第0話
長い、長い旅をした。
でも、きっと、短いって笑うかな。
それとも、怒るかな。
泣いて、くれるかな。
涙は、まだ枯れない。
笑顔は忘れてしまいそう。
でも、会いたいよ。
ファルと行けなかった街、色々いったんだよ
一緒に、行きたかったな。
ルヴィエラに戻ってきて、どれだけ季節がめぐったのかな。
見慣れない装飾。
一緒に、見たかったな。
そんな風に思いながら、ハヴァーヘルへ向かう船の帆を見上げてから、視線を甲板に戻した。
その瞬間、私は駆け出してしまった。
見慣れた、黒い髪。
何度か、同じ事があった。
違うと分かっていても、身体が言うことをきかない。
船乗りの制止を振り切り、甲板に立つと、青年が私を見た。
「大丈夫、ですか?」
いつの間にか、泣いていた。
「すみません…。貴方が、知り合いに…似ていたので」
青年は優しい笑みを溢しながら、手拭いを貸してくれた。
「大切な人、なんですね」
「はい…。…凄く」
私は、青年から必死に視線を反らして、海を見た。
私は、静かに、心に響くように、言葉を紡ぐ。
「――私は決めているんですよ。例え数百、数千の歳月が過ぎようとも必ず見つけて守ると」
サラの指が、胸元の藍方石を撫でた。
「藍方石ですか。珍しいですね」
青年はサラの首飾りを見たあと、同じように海を見た。
二人の目の前に、同じ世界が広がっていた。




