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小悪魔マユ  作者: 大橋むつお
32/118

32・フェアリーテール・6

小悪魔マユ・32

『フェアリーテール・6』 



「キミはライオンを探しているのかい?」

 目を輝かして、アニマ王子が聞いた。


「ライオンじゃなくて、ライオンさん」

 少女が言い返した。


「でも、ライオンなんだろ?」

「そう。でも二本の足で歩くし、人の言葉だって喋るし、何よりも勇気を誇りにしているわ。で、ライオンさん見かけなかった?」

「いいえ」「ううん」と、レミとマユが答える。少女の視線は、王子にもどった。

「ぼくも知らないけど、ライオンさんに会えたら伝えてくれたまえ」

「なにを?」

「あ……その……つまりだね」

「あの、わたし急いでるの。分からなかったら、他をあたらなきゃならないから」

「もし、ライオンさんに会えたら伝えてくれたまえ……」

「だから、なにを!?」


「どうやったら……勇気が持てるか」


「そんなもの、自分でどうにかしなさいよ。まったく今時のオトコってきたら!」

 少女は捨てぜりふを残して回れ右をし、一歩踏み出して……立ち止まった。

「いま、わたし『オトコ』って言ったわよね……」

「う、うん」「どうかした?」

「う、ううん。なんでも。じゃあね」

 少女は、ギンガムチェックのスカートとツインテールをひるがえしながら行ってしまった。


「……あの子、ドロシーよね。『オズの魔法使い』の」


「そうよ。今頃は、エメラルドの国に着いてなきゃいけないんだけどね」

「やっぱり、これもゆがみの一つなの?」

「たぶんね。でも、ドロシーは所属がMGMで、そこにワーナーやソニーが絡んだり、ややこしくって、よく分かんない」

「でも、そのややこしい中でも、ケナゲにオズの国を目指してんのね」

「そう、だれかさんと違ってね」

 レミは、ストローハットをあみだに被り直し腕組みをした。


「じゃ……ボクはこれで失礼するよ」

 アニマ王子は肩を落として、マントを被りなおした。


「明日も必ず来てね」

「ああ、もちろん!」

「そして、キスするのよ!」

 レミは、きつい口調で言った。

「ああ、前向きに考えるよ」

「なに、その政治家みたいな言い方!?」

「母上に教わったんだ。こういう状況で使う言葉……じゃ」

「待って、これをあげるわ」

 マユは、胸ポケットからシャ-ペン……いや、歯ブラシを出した。

「歯ブラシ?」

「それで今夜と、明日の朝、歯を磨いて」

 アニマ王子は、手に息を吐きかけて、臭いを嗅いだ。

「臭うかな……?」

「似合うわよ」

「え……」

「ロゴを見て」

「……ライオン歯ブラシ」

「分かった?」

「ハハ、どうもありがとう。少し勇気が湧いてきたよ」

 少しだけ明るくなった背中を見せて、王子は行ってしまった。

「なかなかいいシャレね」

「シャレじゃないわ」

「え……?」

「あの歯ブラシには魔法がかかっているの」

「どんな魔法?」

「あれで歯を磨くと、好きな女の子にキスしたくなる魔法」

「え……それじゃ!」

「でも、アニマ王子に効くかどうか自信はないわ。小悪魔程度の魔力じゃどうしようもないほどの落ち込みだもん」

「それにしても白雪さん、可愛そう……」

 レミが、棺の白雪姫に目をやった。マユも自然に目をうつした。

「あ……白雪さんの顔?」


 マユは、白雪姫の寝顔に不吉なものを感じた……。



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