47・フェアリーテール・21
小悪魔マユ・47
『フェアリーテール・21』
気安く引き受けたミファであったが、ロックオンまで二時間もかかるとは思わなかった。
R2ボタンを押している右手の人差し指がケイレンをおこしかけている……。
ロックオンして程なく、サンチャゴじいちゃんのボートは、大きな島の浅瀬で停まった。
小さな碇を投げ入れると、身軽にボートから飛び降りて、膝まで水に漬かりながら砂浜に上がっていっく。
遅れて浅瀬に着くと、ミファもサンチャゴじいちゃんを追いかけた。
サンチャゴじいちゃんは砂浜からブッシュの中に進み、見えなくなった。
――▼マークが、まだ点いているでしょ。ロックオンを続けて。
マユが、ミファの心の中で言った。
「サンチャゴじいちゃん、なんだか身軽になってたよ……」
――ってか、若返ったみたい。背筋は伸びてるし、あの身のこなしは……どうやら、ここからはドキュメンタリーじゃないみたいね。
二十分ほど行くとブッシュをぬけて、草原に出た。
▼マークの下にいるのは……海兵隊のフル装備に身を固めた若者だった。
――あれ……サンチャゴじいちゃんは?
「あれだよ……じいちゃん、若い頃は軍隊にいたんだ。あれ、そのころのサンチャゴじいちゃんなんだよ」
――うそ……!?
「だって、ここはもうドキュメンタリーじゃないんだろ」
小悪魔のマユよりも、人間のミファのほうが、目の前のことを正確に受け止めているようだ。
サンチャゴじいちゃん……いや、サンチャゴ軍曹は、ゆっくりと草原を見渡した。むろんミファとマユが合体した女性の姿は見えない。ここは、あくまでサンチャゴの夢の中なのだ。
やがて、サンチャゴ軍曹は、それを見つけて小走りで寄っていった。まるで宝物を見つけたハックルベリーのように。
それは、大きなライオンだった。
ライオンは、金色に近いうす茶色のたてがみを、草原を吹くゆるやかな風になびかせ、うずくまっていた。目は薄く閉じられていたが、今にも開きそう。ゆったりとした呼吸は草原全体の時間を支配しているように威厳があった。
サンチャゴ軍曹は、かがんで、ライオンの顔を居眠っている友だちのように見ている。
そして、目覚めるのを待つように、ライオンの横に並んで座った。
海兵隊の軍曹とライオン……変な取り合わせだったが、ほんとうの友だちのようだった。
「サンチャゴじいちゃん、ライオンが目を覚ますのを待っているんだね」
――これだったんだね、サンチャゴじいちゃんが見ていた夢は……。
「あたしたちも、待っていようよ、ライオンが目覚めるのを」
――うん。ライオンが目覚めたら、全ての秘密が分かると思う。
「なんだか、胸がドキドキしてきた」
「そこまでだ……!」
合体した二人の後ろで声がした……。




