60・AKR47・4
小悪魔マユ・60
『AKR47・4』
――マユ、あんた、なんか絡んでんの?
魔法に気づいたオチコボレ天使、雅部利恵の思念が突き刺さってきた……。
――あんたには、関係ないでしょ。
この、木で鼻を括ったような応えが悪かったのかもしれない。
利恵とは、いままで、いろんなことでぶつかってきた。校長先生のカツラ事件。片岡先生の恋物語。知井子の件では、意図しなかったとは言え、マユの方が一歩リードしたカタチになっている。
天使と小悪魔。元々が違う。それぞれ監督の大天使や、悪魔から、あまり関わり合いにならないようにと注意もうけていた。
利恵は、自分で探りを入れて対抗することにした。で……。
――ルリ子たち、カワイソー……と思ってしまった。
フェアリーテールの世界のことなど、利恵は、まるで理解していなかったので、トイレットペーパー事件は、単なるマユの意地悪であると思ってしまった。そして、AKR47での知井子とマユの成功もマユの魔法がからんでいると誤解した。
誤解と無理解は放課後になって決定的になってしまった。
「さて、どこ行こうか……」
ハチ公前で、ルリ子が呟いた。
学校でのウザイことを忘れるために、とりあえず、学校から一番近い渋谷にやってきた。
渋谷の駅は、大げさにいえば谷底で、どこへ向かっても上り坂のようになっている。その上り坂がルリ子には気に入っている。Tデパートにテナントとして、ルリ子の父が出資しているブティックがあるので、そこで私服に着替えている。
「あんまり悩んでると、家出少女みたいだよ」
美紀が、モテカワ系のナリで続けた。
「そうだね……」
と、応えたものの、ルリ子は決めかねた。
「ねえ、よかったらお茶でもどうよ」
遊びなれた感じの二人組のニイチャンが声をかけてきた。ルリ子は視野の端に入れただけでシカトした。
「ヒマしてんだろ。だったら、お互いヒマそうなコンビ同士だからさ、いいと思わない」
「あんたたちの相手してるほどヒマじゃないの」
美紀が、軽くイナシた。
「とりあえず、北」
ルリ子が言った。
「グーーーーーーーーーーーーーゼン、オレたちも北!」
背の高いほうのニイチャン。
「きた……ないのあんたたち」
「ハ……?」
デコボコニイチャンがそろって声をあげた。
「汚いのあんたたち」
「そういうこと」
ルリ子と美紀が、横顔で応える。
「なんだと……!」
背高ニイチャンがルリ子の肩に手をかけた。
ニイチャンは一瞬で天地がひっくり返った。
「気をつけてね、ホコリがたつでしょ……」
ルリ子は、こう見えても、合気道初段の腕である。ちかごろ稽古はサボっていたが、きれいにきまったので、少し気分がよくなった。
デコボコニイチャンがボコボコニイチャンになって、ルリ子と美紀の足は、駅の西北のバスケ通りに向かった。
バスケ通りは、センター街の一部であるが、チーマー・ガングロ・家出少女などを連想させてイメージが悪いので、地元の商店会でつけた名前で、べつにバスケットボールができるわけでもなく。ルリ子としては、あまり気の向くところではない。
しかし、ここで思わぬものに出会ってしまった。マックの前で人だかり。人だかりは、そのまま北に進み、突き当たって西へ。井の頭通り手前の三叉路のところに、荷台がプチステージになったトラックが止まっていて。人だかりの中心から五人の女の子たちがステージに上がった。
「あ、オモクロだ!」
「なに、それ?」
ルリ子はオモクロを知らない。
「オモシロクローバー。いま売り出し中のアイドルグループ」
ステージの上でミニコンサートが始まった。名前の通り、コントを交えた面白系の歌と踊りで二十分ほど。
「オモシロクローバー、これからもよろしくお願いしま~す!」
MCの子が締めくくった。
いつものルリ子なら、こんなアイドルとも芸人ともつかないハンパなものは三分とは見ていられないのだが、このときは、つい最後まで観てしまった。
これが、天使の利恵が仕組んだものだとは、ルリ子も美紀も気づかなかった……。




