63・AKR47・7
小悪魔マユ・63
『AKR47・7』
不敵で無責任な高笑いを残して、デーモン先生は消えてしまった。
足もとではポチが嬉しそうにお座りしている……。
次に気がつくと目線が低くなっている。
目の前にあるのがAKR47のスタジオやら、事務所が入っているビルだということが分かったが、いやにデカイ。トットッとビルの前の玄関に行って、ガラスに姿を映してみた。
「え……うそ!?」
「かわいい~!!」
二番目の声とともに、マユは抱き上げられた。
「この子、豆柴だよね?」
AKR最年長の服部八重の声だった。
「飼い犬でしょうね、どこから来たのかしら?」
この声は、最年少の矢頭エモである。
――顔近づけんなよ、こら、スリスリなんかすんな!
そう言っても犬語なので、二人には分からない。
「あ、首輪の下に、名札……ポチっていうんだ」
「でも、この子、女の子みたいですよ……」
――こらあ、どこ見てんだ!
というわけで、豆柴のポチとして人間界にもどされたマユは、迷子犬として、事務所の受付に預けられた、
段ボールの箱に入れられ、子犬用のドッグフードと、水が与えられた。
こんなもの……と、思ったけれど、豆柴の子犬はすぐにお腹が空く。ドッグフードがご馳走に見えてきた……と、思ったら、シッポを振りながらがっついていた。その姿がかわいいのだろう、受付前にきた人たち、休日なので、ほとんどAKRが所属するHIKARIプロの人間、それも早朝からレッスンのあるAKRのメンバーが多かった。
「こいつ、ウンコしたがってるよ」
出勤してきた黒羽ディレクターが言った。
「やだ、ウンコですか!?」
受付の女の子が、もろイヤな顔をした。
「仕付けられてるようだから、ここじゃやらないよ。でも、このソワソワ感、早くさせてやんないともらしちゃうよ……」
豆柴のあわれさ、食べたらすぐに胃腸が動き出し、もよおしてしまう。黒羽ディレクターは、管理人室から古新聞とレジ袋をもらってきて、ポチになったマユを、ビルの前の歩道に連れて行った。
街路樹の植え込みに下ろされた。
「さあ、ここなら落ち着いて用が足せるだろう。オレあんまり時間無いから、早くすませろよな」
と、言われても犬になって三十分あまり、意識がついてこない。出るものが出てこない……。
そこに、早朝練習にジョギングをやっていたリーダーの大石クララと、マユの姿をした拓美がやってきた。
――ちょっと、拓美!
「え……!」
拓美が声を出して驚いた。無理もない、魔界で補講を受けていると思っていたマユが豆柴のポチになって、植え込みでしゃがんでいるのだ。
「お早うございます」
クララといっしょに、黒羽に挨拶しながら拓美は考えた。
「この子、わたしが飼っているポチなんです。いつも決まったところでないとおトイレできない子だから、わたし、やります」
「頼むよ、でも、犬連れて来ちゃいけないなあ」
「すみません。わたしも気がつかなかったんですけど、着いてきちゃったんですね。気をつけます」
黒羽は、一言ありげだったけど忙しいのだろう、古新聞とレジ袋を渡すと、ビルの中に消えた。
「この子、女子トイレに連れていってあげたほうがいいんじゃない?」
クララは、分かっているようだった……。




