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小悪魔マユ  作者: 大橋むつお
63/118

63・AKR47・7

小悪魔マユ・63

『AKR47・7』   



 不敵で無責任な高笑いを残して、デーモン先生は消えてしまった。


 足もとではポチが嬉しそうにお座りしている……。


 次に気がつくと目線が低くなっている。


 目の前にあるのがAKR47のスタジオやら、事務所が入っているビルだということが分かったが、いやにデカイ。トットッとビルの前の玄関に行って、ガラスに姿を映してみた。



「え……うそ!?」

「かわいい~!!」



 二番目の声とともに、マユは抱き上げられた。

「この子、豆柴だよね?」

 AKR最年長の服部八重の声だった。

「飼い犬でしょうね、どこから来たのかしら?」

 この声は、最年少の矢頭エモである。

――顔近づけんなよ、こら、スリスリなんかすんな!

 そう言っても犬語なので、二人には分からない。

「あ、首輪の下に、名札……ポチっていうんだ」

「でも、この子、女の子みたいですよ……」

――こらあ、どこ見てんだ!


 というわけで、豆柴のポチとして人間界にもどされたマユは、迷子犬として、事務所の受付に預けられた、

 段ボールの箱に入れられ、子犬用のドッグフードと、水が与えられた。

 こんなもの……と、思ったけれど、豆柴の子犬はすぐにお腹が空く。ドッグフードがご馳走に見えてきた……と、思ったら、シッポを振りながらがっついていた。その姿がかわいいのだろう、受付前にきた人たち、休日なので、ほとんどAKRが所属するHIKARIプロの人間、それも早朝からレッスンのあるAKRのメンバーが多かった。


「こいつ、ウンコしたがってるよ」

 出勤してきた黒羽ディレクターが言った。

「やだ、ウンコですか!?」

 受付の女の子が、もろイヤな顔をした。

「仕付けられてるようだから、ここじゃやらないよ。でも、このソワソワ感、早くさせてやんないともらしちゃうよ……」


 豆柴のあわれさ、食べたらすぐに胃腸が動き出し、もよおしてしまう。黒羽ディレクターは、管理人室から古新聞とレジ袋をもらってきて、ポチになったマユを、ビルの前の歩道に連れて行った。

 街路樹の植え込みに下ろされた。

「さあ、ここなら落ち着いて用が足せるだろう。オレあんまり時間無いから、早くすませろよな」

 と、言われても犬になって三十分あまり、意識がついてこない。出るものが出てこない……。

 

 そこに、早朝練習にジョギングをやっていたリーダーの大石クララと、マユの姿をした拓美がやってきた。

――ちょっと、拓美!

「え……!」

 拓美が声を出して驚いた。無理もない、魔界で補講を受けていると思っていたマユが豆柴のポチになって、植え込みでしゃがんでいるのだ。

「お早うございます」

 クララといっしょに、黒羽に挨拶しながら拓美は考えた。

「この子、わたしが飼っているポチなんです。いつも決まったところでないとおトイレできない子だから、わたし、やります」

「頼むよ、でも、犬連れて来ちゃいけないなあ」

「すみません。わたしも気がつかなかったんですけど、着いてきちゃったんですね。気をつけます」

 黒羽は、一言ありげだったけど忙しいのだろう、古新聞とレジ袋を渡すと、ビルの中に消えた。

「この子、女子トイレに連れていってあげたほうがいいんじゃない?」


 クララは、分かっているようだった……。




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