幕開け
目を覚ますと、そこには見慣れない天井。
ベッドから起き上がり、ユウジは辺りを見渡した。
「あぁ、そっか」
昨日のことを思い出す。異世界に来たというのは夢ではなかったようだ。
「夢といえば、あれはブラッドナイト...だったよな?」
それはただの夢か、それとも.....
「今考えてもわかんないか」
扉が開いて、アリスが入ってくる。
『おはようございます。よく休めましたか?』
「あぁ、バッチリだ」
着替えて、部屋を出る。
リビングのテーブルの上には、いくつかの皿と、その上に葉物や肉が乗っている。
「え もしかして朝ごはん作ってくれたの?」
『はい、先ほど3号機に野生の豚と食べられる山菜を集めてきてもらって、私が少し調理しました。調理といっても、加熱した程度ですが....』
席に座り、一口食べてみる。
「うん、普通に美味しいよ」
豚といっていたものは前世のハムのような食感だ。野菜もあるのが高ポイント。昨日の夕食は肉だけだったからね。
『よかったです....』
アリスが安心したように息を吐く。
.....こういうところがたまに人間と見間違える。
アリスには料理知識はないらしいので、前世の知識をいくつか教える。目玉焼きとかはこっちの世界でも作れるそう。
『これからの食事に取り入れますね』
これで食事問題は大丈夫だろう。
半分ほど食べ終わって、アリスが口を開く。
『昨日の夜にアーサーの解析をしたんですが』
お?
「うん」
『解析データは後で伝えるとして、システム内部に博士のボイスメッセージがあったんです』
マジかよ。
「すごいな。でもなんで解析しないとわからないところにあったんだ?」
『それは実際に聞いてみればわかります。』
アリスが手からパネルを表示し、音声ファイルを再生する。
「......これは.....」
ファイル内の声に耳を傾ける。
「なるほど...」
聞き終わった後、ユウジはしばらく黙って考えていた。
アーサーは「器」と言っていた。状況からするに俺がその器の中身を持ってたことになるが....昨晩の夢が関係するのか...?
『私にもまだわからないことが多いですが、今はできることをしましょう。博士の言う通り、ユウジとアーサーのサポートをします』
「そうだね。俺がアーサーにもっと乗れば、システムのロックが外れていくかもしれない。」
『ではまずは...』
アリスが手から水晶のような球体を作り出す。
『これはラジエル量を測るもので、王国にあるものほど正確ではありませんが、ある程度の目安はわかります。』
そうそう俺のラジエル値はずっと気になってた。
『両手を置いてください。光の色でラジエル値が判定できます。』
両手を水晶に置く。
「あ、結構冷たい─」
と思った次の瞬間、アーサーの操縦桿に手を置いた時と同じ感覚を感じた。といっても、今回はだいぶ小さな感覚だ。
水晶の色が白からだんだん赤になり、最終的には--
「.....これはどういう判定?」
水晶の色は赤とピンクが混ざり合い、中でまだ色が動いている。
『やっぱりでしたか....』
「え?」
『これは“測定不能”─つまり、約2000以上ということです。』
測定不能....?
『第4倉庫の壁が消えた時のシステム音声を覚えていますか?』
ああ、手を置いたら赤く発光して消えた壁ね。確かあの時の音声は....
『3000、と音声は言っていました。』
そうだね。
『常人のラジエル値は100前後、多いと言われる人でも200には届きません。王国軍など日々訓練を積んで、後天的にラジエル値を増やしている人たちでさえ1000にもいけばエリートです。』
うぇい。マジかよ。
『3000というのは人間として異常です。機獣と言った方がまだ信じられますよ。』
ちょっとちょっと、なんか酷くない?
『冗談です。昨日あんな理解できない機体で理解できない挙動をしていた時点で、もうイレギュラーとして私は受け入れました』
おおう、なんかまだ不本意だが。
『とにかく、ユウジもアーサーも異常ってことです。一応自覚は持ってください。』
はーい。
『ではこれからのことを話しますね。今のまま王国に出れば検問所で即刻王国軍に引き渡されて最悪研究所送りです』
それは困る。
『なのでまずはこのダルカス森林内を中心に活動しましょう。ここで1号機たちと訓練したり、機獣を狩ったりして』
「わかった」
『それではまずは今日の予定なんですが--』
そうして、俺の異世界生活の第一拠点は、機獣の跋扈する森となったのだ。




