二人の訪問者
その日の夜、私たちはレンリスさんと会食をしました。
「なるほどねぇ、ガンウォール打倒にドワーフが関わっていたのかい。だとしても、ドワーフと人間四人でガンウォールを倒すなんて、凄いね」
「えっと、怒らないんですか? 元は同胞ですよね」
私が同胞という言葉を使うとレンリスさんは本気で嫌そうだった。
「よしとくれ。竜人族の奴らは他の種族を見下す嫌な奴らさ。特にあのガンウォールは気に入らなかったね。あいつが死んだと知った時、あたしらはスカッとしたさ。それにしても、そうかい。人間側もかなりの痛手を受けて、これ以上の戦争継続は不可能。でも、そんなことを言っていいのかい?」
「これくらいなら構わないと思います。今、私の仲間が竜人族と交渉をしているでしょうから、魔王不在で、竜人族との交渉が成功すれば、戦争は完全に終わると思います」
「それは助かるよ。元々、あたしらは自由気ままに暮らしていたんだ。それを魔王がいきなり現れて、酷い目に遭ったさ」
レンリスさんは本当に嫌そうな表情をしました。
「天空都市に行くの。本当は気が進まなかったりしませんか?」
「そんなことはないさ。何か勘違いをしているようだけど、天空都市の捜索は魔王が現れる前から私らが独自にやっていることだよ。空に浮かぶ都市なんてロマンがあるじゃないか」
お酒が入っていることもあり、レンリスさんは少年のように語ります。
嫌々で協力されるより、快く協力される方が良いので安心しました。
「ただし、準備は必要だよ。一週間、それくらいは待ってくれないかい?」
「はい、大丈夫です」
そもそも、突然来た私たちにこれ以上、何かを要求する権利はありません。
「そうかい、良かったよ。ところで愛洲さんは私たちの酒が口に合わなかったかい?」
私がお酒の入った盃にあまり口を付けていないのに気付いたようです。
「い、いえ、お酒が少しに苦手なだけです」
出されたお酒はとても美味しかったです。
ちょっと気を抜いたら、すぐに許容量を超えてしまいそうでした。
「ママはお酒が大好き。でも、すぐに悪酔いするから仲間と飲むとき以外は加減をしている」
千代が要らないことを説明してくれました。
「なんであなたがそれを知っているんですか!?」」
「ママの生命情報を入手した時に記憶も手に入れた」
生命情報…………あっ!
そういえば、一番初めに千代が私の口の中に手を突っ込んだですよね。
生命情報って私の見た目を真似るだけじゃなくて、記憶も知れるんですか。
まったく、とんでもない生命体ですね!
「そうだったのかい。じゃあ、あんまり無理には進めないよ」
「すいません。お酒自体はとても美味しかったです。それに食事もです」
巨人族の方たちの食事と言ったら、焼くか生で食べるかのどちらかでした。
慣れれば、それもいいですが、やっぱりナターシャの食事が食べたくなってきました。
ナターシャと比べるわけにはいきませんけど、レンリスさんたちが出してくれた料理はおいしかったです。
私は寝床も提供してもらいました。
突然来たのにここまでして頂き、感謝しかありません。
久しぶりに柔らかいベッドで寝ることが出来ます。
「ママ…………」
「いざ寝ようとした時、千代が私のベッドに入ってきました」
「どうしましたか?」
「一緒に寝たい」
私はこの子が分かりません。
たまに本当の子供のように甘えることがあります。
結局、私のことはママと呼んだままですし…………
「いいですよ」
私は千代をベッドに招きました。
すると千代は嬉しそうに笑い、すぐに眠ります
その寝顔は子供そのものです。
本当に不思議な子です。
こうしていると姉様と一緒に寝ていた時のことを思い出します。
あの頃は私が千代の立場でしたけど…………
やがて、私も睡魔に身を委ねて眠ることにしました。
レンリスさんたちが準備をしている間、私は近くの森で狩りをしたり、川で魚を捕ったりして暮らしました。
魔王との戦いは終わりましたけど、私はまだ戦いを止めるわけにはいきません。
強い相手と戦い続け、今の私は心身が充実しています。
願わくば、この状態で師匠と出会い、戦いたいですけど、こればかりはどうしようもないですね。
ここに来てから五日目のことでした。
「愛洲さん、あんたに客人だよ」
「私にですか?」
おかしな話です。
私がここにいることを知っていう方はいないはず。
真っ先にハヤテのことが浮かびましたが、それはあり得ません。
リンクが出来なくなった現在、私の居場所をハヤテが知ることは不可能なはずです。
とにかく、私は訪ねてきた人たちに会いましょう。
千代は……寝ていますね。
起こすのも可哀そうなので、私が一人で会いに行くと見知った方々がいました。
「ど、どうしてここに?」
「久しぶりだね、香ちゃん」
訪ねてきたのは二人です。
ドワーフのドラズさんとその弟子で人間のディアス君でした。
「巨人族の里に寄ったら、香ちゃんが面白いことに巻き込まれたって聞いたからね。慌てて後を追ってきたんだよ。天空都市だって? 面白い技術があったら、吸収したいね」
ドラズさんは豪快に笑いました。
その横でディアス君がお辞儀をします。
「ドラズさんたちと冒険が出来るのは楽しそうです。で、でも、私も同行させてもらう身ですし、勝手なことを言うわけには…………」
「構わないよ」
振り返るとレンリスさんがいました。
「あんたらは強そうだ。私たち鳥人は強くない。何か不測の事態の時、それを切り抜ける戦力は大歓迎だよ。あんたが愛洲さんの言っていたドラズさんかい? 私は鳥人の長、レンリスだよ」
「話が早くて助かるね。よろしく頼むよ」
ドラズさんとレンリスさん、握手をしました。
この二人は気が合いそうです。




