↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小悪魔マユ  作者: 大橋むつお
80/118

80・期間限定の恋人・12

小悪魔マユ・80

『期間限定の恋人・12』    




 デスクトップのファイルに暗証番号を入れなければ開けないものが一つだけあった。

 それが、まさにその8桁であった……。


 8桁の数字を入れエンターキーを押した……数秒して父が画像になって現れた。


――ハハ、見つかってしまったな。もう見つかった……やっと見つかった……どっちだろう?

 多分やっとだと思う。

 美智子のことだから、わたしの部屋はしばらく手を付けないで、そのままにしているんじゃないかと思ってる。

 だから、これを見つけたということは、わたしの部屋を他の目的に使う必要が出てきたことだと思う。

 どうだい、それも美優が必要になったからだと……当たったかな?

 美優は自分の部屋を持っているから、この部屋の使い道は……お母さんを助けて店の手伝い。

 そして、そんな美優を助けてくれる素敵な男性が見つかったから。お父さんは、そう思っている。

 美優は、一人っ子で優しい子だから、きっとそうだと思っているよ。もし違っていたら、腹を抱えて笑ってくれ。

 店は、繁盛しているだろう。美智子はバブル真っ最中でも下手に仕事を広げたりはしなかった。

 堅実に店を守り、マスコミ関係の仕事も確実に取り込んでいる。

 HIKARIプロの事務所移転と拡張にも目を付けている。わたしも、あそこは先物買いとしては狙い目だと思う。

 ヒカリミツルはビートたけしと同じくらい奇行の多い人だが、しっかりした経営戦略を持っている。

 彼は、芸能界……古いなあ、エンタテイメントの世界に、新しいスタイルを提示してくるだろう。

 話が、仕事っぽくていけない。

 一つ心配事……お父さんの家系はガンに罹る者が多い。親父も祖父さんもそうだった。

 まさか三代続くとは思わなかった。お父さんの数少ない、でも大きな見込み違いだった。

 美優がお母さんの血を多く受け継いでいることを願っているよ。

 でも、検診はしっかり受けてな……ええと、このドロシーの胸像の下のロゴに暗証番号……。

 ハハ、ばかだな。見つけたから、これを見てるんだよね。

 ドロシーのお下げを両方いっしょに四回叩くと……ほら、『オーバーザレインボー』が聞こえる。

 これを見ている美優とお母さんが、虹の彼方に着いていることを願っているよ。

 あ、もし、美優の彼がこれを一緒に見ていたら……二人のことをよろしく――


 そこで、父はバイバイと手を振った。そして……『オーバーザレインボー』がステレオになった。


「こんな男で……こんな事情で申し訳ありません」

 黒羽が、ドロシーの胸像を手に、二人の後ろにたっていた。

「英二さん……」

「一応、声はかけたんですけど、無断ですみません。お父さん、素敵な人だったんですね」

「あ……この部屋、黒羽さんに使っていただこうと思って、美優といっしょに片づけていて」

「今度の新曲、勝負なんでしょ!?」

「うん。ありがたく使わせてもらうよ、今週いっぱい。しかし、本当にお父さんは先見の明だな」

「夢ばっかり、思いこみの強い人だったから」

「いいえ、このお店のことも、うちの事務所のことも、ちゃんと見通していらっしゃる。それに、なにより、病気のこと、ちゃんと気にかけていらっしゃって、その甲斐あって、美優ちゃんも、早期治療でこんなに元気になったじゃないか」

「ハハ、そうよね。お父さん大したもんだ。ね、お母さん!」

「ハハ、そうよね」

 三人の明るい笑い声が部屋に満ちた。


 美優の命は、あと六日と三十分……にしちゃいけない。美優の体の中でマユは決心した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。