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小悪魔マユ  作者: 大橋むつお
39/118

39・フェアリーテール・13

小悪魔マユ・39

『フェアリーテール・13』  



 見交わす二人の目から☆が出てぶつかり、大きなハートマークになっていった……!


「で、いいわけ。彼が狼男のままで?」



 マユの一言で、ハートマークは赤ずきんと狼男の間に落ちてきた。

 赤ずきんは、それを子どもが大事なぬいぐるみを愛おしむようにだっこした。

「よくないけど……満月の夜だけ避ければ、こんなふうに、ただの男の子だから……ね」

 赤ずきんは、再び狼男に目をやった。むろん☆が出て、見返した狼男の目からも☆が出て、空中に、さっきと同じようなハートマークが浮かんだ。



「それじゃ解決にならないでしょうが!」



 マユの一喝で、ハートマークは再び、赤ずきんと狼男の間に落ちてきて、今度は狼男がだっこした。

 お揃いになったので、二人は、なんとなく嬉しそうになってしまい、なんだか、そのままバレンタインチョコのコマーシャルに使えそうな感じになった。


「いい、このまま狼男さんのままでいたら、満月の晩は、彼、なにするか分かったもんじゃないのよ。それに、このファンタジーの世界はおかしくなりはじめてるから、暦通りに満月になるかどうかも危ないわ」

「そ、そんな……」

 赤ずきんが、満月を想像したためか、あたりは急に夜になり、お日さまが満月に変身した。

「ガルル~、ガルル~……」

 狼男が、さっそく変身し始めた。マユは特大のビーチパラソルを出して月光を遮断した。

「ガルル~……ルンルンルン♪」

 狼男は、気の良い恋するアンチャンにもどった。

 その気の良さは、さっきのバツの悪さなんかふっとんでしまい。赤ずきんと二人で「てんとう虫のサンバ」なんか歌い出し、さすがのマユもあきれてしまった。しかし調子に乗って、二番の終わりまで唄ってしまった……。


  ……まあるい まあるい お月さま

 愛の光で ほほえんで

 森の月夜は ふけました♪


 とたんに、ビーチパラソルの中に、小さな満月が現れて、再び狼男は……。

「ガルルル~……」

「いいかげんにしなさい!!」

 マユの大声で、満月もハートマークも粉々に散ってしまった。


 生活指導のタコ部屋で、不純異性交遊をとがめる女先生と生徒のようになってしまったが、しばらくして、マユに名案が浮かんだ。


「ねえ、狼男さん。あなた国籍を日本にしちゃいなさい」

「え……日本人に?」

「いいえ、日本オオカミよ」

「日本オオカミ……あんまり聞かないなあ」

「そりゃそうよ、百年前に絶滅してる」

「……ぜ・つ・め・つ」

「そう、だから、あなたが日本の国籍をとっても狼男になることはないわ。日本人の頭には狼のイマジネーションがない。つまり狼男のイマジネーションも、せいぜいアニメか映画のレベルでしかない。ファンタジーの世界って、イマジネーションの世界だから、あなたはなろうと思っても成りようがないってわけ」

「それ、いいかも……」


 ということで、マユは魔界の役所に連絡をとり、狼男の国籍を日本に変えた。日本名もマユが考えてやった。


――流狼似 謙信――


「「うん、かっこいい!」」

 二人とも、大納得。


「でさ、最初の話なんだけど、二人、裸でなにしてたの……!?」

 マユは、オチコボレの小悪魔らしい質問を、頬を染めて聞いた。

「そりゃあ……愛する二人が裸ですることって……ねえ」

 赤ずきんは、そのマントと同じくらいに赤くなって、狼……いや、流狼似謙信に目配せした。

 これ以上ハートマークを出されては、たまらないので、二人の目から出てきた☆をすぐにたたき落とした。それにむくれたように、赤ずきんが、マユに言った。


「わかったわ。百聞は一見にしかず。ここでやって見せてあげる!」

「そうだ、問題解決祝いに、マユちゃんにも見てもらおう!」



 二人は、さっさと服を脱ぎ始めた!


「あ、あの、これって、一応ライトノベルで……ジュニア対象だから」

「だから、なんだってのよ!」

 赤ずきんは、そう言ってスカートを落とし、謙信はズボンを脱いだ。

「あ……ただの裸なら、驚きゃしないんだけどね、そういう行為に及ぶのは……」

 マユは、両手で顔を覆ったが、しっかり指の間から、見るものは見ていた。


 そして、二人の愛する者が、息を弾ませ始めたことは……。


「なによ、それって!?」


 二人が、やり始めたのは、激烈なアッチムイテホイであった。裸といっても赤ずきんは花柄のパレオ付きセパレート、謙信はひざ丈の水着であった。


「……やっぱ、ファンタジーの世界はおかしくなってる」


「これは、おかしくないのよ」


 分かれ道のところに、レミが立っていた……。



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