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鳥人の街

 獣人族の鳥獣種の住む街までは一週間の道のりでした。

 凶悪な魔物に遭うこともなく、順調に街まで来たのですが…………


「お前をこの街へ入れるわけにはいかない!」


 街の門前で私は取り囲まれてしまいました。

 えっとハグーさん、どうみても敵意が剥き出しなんですけど…………。

 それにしてもこの人たちが鳥人ですか。


 背中からは翼が生えています。

 それにはちゃんと飛行能力はあるようで、数人は上空から弓矢で私を狙っています。


 強行突破、しようとすれば、出来なくもないでしょうけど、それじゃ意味がないです。

 私は戦いに来たわけじゃないんですから…………


「私に戦闘の意思はありません。お願いがあってきました」


「信じられるか! お前はあのガンウォールを討ち取った東方人だろ!」


 一人の鳥人が叫びました。

 どうやらガンウォールを討ち取ったことは知られているみたいです。


 自分たちの総大将が討たれたのですから当然と言えば、当然ですか。


 それと気付きましたけど、彼らが私に向けているのは敵意ではなく、恐怖です。

 ガンウォールを倒すような化け物が来た、と鳥人たちを思っているようです。


「確かに私はガンウォールを討ち取りました。しかし、私一人の力ではありません」


「だとしても、ガンウォールに匹敵する力を持っているような奴を街の中に入れるわけにはいかない!」


 困りましたね。

 これじゃ話し合いどころか。

 街の中にすら入れなさそうです。


 仕方ない、と諦めて立ち去ろうとした時でした。


「全員、武器を納めな!」


 大きな声が聞こえました。

 見ると正面門の真上に黒い羽の女性が飛んでいました。


「と、棟梁!」


 兵士の一人が叫びました。

 黒翼の鳥人は私の前に降りました。


「悪いね。みんな、魔王様が討たれたことで人間が侵攻してくると思って、気を張っているんだよ」


「私に戦闘の意思はありません。あなたは?」


「私はレンリス、この街の棟梁をしているもんだよ。あんたの名前も聞いてもいいかい?」


「失礼しました。愛洲香です。ここには目的があってきました」


「侵略以外の目的と言うとなんだい?」


 私は千代に視線を向けます。


「金属の翼を出してもらえますか?」


「うん」


 千代は素直に翼を展開してくれました。


「これは一体…………」


 レンリスさんは驚いていました。


「見ての通り、この子は人間の姿をしていますが、人間ではありません。この子は天空都市『エルバザール』から来たと言っています」


「天空都市? それは本当かい!?」


 レンリスさんの眼の色が変わりました。

 千代に詰め寄ります。


「本当、私はエルバザールから来た。私をあそこへ戻して欲しい」


 千代は頭を下げます。


「……天空都市までの道案内は出来るのかい?」


 レンリスさんの言葉に対して、千代は出来ると答えました。

 それを聞き、レンリスさんは考え込みます。


「で、私たちが協力して、見返りはあるのかい?」


「もし、協力してくれたら、あなたたちと国交を結ぶ」


「お嬢ちゃんにそんな権限があるのかい?」


 千代は「ある」と断言しました。


「即答かい。そこまで言い切られると逆に疑わしいね」


 それに関しては私も同意します。


「でも、良いだろう。協力するよ」


 レンリスさんはそれでも協力を承諾してくれました。


「いいんですか?」


 私は少し意外でした。


「別にその子の言葉を完全に信じたわけじゃないさ。協力する理由は三つだよ。一つは天空都市を探しに行った航空船が一隻、帰ってこないんだ。嵐にやられた可能性が高いが、天空都市の存在を証明する存在がここにいるってことは、もしかしたら、天空都市に到達した上で何かがあったのかもしれない。二つ目は私たちだって、天空都市なんてものがあるなら、見てみたいさ。何世代も追い続けているロマンだからね。そして、最後の理由は…………」


 レンリスさんは私をジッと見ました。


「ガンウォールなんて化け物を倒す人間を相手にしたら、この街の総兵力でも勝てやしないからね。あんたに脅されたら、従うしかない」


「そ、そんな事しませんよ! それに私一人で倒したわけじゃないですよ。そのことをきちんと説明したいです」


「噂に聞く。魔王打倒の戦いを聞けるのかい? じゃあ、急いで宴の用意をしようかね。あんたは人間の中で結構、重要な立場みたいだし、媚を売っておいてもいい気がするね」


「いえ、私はただの冒険者ですよ」


「ただの冒険者がこんな魔王領の深くまで来ないさ」


 レンリスさんは笑いながら言います。

 どうやら、悪い人ではなさそうです。

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