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駆ける影と光る粒子

ダダダダダダダダダッ!!


地面を抉る鉛の雨が、轟音とともに降り注ぐ。


「迂闊に顔出せないな.....」


岩陰に隠れながら、抜け出す機会を伺う。


アーサーのコックピット内でもずっと警告音が鳴っている。


相手はこちらの位置を完璧に捉えているわけではないが、それも時間の問題だ。


ダダダッ……ギィィィンッ!


「...!仕掛けるかっ...!」


オーバーヒートだろう、射撃音が一瞬途絶えた。


「シールド!」


岩から右手だけ出して、ラジエルシールドを形成する。


そして岩の逆側からブースターで飛び出る。


「よし、かかった!」


作戦通り、相手はシールドを出した方から出てくると思ったらしい。


逆から飛び出したこちらに反応が少し遅れた。


--初速が乗ればアーサーの間合いだ!


サイドブースターを駆使してギザギザに距離を詰める。


今の俺とアーサーならこの距離を被弾ゼロで突っ切ることなどお茶の子さいさいだ。


「もらった!」


もう相手は目の前、大きく旋回しながらそのままの勢いで切り裂く--


ガキィィィィン!!


『撃破に十分な威力を確認--戦闘終了。お疲れ様でした。』


「よし」


そうして、両手で構えていたアーサーの大剣--ではなく、訓練用鉄剣を下ろした。



『お疲れ様でした。なかなかいい動きでしたよ。シールドを逆側に形成してヘイトをずらすというのは考えましたね。』


午前の訓練を終え、アーサーを格納庫に入れる


小屋に戻りながらアリスがさっきの振り返りを話す。


『これで1号機とは6勝3敗...そして今日で4連勝目ですね。銃撃型は一通り問題なさそうです。』


「そうだね。」


1号機との訓練は最初こそその弾幕に圧倒されたものの、馬鹿正直に突っ込むのではなく遮蔽を使いながら接近することで最近コツを掴めてきた。


まぁ森の中だから本来こちらが有利なのだろうが、相手は天才博士作のタイタンだ。隠れてるつもりでも普通にバレてる、なんてこともあった。


小屋に戻り、昼食を食べる。


この世界に来てから約1ヶ月が経ち、アリスの料理スキルもだいぶ上達した。


最初はただ丸焼きしかなかったが、動物から脂を取ったり香草で調味料を作ってみたりなど、色々試してくれている。


そして今俺が食べている鶏肉も、皮がパリッとちょうどいい焼き加減で、味付けもいい。


昼食を食べながらこの1ヶ月を振り返る。


最初の1週間ぐらいはアーサーの基本動作や戦術の確認をし、それから1号機たちと模擬戦を繰り返した。


2号機との模擬戦では、初めは相性の良さをいいことにパワーでゴリ押ししていたが、足元を掬われることが多かった。近距離戦で、相手の重心を考えて体制を崩したり、次の動作を予測することなどを学んだ。


特にアーサーに乗っていくうちに、アーサーにも「したい戦い方」のようなものがあることがわかった。


闇雲に俺の動作を伝えるのではなく、アーサーと一緒に相談しながら戦う感じだ。


そうして、ここ数日はだんだんとアーサーと息が合うようになって、パフォーマンスが大きく上がったと自分でもわかる。


っていうか、知れば知るほど戦い方がブラッドナイトに似てるんだよな....やっぱなんか関係が.....


『どうしたんですか。目の焦点があってませんけど。』


アリスの声で意識を現実に引き戻す。


「あ、ちょっと思慮に耽ってた。」


『思慮に耽るって口で言う言葉じゃないと思いますが.....』


そんなことを言いながら食べ終わった皿を一緒に洗う。


アンドロイドの手だと少し皿が洗いにくいのだそう、皿洗いは俺も手伝っている。


『午後は最初に3号機との模擬戦のあと、機獣掃討の予定です。』


「うわー、3号機かぁ...」


3号機--1号機や2号機とは打って変わって隠密確殺型の、いわゆる暗殺者(アサシン)タイプだ。そして、俺が3機の中で最も苦手とする相手である。


今までの対戦成績は2勝9敗。この2勝も、アーサーが自分で動いて背後からのカウンターを決めたのと、適当に振った剣が当たったというものだ。


3号機の一番厄介なところは、その特別な装甲だ。前世の光学迷彩のような、周りの景色に色を同化させる。しかもレーダーにも引っかからない。


見失っているうちに背後から小型ナイフでバサリ、という流れが何度もあった。


『3号機はやはり手強いですね...。しかもステージが森林なのも要因の一つです。』


そうなんだよなぁ。


だけどな。


「いいや、今日はとっておきがあるんだ。」


『とっておきって、それ前も言ってませんでした?』


「うっ...」


たしかに、前3号機と戦った時にもとっておきがあると言って、見事に返り討ちにされた苦い思い出がある。


「でも今日のは本当に自信あるから」


「そうですか。楽しみにしています。」


あまり信じられていないような口ぶりなのが気になるが。



皿洗いも終わり、訓練に移る。


アリスは小屋に残ったまま、通信やリンクで指示を出してくる。


訓練場所は模擬戦をするときは毎回違う場所だ。新しい戦場(バトルフィールド)に即座に対応できるようにするため、らしい。


今回はかなり木の葉が多い地帯での模擬戦だ。かなりこちら側に不利ということになる。


『両者開始地点に到達。模擬戦開始まで--3-2-1-開始』


アリスの合図とともに、レーダーから3号機のサインが消える。いつもなら無闇に動き回るのだが.....


俺は少し木々の開けた場所に移動し、中央に立つ。


『先手を取らせてカウンター狙いですか?それはリスクが大きすぎますよ。』


ふ、、半分正解だな、アリス君。


確かに俺がここにきたのは3号機を誘き出すためだ。今までの傾向上、そろそろこちらの隙を窺っている頃だろう。


そして、ここからが今日の「とっておき」だ!!


〈ラジエル粒子 放出開始〉


両手首のノズルからラジエルを放出する。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


この1ヶ月間、なぜラジエルは尽きるまで放出できるのにノズル装置に冷却時間(クールダウン)が必要なのかを考えてきた。


そしてたどり着いた一つの答えが「種」だ。つまり、シュナイダーを形成するためにはシュナイダーの「種」が必要で、それにラジエル粒子を纏わせることで形を成す、ということだ。この「種」の再構築に時間が必要だというわけだ。


もちろんこれも前世のアニメ由来の知識なのだが。


「どうやら、ビンゴのようだな。」


ノズルから流れ出る粒子はどんどん増えていき、広場一帯に広がった。


『な、なんですか!?このラジエル量は..!!』


通信でアリスの驚く声が聞こえる。


「まだまだこれからだぜ!」


〈ラジエルアンプリファイア 起動〉


アーサーの左肩のマントが翻り、裏側の増幅器が起動し、粒子を取り込んではさらに大きく広げていく。


「この粒子にはあらかじめアーサーが認識できるよう『印』をつけておいた。そして、3号機は見えなくても消えたわけじゃない。つまりばら撒いた粒子の中で、欠けている空間....そこに3号機はいる!」


〈ラジエル粒子 欠如空間を発見〉


「そこか!!」


アーサーのフロントモニターに表示された場所に向かって、全出力で接近する。


ガシッ


「ビンゴ!」


目には見えないが、確かに掴んだ感触があった。そのままもう片方の手で背中の剣に手を伸ばす。


『戦闘終了 ユウジ側の勝利です。』


アリスの通信が入り、掴んでいた左手から3号機の姿が現れる。


「まだ攻撃していないけど...」


『直接捕捉した時点で勝敗はほぼ決した様なものです。アーサーの出力に3号機の装甲では、いくら攻撃力に低い訓練用の剣といえど相当な損傷になります。修復も大変なんですよ。』


あー、以前の3号機に勝ったあ、次の模擬戦が結構あとだったのはそのせいだったのか、、


『しかしラジエル粒子をレーダー代わりにするとはなかなか大胆な作戦でしたね。これができるのはユウジとアーサーぐらいなものでしょうが、お見事でした。』


えっへん。結構自分なりに頭も使ったし、満足な結果だ。


『ただ、これほど広範囲にラジエル粒子を散布してしまうと.....』


アリスが言い終わる前に、アーサーのレーダーが反応した。


〈南西及び南東方向から多数のラジエル源が接近 ランクC相当の機獣と識別〉


『ちょうどいいですね。このまま掃討に移りましょう。』


嘘でしょ。


「っ...了解!」

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