56・フェアリーテール・30
小悪魔マユ・56
『フェアリーテール・30』
ドングリの中味は、こまかい電子部品で一杯……それは高性能盗聴器だった。
「こんなものが、あちこちにあるようじゃねえ……」
「こんなもの、だれが仕掛けたのかしら……?」
ドロシーは、不安げに周りを見渡した。
「……まだ、この家の中に五つはありますね」
マユが、神経を集中させて答えた。
「いいえ、十五個よ」
「分かってて、ほうっとくんですか」
「ええ、だれが仕掛けたかということも含めてね」
西の魔女は、それ以上は答えてはくれなかった。
庭の草むしりと薪割りが終わったライオンさんたちが戻ってくると、西の魔女は、あっさりとホウキをくれた。ライオンさんたちがランチを食べている間に、西の魔女は薬を調合している。
「困ったときに、お飲みなさい」
西の魔女は、そう言って二つの薬をくれた。
「どういう時に使うんですか?」
ドロシーは、不思議そうに二つの薬ビンを見つめた。
「困ったときよ」
西の魔女は、ニヤリと笑って、そう答えるだけだった。
マユは、片方の薬の効き目は分かったが、もう一方はまるで分からなかった。
「じゃ、お世話になりました」
ドロシーは、そう言うとホウキを肩にかついで、お礼を言った。
「この家が見えなくなるところまで行ったらホウキで空を飛んでいけるから。他のみんなは、マユの飛行機ででも行くといいわ。いいこと、日が暮れる前にオズの魔法使いにホウキを渡すのよ」
「はい!」
マユとドロシーは、小学生みたく元気に声をそろえてお返事をした。
――こんな素直に返事ができたなんて、何年ぶり……いや、生まれて初めてかも……。
短い時間だったけど、マユは、不思議ななつかしさを西の魔女に感じた。
そして……西の魔女に会えるのは、もう、これで最後のような気がした。
イバラの森までは、WEST48の子たちが、歌いながら送ってくれた。
「じゃ、わたしたちは、ここで」
リーダーのナミカタが、笑顔で挨拶してくれる。
「どうもありがとう、西の魔女さんによろしく!」
そういうと、ドロシーはホウキにまたがり、他のみんなは、マユがストローハットを変身させた飛行機に乗って飛んでいった。ライオンさんはハングライダーを使わずに、飛行機に便乗していた。
「教育的配慮」
などと、ライオンさんは言ったけど、どうやら、ドロシーに言葉がかけづらいためのようだ。
ライオンさんたちは、ドロシーがオズの魔法使いに会えば、全てが終わると思っているようだ。
――今度のドロシーは、そんな簡単にはいかないわ。
マユは、心の中でそう呟いた。
「あの子行ったわよ。最初のドロシーだったけど、最後のドロシーになるでしょうね。わたしにとっても……あなたにとっても」
西の魔女が、そう言うと、家の中の十五個の高性能盗聴器がいっせいに煙を吐いて壊れてしまった……。




