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小悪魔マユ  作者: 大橋むつお
40/118

40・フェアリーテール・14

小悪魔マユ・40

『フェアリーテール・14』      



「おかしくないのよ」

 

 分かれ道のところに、レミが立っていた……。


「ファンタジー世界の愛情表現はさまざま。お姫さまの打ち出の小槌で大きくなっちゃうのもいるし、ガラスの靴穿いて、王子さまのハートをゲットした子もいるわ。ガラスの靴って、どう考えても穿いて歩けるシロモノじゃないでしょ。見つめ合っただけで赤ちゃんができることもあるし、木で人形の子どもを作ったら、本当の子どもになった話もあるし、人間が豚さんになって空中戦をやって、女の子のキスでもとの人間にもどったり、ま、いろいろ。マユちゃんの知り合いにもいるでしょ。アレチの魔女さんとか」

「ああ、女の子を九十歳のお婆ちゃんにして、イケメンの魔法使いが、元の女の子にもどす……あ、あの二人、行っちゃった」


 気がつくと、赤ずきんと流狼似謙信になった狼男の姿がなかった。


「多少問題はあるけど、いいんじゃない。ハッピーエンドにしたんだから。これで、とりあえず白雪姫と赤ずきんちゃんの問題が解決したわ。つぎ、お願いしていいかしら」

「もう、つぎ?」

「問題多いのよ、この世界。急場のことで申し訳ないんだけど……」

 

 そう言うと、レミは、ストローハットを思い切り空高く放り上げた。


 マユは、一瞬AKB48の『ギンガムチェック』で大島優子が、最初にカンカン帽を放り上げるのを連想した。

 ストローハットは、思いのほか高く舞い上がり、マユの視界は一瞬、青空とストローハットだけになってしまった。


 ストローハットが落ちたのは、石畳の上だった。


 さっきまでは、森の中の分かれ道。草の生えた地面と薮しかなかったのに……。

 海の香りがして、マユは周りを見た。右手の方は、桟橋がいくつもあって、小さな漁船が繋がれていた。左手は、漁師さんたちの家や、魚の水揚場、飲み屋さんなどが並んでいる。どこからか、賑やかな歌や音楽が聞こえてきて、なんとなくカリブの港町が連想された。


「そう、ここは、カリブの港町よ。マユ」

 目の前に、バミューダパンツにギンガムチェックのシャツの女の子が、ストローハットを持って立っていた。


「あ、あなた……」

「あたし、ミファ。レミに頼んでおいたの。マユの手が空いたら、こっちに来てもらえるように」

 そう言いながら、ミファはストローハットを渡した。

「被ってみて……うん、けっこういけてんじゃん。セーラー服にストローハット。港町にピッタリだよ。あたしに着いて来て……」

「あの、ミファ」

「なあに?」

「ここ、どこの港町?」

「あ……キューバ。街の名前はかんべんしてくれる」


 マユは、レミが言った「急場の問題」がキューバのナゾであることに気がついた……。




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