39・フェアリーテール・13
小悪魔マユ・39
『フェアリーテール・13』
見交わす二人の目から☆が出てぶつかり、大きなハートマークになっていった……!
「で、いいわけ。彼が狼男のままで?」
マユの一言で、ハートマークは赤ずきんと狼男の間に落ちてきた。
赤ずきんは、それを子どもが大事なぬいぐるみを愛おしむようにだっこした。
「よくないけど……満月の夜だけ避ければ、こんなふうに、ただの男の子だから……ね」
赤ずきんは、再び狼男に目をやった。むろん☆が出て、見返した狼男の目からも☆が出て、空中に、さっきと同じようなハートマークが浮かんだ。
「それじゃ解決にならないでしょうが!」
マユの一喝で、ハートマークは再び、赤ずきんと狼男の間に落ちてきて、今度は狼男がだっこした。
お揃いになったので、二人は、なんとなく嬉しそうになってしまい、なんだか、そのままバレンタインチョコのコマーシャルに使えそうな感じになった。
「いい、このまま狼男さんのままでいたら、満月の晩は、彼、なにするか分かったもんじゃないのよ。それに、このファンタジーの世界はおかしくなりはじめてるから、暦通りに満月になるかどうかも危ないわ」
「そ、そんな……」
赤ずきんが、満月を想像したためか、あたりは急に夜になり、お日さまが満月に変身した。
「ガルル~、ガルル~……」
狼男が、さっそく変身し始めた。マユは特大のビーチパラソルを出して月光を遮断した。
「ガルル~……ルンルンルン♪」
狼男は、気の良い恋するアンチャンにもどった。
その気の良さは、さっきのバツの悪さなんかふっとんでしまい。赤ずきんと二人で「てんとう虫のサンバ」なんか歌い出し、さすがのマユもあきれてしまった。しかし調子に乗って、二番の終わりまで唄ってしまった……。
……まあるい まあるい お月さま
愛の光で ほほえんで
森の月夜は ふけました♪
とたんに、ビーチパラソルの中に、小さな満月が現れて、再び狼男は……。
「ガルルル~……」
「いいかげんにしなさい!!」
マユの大声で、満月もハートマークも粉々に散ってしまった。
生活指導のタコ部屋で、不純異性交遊をとがめる女先生と生徒のようになってしまったが、しばらくして、マユに名案が浮かんだ。
「ねえ、狼男さん。あなた国籍を日本にしちゃいなさい」
「え……日本人に?」
「いいえ、日本オオカミよ」
「日本オオカミ……あんまり聞かないなあ」
「そりゃそうよ、百年前に絶滅してる」
「……ぜ・つ・め・つ」
「そう、だから、あなたが日本の国籍をとっても狼男になることはないわ。日本人の頭には狼のイマジネーションがない。つまり狼男のイマジネーションも、せいぜいアニメか映画のレベルでしかない。ファンタジーの世界って、イマジネーションの世界だから、あなたはなろうと思っても成りようがないってわけ」
「それ、いいかも……」
ということで、マユは魔界の役所に連絡をとり、狼男の国籍を日本に変えた。日本名もマユが考えてやった。
――流狼似 謙信――
「「うん、かっこいい!」」
二人とも、大納得。
「でさ、最初の話なんだけど、二人、裸でなにしてたの……!?」
マユは、オチコボレの小悪魔らしい質問を、頬を染めて聞いた。
「そりゃあ……愛する二人が裸ですることって……ねえ」
赤ずきんは、そのマントと同じくらいに赤くなって、狼……いや、流狼似謙信に目配せした。
これ以上ハートマークを出されては、たまらないので、二人の目から出てきた☆をすぐにたたき落とした。それにむくれたように、赤ずきんが、マユに言った。
「わかったわ。百聞は一見にしかず。ここでやって見せてあげる!」
「そうだ、問題解決祝いに、マユちゃんにも見てもらおう!」
二人は、さっさと服を脱ぎ始めた!
「あ、あの、これって、一応ライトノベルで……ジュニア対象だから」
「だから、なんだってのよ!」
赤ずきんは、そう言ってスカートを落とし、謙信はズボンを脱いだ。
「あ……ただの裸なら、驚きゃしないんだけどね、そういう行為に及ぶのは……」
マユは、両手で顔を覆ったが、しっかり指の間から、見るものは見ていた。
そして、二人の愛する者が、息を弾ませ始めたことは……。
「なによ、それって!?」
二人が、やり始めたのは、激烈なアッチムイテホイであった。裸といっても赤ずきんは花柄のパレオ付きセパレート、謙信はひざ丈の水着であった。
「……やっぱ、ファンタジーの世界はおかしくなってる」
「これは、おかしくないのよ」
分かれ道のところに、レミが立っていた……。




