#06 おまっ、ざけっ、ゆるっ、ぶっころ
永禄十二年(1569)八月十日
この年、記録的な酷暑が続いた京の都では、涼を愉しむ風鈴なるガラス細工製品が爆発的な売れ行きを記しそこらかしこで雅な音を奏でていた。
さてこの流行の発信源はどこなのか。流行りに敏感な京都っ子でなくとも興味は尽きない。
どうやら産地は信州信濃国らしい。信濃国といえば甲斐か。いいや今や信州は吉田屋が牛耳る商圏らしいぞ。なんや甲斐もだらしない。とか。
噂が噂を生んで更なる噂を呼び込んだ。現在の都は吉田屋の話題で持ち切りである。
だがそれは表面的な事。京都通のお利巧さんな京の庶民にとってこの流行の仕掛け人が誰であるかなどお見通しであった。
なるほど座は吉田屋が仕切っているのだろう。だが今や吉田屋と言えば○○というレッテルもすっかり張り付きお馴染みである。
おしゃべり好きの噂好きな京雀がぴーちくぱーちく、あることないことおもしろ可笑しく囃したてないはずがない。
「この雅さん、例の参議様の考案だってよ」
「へえ吉田屋さんの風鈴が。仲のおよろしいことで」
「またお狐さんか」
「吉田屋さん、強請られてるんと違うか」
「それな!」
「おい滅多なこと口にしたら舌抜かれるぞ」
「舌で済まんぞ。なんぞ企んでなければええんやがな」
「また荒れるんかなぁ。なんまんだぶなんまんだぶ」
菊亭が新たな試みに着手すると京都中がざわめいた。洛の内外にかかわらず上に下にと垣根なく。菊亭が持ち込む新機軸は今や都の新常識となるほどに。
だがそんな中でもひときわざわめきの感度が強いのは商家と寺社の二団体であろうか。
これら二団体の関連性は非常に高く、いずれの団体も座というこの時代には欠かせない大きな枠組みの中で利を生み出しその利を介して密接に関わり合っているいわば不可分な関係性にあるといっても過言ではない間柄の両団体である。
そんな二団体は常に菊亭に関心のベクトルを向けている。しかし関心という一点を除けば思惑はまったくの別物。真逆といっていいだろう。
片や恵比寿様を崇め奉るように恭しく片や怨敵に呪詛を送りつけるように粘着的に。大極にある正と負の感情で、けれど意識だけは明確に常に五条西洞院に向けているとかいないとか。
天彦は涼しい顔だが、今回新たに設置された家政の政所に配属された家人たちはたまったものではないのである。何しろ好悪の真逆の感情を同じ目線と温度感で応対しなければならないのだから。
そんな中でも一番泣かされているのは政所扶に任命抜擢された樋口与六ではないだろうか。持ち前の気風の良さで凌いではいるが実は彼もあまり気が長い方ではない。大爆発も時間の問題。そんなストレスはたっぷりと溜めていそうな毎日を過ごしている。
猶、京に住まう庶民も菊亭に興味は津々とある。むろん好悪感情は二分するだろうし何なら畏怖の念より恐怖感情の方が勝っていると思われる。何しろ子供を叱る常套句として、“いい子にしていないと喰われるぞ”と使われているほどだから。
だがそれでも庶民生活を愉しませる新機軸を生み出す菊亭への期待感と純然たる興味は尽きないようで、人が三人寄れば話題は決まって三つ紅葉紋で持ち切りだとか。知らんけど。
事実かどうかはさて措き、たしかにやらかしは一周回って笑ってしまうほど多いので、井戸端会議の格好の題材になっているだろうことは想像に難くない。
噂を聞いた天彦的にはきっと“善き哉”と強がるはず。内心では“ほんまはあかんねんで”であろうとも。
そんな京の都が平穏無事なのかと言えばそんなことなく。
今日も今日とて戦国は戦国。あちらこちらでどんぱちどんぱちと戦は尽きず、笑えはしないが笑うしかないほど治安は悪いし民度は低い。
おまけに天彦に言わせれば“精神論とかw”といった風潮が主流であり科学的エビデンスはお亡くなりになられたまま。
つまり人の営みは何を選択しても不安が尽きないはずである。時代背景ももちろんだがそれがお人さんの持つ習性だからして。の、はずなのに……。
「あかん、ぜんぜん売れへん」
保険会社を立ち上げて十日余り。保険がまったく売れなかった。うんともすんとも手応えがない。
商売の成否は初動が八割。すべてに当て嵌まる触れ込みかはわからないがこの京都ではそうだった。なのに売れない。何一つとして。
まさか先行きの不安より菊亭の名の不安の方が勝るとでも。嘘やろ。天彦は震えた。そこはかとなく込み上げてくる怒りと絶望感とで。少しの恐怖心にも苛まれて。
およそ一年がかりで仕込んできた策だったのに。損害保険なら確実に勝てる勝負だったはずなのに。射干党には途轍もない苦労をかけさせてしまったのに。佐吉も担当役員として責任を感じて凹んでしまっているし。なんという不運。何たる失態。
この失敗を不運で片付けてしまってよいものかは今後詳細な検証が必要だが今は構っていられない。
商売も大切だが天彦にも本分がある。家業は公家。得意科目は政略である。
まずは今まさに向かっているこれからの面会が大事。ということで天彦は当初の計画どおり狙った獲物さんの元へと向かっていた。
向かう先は公家町。そして一万坪の敷地に建つ大邸宅旧九条邸の前にひっそり小ぢんまりと佇む大炊御門屋敷である。
「イルダ、地味働きをふいにしてしもて堪忍な」
「いいよ別に。ラウラの担当だったし。でも珍しいね、天ちゃんが読み違えるなんて。ひょっとして神通力弱まっちゃった?」
「そんなもん端からないさんやけど、やとしたら見限るか」
「あはは、まさかだよ。でも拗ねちゃってきゃわいっ」
「触んなっ」
と、感情的に声を荒げると止まるどころか顔中体中を触りたくる手が更に二本追加で投入される不思議。やめろし。
「コンスエラ、ちょい待ち」
天彦は手が荒れてるといって腰にぶら下げている巾着から愛用の万能肌荒れクリームを取り出し、手ずからさすさすコンスエラの荒れた手に揉み込んでやる。
「天ちゃんてほんとマメよね。一家に一人欲しいわ、お婿さんにくる?」
「あははは、年一笑ける」
「おいコラ、今の言葉のいったいどこにギャグ要素があった」
「やめとけ。訊いたら泣くぞ」
「ひどっ」
家人総出で必死の保険販売窓口に取り掛かっていて人手不足。だが護衛の手は緩められないとの申し出もあり射干党の手を借りたら雰囲気がゆるゆるになってしまう。
尤も射干党投入の段階で誰が来るかなどお察しであり、企画した段階で想定されたことである。想定していなかったのだろう氏郷は本気で身体を震わせているが。
「やめんか、いつまでふざけるつもりだ」
「ん……、一生?」
「だね。ニンニン」
「貴殿らお役目をいったい何と心得るか」
「ダルいよね」
「ん、クソだるい」
「なっ、おのれぇ……!」
「うぅちゃん、なに?」
「うっちー。おのれ、なんだろ?」
やめとき。
天彦の言葉で氏郷はすぐさま矛を収めた。
だが天彦が仲裁せずとも大事には至っていない。吹っ掛けた側が理性的な氏郷なのと女性だから、といいたいところだがそんな意識は一ミリもない。単純に郎党序列一位の射干党だから。
射干党の地位は日に日に高まっていて、実績もさることながら貢献度においても申し分なく、今や誰の目にも明らかなとおり押しも押されもせぬ菊亭郎党序列の一位にまで上り詰めていた。
だがこのジェンダー問題。なにも菊亭が特別なわけではなく、戦国室町におけるジェンダー意識の壁が元からなかったからである。
意外にも未来の現代よりずっと女性の社会進出並びに地位は高かった。
天彦はそんな地位に胡坐を掻きまくるイルダと更に輪をかけて図に乗る鼻高コンスエラを忌々しく思いながらも、実際はこれも味か。もうほとんど矯正は諦めている。
天彦はそんな鼻高婆さんを捕まえてつぶやく。
「婆さんや」
「だれ!? ダレ婆さん。まぢじゃなくっても次も言ったらコロスから」
「うちも治安悪いなぁ。そやけど想定外すぎたん」
「天ちゃんが乱してんだけど。何が?」
「全部や。傘が売れたんも風鈴が大流行したんも、保険が売れへんのも全部」
「ふーん。だったら見立てが甘いんじゃん」
「ぐはっ」
言いたいことを思ったまま言える時代。ほんまか、ほんまなんか。
そんな主従関係は厭だ。依然として様式の美しさに勝る正義を見つけ出せていないそんな天彦だからこそ、この形式が新たな時代の正解だと言われても断固抗う所存であった。
「でも天ちゃんは偉いね」
「何がや」
「だってそうじゃん。普通はうちらの失態を叱るでしょ。あれだけ意図して調べさせたんだからフォーマットは持ってたんだろうしね」
「期待外れか」
「まさか。逆だよ。終始一貫して最後は絶対に勝つでしょ、天ちゃん」
「身共に一貫性を求められても困るん。そういうのは正義中毒なお人さんに任せてある」
「照れてきゃわ。ラウラよく言ってたわぁ。あの時は一ミリもわからなかったけど今ならわかるかな。そのブサキモ可愛さ」
「……」
かわいいと付ければ何でも許されるという風潮、氏ね!
貝や、ミル貝になるんや。固く口を閉ざしこの阿呆を黙殺するんや。
天彦はぷるぷる震えながら歩を早めた。
因みに天彦が保険事業を手掛けようと考えた最大の要因として、平均寿命のトリックに気づいたからという理由があった。
室町後期の平均寿命は30才前後とされている。この寿命ではとてもではないが保険商売など成立しないように思われる。仮に成立しても売掛が高すぎてやはり成立しないだろう。ところが15才以降の余命を平均化してみると数値はまるで別物となることが判明した。激変するのだ。するとつまり適否の仮説も違ってくることになるのである。
統計を取ってみてわかったことだが成人寿命が短かったわけではなく、10才未満の児童死亡率が突き抜けて高いことが判明したのである。
その他にも出生率5人以上だとかの事実もわかった。つまりそれだけ子供が亡くなったことを意味している。一般庶民にそれだけの子を養育できるゆとりはないので。
そして射干党が拾い集めた膨大なデータは15才以上の平均余命を45才とはじき出していた。むろんレイヤーと居住地域で開きはあるが出鱈目には違わない。
よって即ち15才まで生き延びれば平均60才まで生きられるという検証結果が出たのである。これなら保険事業は十分に成立した。故の着手だったのである。
撤退を決心している今となってはだからなんだという話だが、天彦としては声を大にして訴えたかった。身共は間違えてはいないのだと。この調査には述べ一万人もの調査人員が投入されているのだと。
地味に痛いし泣けてくるじんおわ。
「どんな地雷!? 傘と風鈴売れるんやったら保険売れろし!」
天彦は唐突に足をとめ地団太を踏んで絶叫した。すれ違う通行人が奇異の視線をむけるほどに。むろん同行の身内も。
「若とのさん!? 突然大きい声出さはったらビックリしますやろ」
「あ、うん。堪忍さん」
「某はかまいませんけど新顔さんが驚いたはります」
「ああ、今日からか。どこの伝手や」
「はい。家の本家筋の紹介です」
「長野か。ええんか」
「……はい。いろいろありましたけど全部水に流そうと思て」
「そらええこっちゃ、そうしい」
「はい! 紹介してもよろしいですか」
「ええに決まってるやん。お雪ちゃんの御家来さんなら身共の家来も同然や。嬉しいさんやなぁ」
「はい! もうむちゃんこ嬉しいです。おい藤蔵、若とのさんにご挨拶しなさい。若とのさんこいつが藤蔵です」
雪之丞は得意満面、初めて手に入れた直属の家来を自慢げに披露した。
「はい。お初にお目にかかります若殿様。可児土豪平岡頼俊の嫡子、藤蔵と申します。何卒お引き立てください」
「うん。朱雀のためにようしたって」
「はい」
藤蔵は中々武張った顔をした、ちょっと表情に苦労の後が覗えるどちらかと言うとお上品な性質の人物には見えなかった。
適否や善悪ではなくと前置きした上で、当たる方の厭な予感が疼くのだ。即ち天彦なら家来には選ばないタイプの人物であった。けれど雪之丞がこれほど喜んでいるのに水は差せない。天彦は快く挨拶を受け入れることにした。
年のころは天彦たちと同じくらいか。つまり十歳前後の児童である。何かあってもまだ十分矯正には間に合うと判断して。
「どないですか」
「お雪ちゃん次第やな。気張りや」
「はい! がんばります」
あの雪之丞にも家来ができたのだ。感慨も一入である。
だがこれで今朝方からの妙に浮ついた雪之丞の気配の変調理由に納得できた。
大望の家来ができたのだ。それは雪之丞も張り切るはず。
新人が初出仕してくる今朝方からそわそわ。昨夜はきっとよく寝付けず、顔合わせ以降はまるで子猫をかまう親猫のようにずっと気にかけて、あれやこれやと忠告している姿が天彦にはまるで見たように想像できてしまうから無性に可笑しかった。
到着。
緩んだ頬に喝を入れる。ここから先は公卿の戦場。
何も戦が戦場にだけあると思うなの感情で大炊御門家の門を叩く。
◇
その僅か十分後、
「コロス」
「義弟、そう熱くなるな。話せばわかる」
「お、の、れぇ、氏郷、殺ってしまえ! 粉微塵に、塵も残したらあかんで」
「はっ」
が、
「アホなことを。氏郷、お前も即座に応じようとすな!」
まさかの正論を雪之丞から突き付けられ氏郷が正気を取り戻した。
だが天彦の怒りは収まらない。ならば身共に得物を貸せと氏郷から腰の物を奪い取ろうと暴れ始めた。むちゃくちゃである。
今後を見据えた戦略的同盟関係を結ぼうと参ったはずが。しかも東宮女房阿茶局の仲介なのに。全部ご破算。
八面玲瓏とは。
「お前、お前だけは何があっても絶対に許さへんからなァ!」
「あははは。聞きしに勝る姉想い。だが本日は日柄が悪いようであるな。義理弟よ、日を改めて麿から参ろう」
誰かあいつを黙らせろぉおおおおおおおおおおおおおおおおお――!
凄まじい絶叫が大炊御門邸に鳴り響くのであった。
◇
「若とのさん、どないしはったんですか」
「ぐぬぅぅぅ、返す返すも腸が煮えくり返る。訊いてお雪ちゃんっ!」
「いや、もうええですわ」
「訊いて」
「あ、ほな。ちょっとだけ」
「全部訊いて」
「ほなそれで」
「うん。あいつ撫子をくれと抜かしよったんや」
知ってた。みーんな知ってた。
やれよ、もう。だいいちお前のと違うやろ。お前、むちゃくちゃ避けられとるやんけ。いい加減気づけよ。
ほんでやっぱし意図せず状況を悪化させてしまうお得意の伝統芸を炸裂させとるやないか。アホなんアホやん。
雪之丞の目は雄弁に物語る。だが言語化すると拗れてウザい。100%ダル絡みされること請け負いであり、撫子姫好きすぎ虫が出た天彦など放置一択に限っていたのである。他の家来がそうするように。
だが心優しい雪之丞は構ってやる。なんやかんやと言いながらも本当に心の根優しいいい子な雪之丞は大好きな若とのさんを見捨てない。
ずっとこれまで二人きりでそうしてきたように。これからもずっとそうであるように。
「撫子姫もたいへんですね」
「ほんまやで! あんなけったいで可怪しな虫がひっついてきて。なんかええ害虫駆除の方法ないやろか。お雪ちゃん、一緒に考えて」
「若とのさんってしょっちゅうアホですけど、ときたまえげつないくらいオニどアホにならはるときありますよね。虫が騒ぐ病気ですか」
「あ?」
「参議経頼さん、某の目ぇにはかなりカッコいい御方やと見えましたけど。お血筋も間違いのない名門ですし」
「やめて、大炊御門なんか三流やんか」
「清華家ですけど」
「清華家なんか知るか。あんなもん格下や」
「それ否定してもよろしいんですか」
「ええさん」
「はあ。ほな知りません」
「なんやその目は。さいぜんから可怪しい思うてた。さては腐っとるな、その目ぇさん。帰ったら取り換え」
「目ぇって替えられますのん」
「替えられるやろ。知らんけど。替えられんでも要らんやろ、そんな腐った目ぇさんやったら」
「へー(棒)」
「なんなんそのお顔さん。腹立つわぁ」
「ほんまですねのお顔ですけど」
「ほな言葉にし」
「ホンマデスネー」
「片言!?」
阿保彦はアホなままのテンションで定宿陣屋に帰り着いた。
「帰ったで」
と、そこには帰り支度を整えた旅装束の野蘭一行がいた。おそらく待っていたのだろう。天彦の帰宅を。
すぐに察した天彦はつかつか歩み寄り、怒っていたことなどすっかり忘れて自分なりの親しみを表す表情を差し向けて言葉をかける。
「長いことおおきにさん。ほんま世話になったん。気ぃつけて帰るんやで」
「はい。いいえ、滅相もなく勿体ないお言葉を頂戴しまして恐縮にございます。何のお役にも立てず大恩ある菊亭様には合わせる顔もございません」
「何を申すん。野蘭が参ってくれただけで家のお人さんらはえらい張り切ったはったん。参ってくれた。それが何よりの合力やで」
「返す返すも勿体ないお言葉を。ですが有難く頂戴し片岡の家宝に致します」
「ははは、大袈裟な。でもおおきにさん。ほななまた逢う日まで達者でな」
「はい。菊亭さまもご自愛ください。では御前失礼いたします」
片岡野蘭が去っていった。
「ええんか、且元」
「はい。今で十二分に温情を頂戴しておりますれば、これ以上は」
「さよか」
且元は巖としてローテーションを維持すると言ってきかなかった。自分事を優先した方がいいに決まっているのだが、義理堅い且元らしいと笑って流す。
さて野蘭へ送った天彦の言葉は珍しく99本心からの言葉である。
野蘭が世話をしてくれたから菊亭の家人用人は表情が変わっていた。野蘭に気張れと激励され奮起しない菊亭の家人はいない。彼女の血反吐を吐くほどの壮絶な人生を知っている菊亭の者なら絶対にガンバル。そういうこと。
そして野蘭は片岡家の慶事も報告してくれた。なんと領地が二倍以上になったのだとか。
織田軍が恙なく通過する世話をしたお駄賃と称して、ぽんと城を四つと荘園を七つ、地続きでくれてやると仰せになったらしかった。石高は優に万石到達したとのこと。
さすがの女城主も驚きを通り越して呆れていた。むろん報告を受けた天彦も。いったいどれだけ太っ腹なのか。魔王のあまりの気風のよさとその凄まじい強さについ裏を勘繰ってしまうほどの都合の良さを感じてしまった。……ちゃうよね?
どうせ天彦のお願い事を聞き届けてくれる神仏はいない。よって開き直って割り切って笑って儲かってよかったやんと笑い飛ばした。
これにて正式に片岡家の諸々の厄介ごとはすべて整理されたとのこと。まさしく慶事。
そして片岡家はこれにて一介の国人領主から万石取りの戦国大名へとランクアップを果たした。
家来の慶事続きの報告に主家である天彦としても身が引き締まる思いだった。
【文中補足・人物】
1、平岡藤蔵頼勝(ひらおかふじぞうかつより、数え10)
岐阜可児の国人の息子。諸国を流浪していた浪人。秀吉に才能を見出され豊臣家に出仕する。
秀吉の甥小早川秀秋の家老として知られ、関ヶ原では秀秋に寝返りを勧めた張本人。秀秋の乱心に多くが離れていく中最後まで忠義を尽くしたとされる。
最後までお読みいただきましてありがとうございます。誤字報告、本当に感謝しております。ブクマ・高評価も創作にたいへん活力となっております。併せてありがとうございます。
さていかがでしたか。銭儲けも策略もどっちも転んで滑ってすってんころりん。なっちゃいました。どないしよ誰か助けてぇあわわわ。でも恩人は大儲けしているようなので最低限のハードルはクリアできているのでしょうか。妙案あれば感想欄にて対戦お待ちしております。
当作品はフォロワーの皆様の寛容なお気持ちと有り余る愛情で成り立っております。今後ともよろしくお願いいたします。