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小悪魔マユ  作者: 大橋むつお
37/118

37・フェアリーテール・11

小悪魔マユ・37

『フェアリーテール・11』 



「赤ずきんちゃん、約束だったでしょ。白雪姫の件が片づいたら話してくれるって」

「……覚えていてくれたの?」


「悪魔の記憶力は、神さまよりもいいの」


 分かれ道の奥まったところに、ころあいの日だまりを見つけ、魔法で小さなベンチを出して二人で掛けた。


「うれしいわ、覚えていてくれて……みんな、白雪さんのことに有頂天になって、わたしのことなんか忘れてしまったみたいだったから」

「だからさ、赤ずきんちゃん……」

「あの……」

「なあに?」

「本題に入る前に、はっきりさせておきたいんだけど……」

「なによ?」

「わたしたちって、著作権が切れてるから、いいって言えばいいんだけどね……でも、やっぱ」

「やっぱ、なんなのよ!?」

「夕べも言ったと思うんだけど、わたし、アンパンマンのキャラじゃないの」

「は……?」

「だから……」

「はっきりしなさいよ。天下の赤ずきんちゃんでしょうが!」

「ほら、また……」

 

 赤ずきんは、ため息をついて、うつむいてしまった。


「わたし、赤ドキンじゃないの……赤ずきん」

「え……まだ、そんなふうに聞こえるの?」

「う、うん」

「わたし、ちゃんと『赤ずきんちゃん』て言ってるわよ。ほら、今だってそうだし、三行前も、その前のト書きだって、六行前だって、この37章になってから、五回出てくるけど、ちゃんと赤ずきんになってるよ」


 マユは、携帯魔法端末を出して、37章の今までの分を見せた。


「ほんとだ……でも、わたしには赤ドキンて聞こえる」

「……これも、この世界のゆがみのせいかなあ」

「じゃないかな。白雪さんは、マユちゃんが、なんとかしてくれたけど、まだ他のゆがみは残ったまま」

「そうね、さっきも眠っているはずの眠れる森の美女も、起きて、やってきていたし」

「わたしも先週までは、十歳の女の子だったのよ」

「いまは……どう見ても十八歳以上……どこ見てんの?」

「あ、ごめんなさい……かたちのいい胸をしてるなって思って」

 マユは、頬を染めて胸を隠した。

「どうせ、わたしはBカップよ。あなたのCカップには見劣りしますよ!」

「わたしDカップ……あ、そんなつもりじゃないのよ」

「ま、ま、いいけどね。本題よ、本題。赤ずきんちゃんが、そんなになったのは先週?」

「うん、六日前……猟師さんに助けられた明くる日」

「ああ、狼におばあさんといっしょに食べられて、猟師さんが狼のお腹を切って助けてくれたんだよね」

「うん……その明くる朝、目が覚めたら、こうなってたの。最初はうれしかった、急にオネエサンになれたみたいで。それから心配になったわ。ひょっとしたら、一日ごとに歳をとって、一週間もしたら、お婆ちゃんより年寄りになってしまうんじゃないかって」

「でも、そうはならなかった……でしょ」

「うん、明くる日も、その次の日も、起きてみたら変化はなかったわ」

「だったらさ、なんで、そんなにたそがれてるわけ?」

「四日目にね……」


 赤ずきんが、後を続けようとしたとき、後ろの分かれ道で人の気配がした。


――やあ、ここにいたのか!?


 気配が口をきいた……。




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