
「天か。良き名じゃ。何より縁起が良い。うむ。ならば褒美に名を明かして進ぜよう。儂は本多平八郎と申す三河一の武者である。童天、覚えて置くがいい、我が名をな。けっして損はせぬ。がははは」
「はい! 本多様」
「うむうむ、実に愛いやつじゃ。のう天」
「はい! よく言われるん」
「で、あろう。がははは」
抜け抜けとウソだね。
の、ウソ松彦は配膳係の給仕を買って出ていた。あろうことか。
どれだけ低く見積もっても天彦を超える身分の者は誰ひとりとしていない場でおそらく最低の身分の者が就くであろうフードランナ―役を自ら買ってでていたのである。
これまではこの手の冗談は敢えてせずに避けてきた。一つに物理的に命がモアデンジャラスというのがあった。庶民ぶるとアホみたいに危険度が跳ね上がったのだ。
そしても一つ。むしろこちらが最大理由、何より天彦の身分は帝の御認めになられたもの。軽々に扱っては無礼であるという極オーガニックなリテラシーが効いていたから。
だがあちらが粗末に扱ってくる。あちらが無礼ばかり働いてくるのだ。なぜ自分は敬意を尊重しなければならない。とか。
そんな知性の働いた理屈ではなく、単におもクソ感情論120全振りで拗ねて拗ねまくってやった結果、この配膳係で皆をあっと驚かせたんねんの巻発動に繋がっていったのである。信長公もおっ魂消るほどの奇策として。
さすがの信長公もまさか貴種たる天彦がいくらなんでも直接フードランナーを買って出るとは思ってもみなかったのだろう。文字通り目を剥いておっ魂消ていた。ふっ勝ったったん。
「ではゴリマッチョさん。ごゆるりとお楽しみください」
「おう。……ごり、なんじゃ!?」
逃げろ。
天彦は給仕や小姓に紛れて配膳係を務めていた。まあその馴染むこと。
違和感は控えめに言ってゼロである。それを証拠に同僚諸氏は誰ひとりとして天彦を意識している風ではない。まさかのファミレスバイト経験が生かされた場面であった。
猶、さすがに上座一列目を担当するのは拙いと踏んで、二列目以降の受け持ちとさせてもらっている。今は主に三列目を担当している。
それでも徳川恩顧の重臣がいるので気は一つも……抜けます。抜きまくってます、コイツは。
饗応配置図)
上座上席正面、織田家列席
織田信長>そのすぐ左に長野是知(天彦の影武者)>その左右に織田一門衆と連枝衆(勘九郎・三介・三七郎)
二列目・織田家重臣(林佐渡守・森・柴田・佐久間・村井・河尻)>三列目織田家臣(佐々・木下・前田・毛利・服部)
上座向かって右正面、菊亭家列席(イツメンとその他総勢二十一名が三列で臨席する)
上座向かって左正面、徳川家列席
一列目・徳川家康>以下、石川家成(数正)、平岩重忠、鈴木喜三郎、酒井忠次、菅沼定盈、奥平定能、牧野康成
二列目・東西三河衆の松平家連枝衆
三列目・鳥居元忠・本多忠勝・榊原康政・大久保忠世、井伊直虎、他三名
さて、
そしておっ魂消状態から次のステージ“どこまでする気であるのか。いい加減にいたせよ”バージョンに入った信長公は、けれど目線で訴えるばかりで声は一つも出せずにいる。
それはそう。昨夜の今である。あれは本当に薄氷の結果であった。
少しボタンを掛け違うだけでとんでもない事態に陥っていた可能性も低くなかった。いやその公算が高かったと天彦の為人と気質をよく知る信長は考えていたはずである。
だからこその給仕彦の誕生なのである。信長に結果的とはいえ天彦の悪巧みに加担しない選択肢はなかった。
というのも昨夜夜半、雪之丞の件とは別件で事件が起こっていた。
三万貫のトリックを茶々丸の素朴な疑問、“おい菊亭、東宮の取り分はなんぼや”経由ですべての企みを気づかされた天彦が、衝動そのままに深夜の岐阜城天守閣に突撃するという無茶苦茶なバカげた無謀な抗議事件が勃発していたのである。
その際に信長は“純真無垢なキッズだまくらかして酷い、ほな戦や!”と、突っ込みどころ満載の捨て台詞を伝家の宝刀にして、まぢギレしている天彦を宥め賺すために方便として“なんでも一つ頼みごとを訊いてやろう”と言ってしまったのであった。←アホです。
天彦に言質を与えるなんて阿呆です。アホのすることです。愚かしい真似という意味も含めてアホです。だってそんなことしたら解釈の幅を糊しろ部分いっぱいまで広げて攻めてくるに決まっているのに。
そして当然のようにキャンセルポリシーなどありません。一文字も。
たとえ倫理的な取り消しの概念があったとしても天彦には通用しません。言ったが最後、お仕舞いです。
それがこの如何にもとんでもないハレーションを引き起こしそうな状況に繋がっているのである。よって信長は何が起ころうとも他の誰も責められない。自分自身を除けば、だが。
閑話休題、
そういった背景を踏まえ、天彦は然も恨めしそうな目を向けてくる信長を涼しい顔で受け流し、実に楽し気に給仕役に夢中となって次々と御膳の上に、率先して料理を運んでいくのであった。中には自分たちで考案したものもあるので気分はるんるんるんで。
というのも三介コラボというテイの天彦考案のフランス料理風ディナー饗応はかなりの高評価を博していた。どこから聞こえる声も美味い美味いのオンパレード。高評価大好き系男子である天彦が張り切らない道理はなかった。
だがそんな天にも昇る楽しい時間にもいつか終わりはやってくる。ここは岐阜、尾張ではないのに。とか。
メインを終え残すはスイーツの段階となり宴もたけなわ。給仕役の天彦を呼び止める声がかけられた。
「天、これは何と申す料理じゃ」
「はいゴリマッチョさん。こちらは本満寺最中と申します!」
天彦はあなたの今日のラッキー動物はネコです!のテンションで溌剌明快に答えて見せた。褒めて褒めての催促含みの目線を添えて。
「ほう本満寺最中と申すか。初耳じゃ。そして美味い! このもっちりとした食感はなんじゃ」
「はい。水あめを混ぜたお餅です」
「餅じゃと。これが餅か。……ふむ実に美味い。もっと寄越せ」
「ではこちらをどうぞ」
「おうおう用意のいいことである。褒めて遣わすぞ、天」
「はい。おおきにさんにおじゃりますぅ」
「なんじゃ天。魂消たの、お前は公家の真似事もできるのか」
「はい。この通りよゆーさんにあらしゃりますぅ」
「くはははは! これは傑作、お向かい様もお喜びになられよう」
本多平八郎はご機嫌で言う。だが何を思ったのか“おい天近う寄れ”、威圧感しかない凶器の顔面を寄せてきた。
天彦は興味津々、なんですやろと耳を寄せる。小声でこそこそ。
「じゃが天、彼方ではするなよ。睨まれるぞ。お前の御代では生きにくかろう」
「はい。でもなぜですか。僕睨まれたくないです」
「あれらは儂らを嫌っておるからの。まあなんぞあれば儂が守ってやろう」
「おおきにさん。ですが嫌っておるのですか。なぜですか」
「欲に塗れた無力な能無し共じゃからの。きっと我ら武家に嫉妬しておるのだろう。しかし本物の公家に礼を言われた気分がするの。もう一遍言ってみよ」
「おおきにさんにおじゃりますぅ」
「本当に魂消た」
と、
本多平八郎は天彦の欲しいだろう素直なリアクションを見せてくれる。完全に飯ウマである。そしておまけに親切にも親身な忠告まで添えてくれて、天彦の頭を年相応だが凄味のある表情とは想像もつかない柔和で無邪気な顔で撫でるのだった。
が、それも束の間、周囲の覚えたであろう違和感が次第に拡散伝播していき、発信源の二人だけを置き去りにあっという間に四方八方へと広がっていった。
キン――、キンキンキン、キン――ッ!
遂には座に永久凍土の帳が降りる。けっして刀が打ち合う音ではない。
そして次の瞬間には、なぜだか意味もわからずに対面徳川勢の至るところから悪意の視線を一身に浴びせられる、本来なら天彦の席次にこれまた訳もわからず座らされている是知偽彦の目は死んでいた。あるいは魂も半分口から抜け出てしまっているかもしれないほど白目を剥いて。じんおわ。
これが彼が初めて心にした切実な感情のキラーワードであったとかなかったとか。
よくぞ頑張った是知はさて置いて、そんな誰にとっても息苦しく痛いほどの静けさの中。
意味がまったく理解できない本多平八郎と意味を完璧に理解している給仕彦は互いに見つめ合い、“これなんやろねー”とアイコンタクトを送り合う仲睦まじさを演じている。但し片やまぢの困惑を浮かべて片や鼻ほじの感情で。
ややあって、上座側一列目方向から沈黙を切り裂く声が上がった。すっ。
「そこな給仕、なんと申した。もう一度申してみよ」
「……?」
「平八郎の脇に隠れておるお前じゃ、童」
「あ、はい。本満寺最中におじゃりますぅ。と申しましてございます」
天彦はバレたかの顔のあと、ニヤリと実にいい(悪い)顔を浮かべて嗤うと、要求された通り臆面もなく一言一句同じ言葉を繰り返した。
本多平八郎は“あ、こら”実に気まずい声を上げ天彦を咎めてみるも、けれどまだ事情を理解していない風。しかしこの茶番もこれまで。楽しい時間のお仕舞いと言い換えてもいいだろう。
ここから先は大人の時間。22歳のキッズ平八郎はご退場願いますとばかり、
「おい童、そこへ直れ――!」
徳川家上座上席から非難100の至極正しいクレームが給仕彦直に入れられてお巫山戯の時間のお開きとなった。
満を持して時代を彩る最強プレイヤーの一人が登場である。天彦は「はい」指示通り直る。正面を御免なさいと言いながら真正面におっちん。故実の礼で謝意を示して。
対する天彦を呼びつけた迎賓上座上席の主は、給仕彦の所作には満足の頷きを返すもののそれはそれ。きつく睨みつけて厳に言う。
「本満寺とは誰でも知る五摂家近衛の所縁の寺。言うに事欠きその御本尊を模した最中を食せだと。童、おふざけにしてはいくら何でも悪質であろう。いったい誰の差し金であるのか。違いますかな弾正忠様」
「――で、あるか」
振られた信長は柄にもなく眉根をきゅっと内に寄せ、どこか弱り果てた風な表情で声の主から目を逸らした。そして等閑な感じにそっぽを向いたままお決まりのフレーズを御座形に言うだけにとどめた。
言外に誰かさんに向けて自分で蒔いた種は自分で刈り取れと言い含めているのと反面、言外にお前も儂の苦労を共有せいという意味も含まれているようにも受け取れる。
なにせ信長公、勘の良さだけは誰にも負けない自負があった。そしてその勘がこれから酷い出し物が始まると言っている。そいうこと。
だがそれは天彦を呼びつけた人物も同じであった。
盟友にして盟主である信長のちょっとした機微を具に察知して感づいたのだろう。一瞬にして状況を読み解き天彦へ向ける視線を更に一段階胡乱側へと寄せるのだった。
「己、いや貴殿。ひょっとして貴種か」
さす家、やりおる。
天彦は否とも応とも答えずにじっと呼びつけた主、徳川家康を直視した。
名付けて伊達巻ならぬ近衛最中の巻。
天彦の仕込んだ悪巧みの策は踏み絵の応用策であった。
京都本満寺は正式名称を広宣流布山本願満足寺といい、近衛家建立の誰もが知る近衛家所縁の日蓮宗本山寺である。
そしてこの本満寺は十界大曼荼羅を本尊とする。天彦考案の餅入り最中はこの十界大曼荼羅をモチーフとしていた。故にその名を近衛最中という。むろん天彦が名づけた。たった今朝方。
伊達巻に着想を得たちょっとした遊び心である。だが意味を理解した上で効く者にとっては大そう痺れる品名となっているはずの絶品スイーツ。
意味が理解できずともその名を訊けばリアクションは一択に限られるだろう。天彦を除くその他大勢の人たちにとって近衛最中は恐れ多くて口に運ぶどころか手も付けられない逸品となっていた。
それを証拠に、
「如何におじゃりますやろ。近衛最中のお味さんは。腹黒オジの為人とそっくり中のあんこも真っ黒く染めてありますのん」
「貴、様……」
むろん許可など取っていない。取ろうにも先方が天彦の菊亭を避けているので仕方がない論法で、正当性は天彦にあった。とか。知らんけど。
「なんだと――!」
「童、言葉にした以上、よもや冗談では済まされぬぞ!」
「ええいそこへ直れ、即刻無礼討ちにしてくれるわっ!」
天彦が種明かしをするや座には罵詈雑言が飛び交いにわかに騒然とし始めるそんな中、
「各々方静まられよ。者ども慌てるでない」
さすがのリアル天下人。悪彦の仕掛けにも動じず太くよく通る声を響かせて動揺著しい座と家中の怒りに任せた荒れる感情を鎮めてみせた。
そして、
「貴種殿、お前さんの位階は如何ほどかな」
「おやおやはてはて。位階なんやろ、なんやろ位階」
「……惚けるか。ならばよい。儂は正五位三河守である。三河ではすべての者が腰を折る者。さて童、お前が仮に儂の見込んだ貴種の連枝ならば相応の態度があろう。貴様らの好む官位には敬意をみせよ。それでこそが貴種であろう」
天彦は今日一いい(悪い)顔でニヤリと嗤う。そして扇子を取り出して、
ビシ――ッ!
三河では誰もが腰を折るらしい人物の鼻先目掛けて突き付けた。
場に怒号が飛び交う中、家康はすっと手を上げ家中を鎮める。
「如何」
「お望みさんとあらば思いだそ。はて、そうや信長さん。身共の官位はなんやったかなぁ」
座の全員が突如として話題を振られた最上位上座の人物に視線を預けた。
預けられた人物はほとほとうんざりした顔で、
「お前の官位は従四位下大宰相であろう。もうその辺りで勘弁してやれ狐」
あ。
う。
え。
ごっ。
このとき初めて五十音いろはが時代を先取って活用されたとかされないとか。
いずれにしても当事者家康含めて徳川勢の一列目すべて全員、神速よりも早く天彦の目から逃れるべく、顔ごと俯き視線を外していた。
「そうそう。そないでした三河守さん。こうして御目もじ叶い光栄さんにあらしゃいます。初めまして身共はしがない公卿、日ノ本のほとんどすべてが腰を折ってくれはる従四位下太政官参議、藤原朝臣天彦におじゃりますぅ」
「あ、いや、これは……ご、ご無礼仕りましてござる」
クソウザキッズ彦が降臨していた。
だが天彦とてお遊びでやっているわけではない。全力で面白がってはいるがけっしておふざけではやっていない。いる。
いや違う。本当に大真面目に図ったのだ。真意は那辺におますのんや、と。
「さて三河守さん。その上で近衛最中、食べられますやろか」
「ご免仕る」
家康は秒でもしゃもしゃと最中を貪り食った。美味いもう一個!
やはり偉人。さすが英雄、天下人。ここぞの場面は間違わない。間違えない。
勝手に仕掛けて勝手に負けた。というより思想ではないので平気で嘘が吐けるのだった。……身共のアホ!
が、それを抜きにしてもやはり化け物級の演技力。役者が何枚も上手であり、何をどう仕掛けてもまるで勝てる気がしないのである。まったくビジョンが描けない。
しかし困っていても困ってしまう。これでは真意を測れない。
困った天彦は何を思ったのか思わなかったのか、苦し紛れに口を滑らせてしまうのだった(棒)。
但し棒は棒だが棒読みではなく有りっ丈の感情を込めて稀代の英雄さんにぶつけてみせた。
「本證寺さん。空誓さんと申されたかな。喧しいやろ。身共がおとなしゅうするよう頼んでみましょ」
「……何と申された」
三河が一向一揆に苦しんでいることは誰もが知る歴史の事実。
家康自身は隙のない鉄壁超人でも、彼は身の回りに数々の不安材料と時限爆弾を抱えていた。例えば嫡男然り、あるいは正室然り。
こっすい狐はそこを突く。人の厭な部分をチクチクと突くのは天彦の恥じ入ることのない十八番であった。
「お困りと存じておりましたが。あれ、違いましたん」
「いや、騒音には夢に見るほど苦しまされてござる」
「ほな憂いを晴らすのは宿願やね」
「まさに仰せのとおり」
「任せとき」
「何と。真にそれが叶うならこの三河守、その日より三つ紅葉を崇め奉るとお誓い申し上げてもようござる」
「そうしい。それが皆、は言い過ぎやが少なくとも心ある身共の縁者の幸せにつながるん。あんたさんはどないやろかぁ」
「むろん輪の中に含めていただきたく存じまする。噂の手練手並み、じっくりと拝見させていただきますぞ」
「まあ大船や。とくとご覧あれ」
またぞろ今度は別の意味で空気をひりつかせた天彦は、振り返って手を振った。
「おっま……!」
そして手を振られた人物は実に固そうに拳をきつく握りこみ満身を胴震いに震わせて応じた。
天彦はそんな愛すべき親友に向けて、まさに字面の印象通り(意味は違うが)他力本願寺の御曹司として出番与えてやったん大好きですお願いしますの熱烈ラブコールを送るのであった。
まあ控え目に言ってぶっ殺され一確演出としか菊亭家中には映っていないだろうけど。ちーん。
最後までお読みくださいましてありがとうございます。
どうでしょうか。これ以上はきっと無理かな。ってくらい頑張った心算ですがやはり心算止まりでしょうか。自分評っていっつも甘いし参考になりませんもの。びくびくしながらフォロワー様の評価を待ちます!
結果、かなりの高評価をいただきました。あれ、なんでやろ……?
理由はわかりませんけれど、そういうことなら続けたいと思います。よろしくお願いいたします。