59・トイレットペーパー事件・3
小悪魔マユ・59
『トイレットペーパー事件・3』
そう考えているうちに大量のトイレットペーパーのことなどすっかりマユは忘れてしまった。
次の休み時間、その大量のトイレットペーパーが発見され、問題になった。
他の生徒たちが、前の休み時間に予鈴が鳴って、トイレからルリ子たちが、慌てて飛び出してきたところを目撃していた。ルリ子たちは、先生に呼び出され質問された。
「おまえたちか、あんなにトイレットペーパーを散らかしたのは!?」
「いや、あれは……」
美紀が説明しようとした……。
トイレットペーパーを使おうとして、包装紙を剥いてホルダーにかけ、用を足すと高速でホルダーが回り始め、トイレットペーパーが吹っ飛んだかと思うと、ホルダーの回転がやまずに次から次へと新しいトイレットペーパーが増殖していき、あっと言う間に個室に一杯になり、美紀は大量のトイレットペーパーごと個室から吐き出された……。
真実ではあるが、だれも信じてはくれなかった。
目の当たりにしたルリ子も、そのとおりだとは思ったが説明はできない。マユがトイレットペーパーを投げ入れてから、少し間があったし、だいいち、トイレットペーパーを示して、「マユ、それ……」と、促したのはルリ子自身である。
涙目になって説明をくりかえす美紀を制して、ルリ子が言った。
「わたしが、始末します」
六時間目が始まっても、ルリ子は教室にもどってこなかった。
「あたしたちにも手伝わせて」
そう言う美紀たち。
「さっさと、教室にもどんなさいよ。後始末は、あたし一人で十分だから」
で、ルリ子一人、トイレに残り、散らばったトイレットペーパーの後始末をやっていたのだ。
マユは、自然に入ってくる美紀たちの思念から、それを感じた。
マユは、動揺した。
無意識とは言え、自分がやったことである。ちょいワルとはいえ、ルリ子はリーダーとして責任を感じて、一人で後始末……マユは、ルリ子を見なおすとともに、後悔した。
あのとき魔法で、トイレットペーパーをもとにもどしてやったら、こんなことにはならなかった。フェアリーテールの影響かもしれなかった。トイレットペーパーを投げ入れてやれと指示したのは、ルリ子である。しかし小悪魔であるマユがやらなければ絶対こんなことにはならなかった。
十分ほどして、ルリ子がもどってきた。
なにか行き違いがあったようで、六時間目の島田先生は、ルリ子が遅れてきた理由を知らない。
「どこ行ってたんだ、吉良!」
島田先生は、頭ごなしにルリ子を叱った。
普段から、島田先生はルリ子たちをこころよく思っていない。頭ごなしは一分ほど続いた。マユは混乱して、やっと島田先生の怒りを収める魔法をかけようとしたところ、ルリ子は、ポケットから、生活指導の指導票を出して、島田先生も、やっと事情を飲み込んだ。
――しかし、もともとは自分の不始末じゃないか。
島田先生が、そう追い打ちをかけるのを、やっとマユは魔法で止めた。
――マユ、あんた、なんか絡んでんの?
魔法に気づいたオチコボレ天使、雅部利恵の思念が突き刺さってきた……。




